31♪ 時を経た告白
「おぉ~! かっけるやんかぁ!」
飛び交う関西弁。うわ~、すっごい落ち着く! 久しぶりやもんなぁ、関西。
「佐野くん! 久しぶりやん!」
振り返ると、中学時代の吹奏楽部……オレは途中で退部したけど、一緒やった子たちが固まってた。
「えーと……松中と、下田と、森崎やな!?」
「当たり~!」
一番嬉しそうな顔を浮かべたのは、森崎亜由美。松中 未梨と下田さやかも少しはにかんだ感じでオレを見上げている。
オレは中学の頃と比べたら、少し背が高くなったみたいやった。3人とも、顔を上げないとオレと視線が合わなくなっていた。陽乃とは、出逢った頃から少しオレのほうが背が高かったから、違和感がなかったんやけど、いまこうして友達と並んでみると、すごい違和感。
「どうしたん?」
松中がオレの制服を引っ張る。反射的に避けるというか、少し距離を置く素振りを見せてしまった。
「え?」
「あ……ご、ごめん! うん、ちょっと感傷に浸ってた」
「どんなんよ~、それ!」
バシーン!と下田がオレの背中を思い切り叩く。
「痛いなぁ! お前だけは全然変わらんな!」
森崎はショートヘアやったのが、いつのまにかロングヘアーになってる。松中はメガネかけてたのに、コンタクトにしたらしく、大きくこぼれそうな目が光っていた。何にも変わらんのは、下田だけ。
「うるさいな~。佐野かて、ほとんど変わってへんやんか!」
ドッと笑い声が上がる。
「おいおい~、痴話げんかはよそでやってや~」
「……。」
大阪に来ているのに。同窓会に来ているのに。なんで、七海高校のメンバーを思い出すんやろう。慎也が、同じようなことを言ってた覚えがある。そばで春樹と拓あんが笑ってる。真っ赤になるオレと陽乃。ちょっと会わなくなっただけで、なんでこんなにも愛おしいんやろうか。
「かける? 聞いてる?」
あ、そや! 今は同窓会。七海高校のコトばっか考えてたら、せっかく集まってる友達に悪いやん。
「うん! 大丈夫やで」
「……そう」
フイッと下田がオレのそばから離れた。
「ちょ、さやかぁ」
急にフイッと逃げるように去った下田に違和感を覚えつつ、オレは懐かしいメンバーが見えたのでそっちのほうへ移動した。
「ゴメン、ちょっとお手洗い」
同窓会が始まって1時間ほど経った。トイレに行きたくなったフリをして、少し表へ出た。携帯電話を取り出し、アドレス帳を開く。
「誰に連絡するん?」
ギョッとした顔になったのが自分でもわかった。振り返ったら、下田がおった。
「下田かぁ。ビックリするやん」
「かぁ、って何なん~。ヒドいわぁ」
「あぁ、ゴメンゴメン」
オレは苦笑いしつつ、携帯電話に視線を移した。
「……。」
宛先は陽乃っと。とりあえず、同窓会は楽しくやってるけど、やっぱお前がおらんかったらなんとなく寂しいっていうか……。
「彼女?」
「え!?」
いつの間にか、下田がオレの真隣におって携帯電話を覗き込んでた。
「ちょ! 勝手に見んなや!」
「何よ。別にえぇやんか」
「よぉないわ! プライバシーやねんぞ」
「……。」
とりあえず、メールだけ打ってすぐに会場へ戻らんとな……?
「は?」
「なんでよ」
「何が」
「何で私がおんのに、メールばっかりすんの!?」
「何やそれ。意味分からん」
「わからんのはそっちや!」
何や。何でキレられなアカンねん。
「どないしてん、下田」
「……あんな」
下田の手がオレの胸辺りに伸びる。
「私……中学のとき、佐野のこと好きやってん」
一瞬、耳が聞こえなくなったかのような感覚に、オレは見舞われた。