表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/62

24♪ 立入禁止、関係なし

「え? メグ、休みなの?」

 乃木さんから、メグの欠席連絡が入った。

「そうなんです。インフルエンザらしくって……」

「そうなんだ……」

 皆さんこんにちは。水谷 春樹です。アンサンブルの本番が直前になっているので、チューバの拓あんはそっちへ行きっぱなし。なので、今はみーやん、俺、メグの3人でパート練習をすることが多い。

「そういえばさ、今日みーやんは塾で早退でしょ?」

「あ〜……そうでした」

 みーやんはいま思い出したかのような感じで嫌そうに呟いた。

「嫌なんだ」

「嫌ですよ〜。今日は数学の日ですもん」

 みーやんは大げさにため息を漏らした。

「ま、それまでロングトーンとかしておこうよ」

「そうですね!」

 それからロングトーンとかをしていたけど、結局みーやんは5時半に早退してしまった。ポツリと残された俺は、ひとまずロングトーンを終えて、適当にユーフォニウムソロの教則本を開いて6時までの練習時間を潰した。

 楽器を片付けて部室へ戻ったけど、まだ金管アンサンブル組は終わっていない。翔にもメグの連絡が行ってるのか気になって聞いてみた。

「翔」

「はいよ?」

「メグなんだけど……なんか連絡来た?」

「あ〜うん。オレな、メールでえぇのにって言うてんけど、電話わざわざ掛けてきてさ」

「どんな調子だった?」

「かなりしんどそう。熱あんのかって聞いたら、なんか38度7分くらいあるって聞いて。そんで電話なんかえぇからおとなしく寝ときって言うてん」

「そうなんだ……」

 翔はなぜメグのことを聞くのかっていう表情をしばらくしてたけど、急に思い出したように言った。

「そっか。加藤さんと春やん、幼なじみやってんな」

「うん……まぁ」

 正直言って、だから二人の関係は微妙な感じ。俺は今、絵美……あ、橋本 絵美と付き合ってるんだけど……。

 これ、嫌味とかじゃないよ?

 多分、メグは俺のこと好きだ。知らないフリなんてしてるわけいかないよね。でも、メグも面と向かって答えを求めてこない。答えはもう出ているようなものなんだから。

 俺としては、やっぱり幼なじみがインフルエンザで高熱出してるっていうんだから、心配。

「……。」

 翔がニッと笑った。

「なんだよ」

「お前……いま絶対加藤さんのお見舞い行こうと思ってるやろ?」

「バレてる?」

「バレバレ」

 恥ずかしい。顔に出てるのかも。

「でもさ、やめとけよ」

「なんで」

「インフルエンザやで? 感染(うつ)ったら大変やん」

「……まぁ、そうかもしんないけど。なんかそれって、ばい菌扱いしてるみたいじゃない?」

「そういう意味やないけど……」

 翔が困った表情になった。

「ゴメン。別に意地悪で言ったわけじゃないよ」

「うん……」

 しょうがないな。翔って案外、気にしすぎなところがあるしね。

「じゃあ逆に質問」

「何?」

「朝倉さんがインフルエンザです」

「なに―!?」

「お見舞い禁止! さぁ、どうする佐野 翔!?」

「そんなん関係ないわ! ソッコーで見舞いに行く!」

「だろ〜!? 俺も、そういうこと」

「でもさ」

 翔が痛い質問をしてきた。

「陽乃は彼女。お前、橋本さんっていう彼女おんのに、放置して行くん?」

「ウッ……」

 困ったことを言う。そう。これが俺の悩みの種でもあるんだ。

「橋本さん……寂しいやろなぁ」

「ウッ」

 良心がうずく。

「いちおう、了解取ったほうがえぇんちゃうか?」 

 そのほうが安全かも。俺はビビリつつも、絵美のトコへ了解を取りに行った。

「いいよ、別に」

「へ?」

 あまりにあっさりした答えに目が点になりそうだった。

「だって、幼なじみが病気でしょ? 私でも心配してそれはお見舞いに行くよ」

「嫉妬とかせぇへんのか?」

「うーん……。ないって言ったらウソになるけど、私は春くん信じてるから」

「……。」

 なんでか翔まで一緒に赤くなってる。

「えぇなぁ、お前のとこの彼女は。オレやったら殺されるで、絶対」

「それ、朝倉さんの前で言わないほうがいいと思う」

「そやな」


「ゴメンなさいね。インフルエンザだから、やっぱり人と会わないようにって言われてるの」

 絵美の許可が出ても、家族の人に門前払いされた。これは仕方がない。

「わかりました……。あの、郵便ポストに部活からの手紙入れておきますので、よろしくお願いします」

「わかったわ。ありがとうね、春くん」

 俺は手紙をポストに入れて、メグの家を後にしようとした。けど、ちょっとだけ様子を見ようと思って俺はすぐに家へ戻った。

「ただいま!」

「お帰りなさい……って、春樹?」

 カバンも放ってすぐにベランダへ出る俺に母さんはとても驚いた。俺の家は、アパート。アパートといっても、文化住宅みたいなのじゃなくって、マンション風の賃貸アパート。そんなにボロくないよ?

 そこからメグの家はすぐ。っていうか、隣。だから、幼なじみで仲良くしてきた。俺の家のベランダからメグの部屋のベランダは、すぐ。

 そっとバレないようにベランダの柵を越えて、メグの部屋の窓を開けた。

「スゥ……スゥ……」

 薬が効いてるのか、メグはよく寝てた。

「……タオルが(ぬる)くなってる」

 俺はタオルを手にとって、しばらく考えた。きっと、俺の手のほうがタオルより冷たい。ドキドキしたけど、ちょっと手を当ててみた。

「……気持ちいい?」

 寝ているので聞こえないと思って聞いたら「うん」とだけ答えが返ってきた。


 翌日。

 メグは元気な顔で学校にやってきた。

「こんにちは〜!」

「おーっす。すっかり元気そうやな」

 翔が嬉しそうに笑った。

「はい! いい夢見たんで」

 そういうと、メグは俺のほうを見た。

「ね!」

「へ?」

 そっとメグが近づいてきて言った。

「ありがとね。でも、最初で最後でいいからね」

「……バレてた?」

「あの時、目ぇ覚めたのたまたま」

 思わず顔が赤くなる。

「あのさ」

「わかってる」

 メグは笑顔で答えた。

「幼なじみとして、でしょ?」

「……ゴメン」

「謝らなくていいよ! よしっ、練習、練習」

 メグはそういうと走っていってしまった。

 難しいな。傷つけずに、人を愛するって。

 綺麗ごとかもしれないけど、俺は絵美もメグも、大事な人なんだ。


 二人が、幸せでありますように。


 心から、そう、祈ります。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ