23☆ 重なる交差点
ブーッ、ブーッ!
「んぁ……寝てた、俺……?」
こんばんは……かな。とりあえず、こんばんは。瀬戸優輝です。
「まだ8時かぁ……やべ〜。英悟の予習全然終わってない……ックシュン!」
いつのまにかタイマー設定になってた暖房が切れて、部屋が冷えちゃってる。ヤバいよ。冬休みの課題がまだ終わってないってのに。でも、メールだけは確認しないとな。
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<0001>
1/5(金) 19:58
送信者:吉山 亜紀
件名:(non title)
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こんばんは☆
宿題終わってる? 終わっ
てないでしょ(笑)
うわぁお! よっしやまあきさんじゃないですか!
どうよ!? 彼女からメールだよ!
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<0001>
1/5(金) 19:59
宛先:吉山 亜紀
S b:(non title)
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終わってないよどうせ(笑)
どうしたの、メールなんて
珍しいな(^^)
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<0001>
1/5(金) 20:01
送信者:吉山 亜紀
件名:Re:
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あたしも、宿題まだ終わっ
てないの。それでね、つい
でにって言ったらなんなん
だけど、相談があるの。で
きたら……乗ってもらいた
いなぁ〜なんて思って(^
^;)
相談だって!? きっと、何か困ってることがあるに違いない!
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<0001>
1/5(金) 19:58
宛先:吉山 亜紀
S b:(non title)
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いいよ☆ 俺なんかでよか
ったら♪
♪はちょっとキモかったか……?
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<0001>
1/5(金) 19:58
送信者:吉山 亜紀
S b:(non title)
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アリガトー! もう、すっ
ごく助かっちゃう☆ じゃ
あ、つくし野川沿いにある
喫茶店で「つくしんぼ」っ
ていう店あるのね♪
そこで明日の午後3時に待
ち合わせでいい!?
翌日。
俺はそういうわけで、いま吉山と待ち合わせしてる最中です。落ち着かない……。ていうか、俺の格好、変じゃないだろうな?
何回かお手洗いへ行って、髪形が乱れてないかチェック。女みたいとかいうな。恋する男は忙しいんだ。
午後2時45分。やっぱり吉山だ。時間の15分前に来る。よく30分前に来たもんだ。
「あれ!? 早いね、瀬戸くん」
「まぁね。暇人だし」
「よくいうよ〜。宿題終わってないって言ったクセに」
吉山はクスクス笑いながら、俺の前に座った。
「それで……相談って?」
「それより、宿題が先」
「真面目だねぇ、相変わらず」
「ほら、早くするよ」
仕方がない。吉山はこうなると言うことを聞かないからな。俺もおとなしく従って、宿題を進めた。
集中すれば俺もできるじゃん? だって、もう午後5時だ。あれから2時間近く、宿題を集中してやったことになる。しかも、苦手な世界史の宿題だ。
「……うお」
思わず声が出た。
「どうしたの?」
「終わった……」
「世界史? 良かったね〜!」
吉山は嬉しそうに笑う。吉山は吉山で、苦手な数学の宿題があと一歩で終わりそうになっていた。
「ところでさ、そろそろいいんじゃない?」
「何が?」
「相談って、何なのさ」
「……。」
あれ? 急に黙っちゃった。俺、なんかマズいこと言った?
「半年くらい前のメール、覚えてる?」
「え?」
半年前っていうか……あれは5月末頃だったような。結局、プライベートで吉山とメールをしたのはあれが最初で最期のような状態で、正直昨日のメールはビックリした。
「あー、うん。覚えてる」
「あの時、あたしが冨岡くん好きって言ったこと、覚えてる?」
体に衝撃が走った。つまり、今日の相談内容はきっと……ヒロに関することか。バカみたいだ。また、ヒロのために俺は尽くさなきゃなんないのか……。
「あぁ、うん」
「あの時、なんとも思わなかった?」
「別に……」
ウソつき。俺のウソつき。言え。ショックだったって。
「……そう」
沈黙が続いた。
「あの……ね」
突然、亜紀が落ち込んだ様子を見せた。
「あたし、ウソついてたの」
「ウソ?」
「うん……あたし……」
亜紀がまっすぐ、優輝を見つめた。
「ホントは、瀬戸くんが好きなの」
「……まっ、またまたぁ! 冗談はいいって」
優輝は慌てて目を逸らしたが、グイッと亜紀が強引に自分の方へ顔を寄せた。
「ホントなの」
「……。」
「好きです。付き合って、ください」
「オッ、俺も……」
優輝が今度はしっかりと、亜紀の目を見つめた。それからしっかりと、言った。
「君のことが、好きです」
「ありがとうございました〜」
店員の声を聞き流しながら、優輝と亜紀は手を繋いで店を出た。
「それじゃ……また明日ね!」
「うん! またな、亜紀!」
交差点で、優輝と亜紀は別れた。今度はズレていない。しっかりと想いが交差して、想いは通じた。
優輝はふと空を見上げた。冬にしてはいやに空が高い。優輝は嬉しそうに微笑みながら、家へ向かって歩き出した。