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番外編◆席替え争奪戦!

「頼むわよ〜……!」

 朝倉 陽乃(七海高校2年C組女子1番)は用意されたくじの箱の前でジッと引いたばかりのくじを睨んでいた。

「おっ、やったぁ!」

 その声にクラスの女子の一部が視線を注いだ。

「窓際の後ろやん! やったぁ! 今の時期寒いから、窓際がえぇなあと思っててん!」

 声の主は佐野 翔(男子11番)。友人の川崎 慎也(男子6番)が横から羨ましそうな顔で覗き込んだ。

「お前ってさぁ、ホントくじ運いいよな……」

 慎也はウンザリした様子で呟く。

「慎也はどないなん?」

「教卓の目の前……」

「マァジでか! 頑張れよ、優等生!」

「嫌味なヤツだなぁ……」

 そのやり取りを見た女子たちは一様に黒板に釘付けになった。なんと、翔の周りが見事に空席になっているのだ。そして、その席を狙っているのは何も陽乃だけではなかった。

 ()(ざき) 菜緒(なお)(女子19番)はそんな女子たちとは一線を画している。というのも、親友である陽乃の彼氏である翔のことを狙うツモリなど毛頭ないし、そもそも自分には意中の人がいるのだから。

 ()(とう)亜里沙(ありさ)(女子9番)は、翔の周辺を狙う一人。その友人である()(えき) ()(さと)(女子10番)、(てる)() (ひろ)()(女子14番)も翔の隣や前後を狙う人物である。

 亜里沙たちとはまた異なり、女子委員長の(その)() 真央(まお)(女子11番)、岡持(おかもち)麻理子(まりこ)(女子4番)、原島(はらしま) 美絵(みえ)(女子16番)も翔の隣を密かに狙っていた。

 一方の男子生徒は男子生徒で、それぞれの意中の人がいる者はその人の隣になるよう、密かに心の中で祈りを繰り広げていた。

 栗山(くりやま)裕一郎(ゆういちろ)(男子8番)は亜里沙、立川(たちかわ) 賢輔(けんすけ)(男子12番)は真央、()(もり) (たく)()(男子16番)は美絵といった具合だ。

 翔が心配しているのは友成(ともなり) (かず)()(男子13番)であった。彼は普段から何かと「いつ別れるんだよ〜?」というような発言を(若干フザケている感じは拭えないものの)言っているし、気づけば陽乃を目で追っているなんていう信じられない事態も、授業中ちらほら目撃する。そのため、翔も席替えのたびに落ち着かない気分になるのだ。

「おい、陽乃のヤツ何番かわかるか?」

 翔は心配そうに慎也に聞く。

「いや、それがさっきから朝倉さん、クジをにらめっこしてて全然開く様子ないんだよ」

「じゃあ、全然わかんないってことか……」

 翔は悔しそうに陽乃のほうを見た。

「ぎゃああああああ!」

 突然、亜里沙が叫んだ。

「どうしたの!?」

「あたし……」

「まさか!」

 女子がざわめく。

「廊下側の一番前だぁ……」

 そのまま溶けるように亜里沙は床にヘタリと座り込んでしまった。

「なぁんだ、よかった〜」

「急に大声上げるから、ビックリするよね〜」

 他の女子たちは一様に安堵の息を漏らした。

「うおおおおおっ!?」

 次に声を上げたのは賢輔だ。

「どした!?」

「まさか……」

「俺、後藤の隣だぁ……」

 賢輔が恨めしそうに亜里沙を見つめる。

「何よ」

「別に」

 菜緒は付き合ってられないというような表情を浮かべ、立ち上がった。そして向かうはクジの箱。

「あ、今から?」

 男子委員長の大迫(おおさこ) (けい)()(男子5番)が菜緒に聞く。

「うん。そろそろ空いてきたから」

「はい、じゃあどうぞ」

 といっても、残っているクジは2つだけ。あとの1つはいったい誰が引いていないのだか。

「俺と矢崎で最後」

「あ、じゃあこの最後はアンタなんだ」

「うん」

「じゃ、あたしこっちで」

 菜緒が狙うのは森本(もりもと) 涼平(りょうへい)の隣のみ。それ以外の場所はまったく興味がない。ちなみに、涼平の場所は16番。隣や前後に行くには24番、26番、15番、17番を引く必要があった。

(頼むわよ〜……!)

 菜緒は思い切りクジを引いた。


「ようし! では、これからしばらくこの席で行くぞ〜」

 担任が満足そうに全員に呼びかけた。

「……。」

 一番ふてくされているのは他でもない、陽乃だ。

「おぉい、朝倉。旦那の近くにいけなくて辛いのはわかるが、元気出せ」

「ダッ、ダンナなんかじゃないです!」

 ドッと笑い声が起きる。翔も一緒になって笑っていた。

「おい、矢崎も死んでるな」

「だってぇ……」

 涼平の隣に行けなかったから、などと言えるはずもなかった。

「まぁ、女子はいつものことながらなんか楽しそうだったけど、今回の席でも文句言わずに楽しむこと! 以上ッ! それじゃあ、授業に入るぞ」

 担任はそういうと、すぐに教科書を取り出した。

「……。」

 陽乃は授業が始まってしばらく、何か視線を感じるのに気づいた。ふと後ろを振り返ると、翔が嬉しそうにニコニコ笑いながらこちらを見ている。

「あ……」

「どした、朝倉」

「いえ」

 陽乃は今さらながら気づいた。陽乃の位置は翔からは離れた廊下側に近い中央あたりなのだが、その陽乃をジッと翔が見つめていたのだ。何も陽乃だけではない。亜里沙、知里、博美も陽乃の周辺を取り囲むようにいるので、全員同じ気分を味わっているのだ。

 翔はメールが来たので開けてみた。慎也だった。

 

『この犯罪者(笑)』


「なんやこれ」

 翔はよく意味がわからなかったが、陽乃と目が合ったのでニッと笑っておいた。とりあえず、しばらくは翔の視線に慣れるのに時間がかかりそうだ。陽乃はそう思いながら、黒板へと目を戻した。

 次の休み時間、突然亜里沙が叫んだ。

「次の席替えの場所、決めとこう!」

「えぇ〜!?」

 もちろん、この後席替えのクジが教室に出回ったのは言うまでもないことである。




<おまけ・席替え後の席順>


教卓前:川崎 慎也


校庭側、前列より:飯田/高坂/津嶋/渡辺/佐野


廊下側中央、前列より:友成/穂森/朝倉/佐伯/大迫



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