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22♪ 天使の梯子

「それで、この部分で主人公は――」

 現代文の授業。チョー眠いんですけど。早く部活の時間にならないかな〜。

 あ、どうも皆さんこんにちは。授業中は低燃費少女、田中 美里です。でも低燃費だからって居眠りしてるわけではありません。先生の言葉が右から左へ通過するだけのことなのです。つまんないから、慎也にメールをしてみよう。


 『今何してる?☆☆』


 送信っと。

 あ〜、早く返信来ないかなぁ。

 お、バイブが震えてますね! 来ました来ました!


 『勉強に決まってるだろ。お前も勉強しろよ』


 何!? 絵文字すらないこの返し……。これでも彼氏!? あぁ……いつまでたってもツンデレだから困っちゃうな。

 関係ないけど、最近天気が悪い。季節の変わり目だからかな。いま、10月下旬なんだけど、雨が急に降ったり晴れたり、変な天気ばっかり。気温も変動が激しくて、体調崩したりして休んでる友達もチラホラ。

 あたしも体調崩したら、慎也心配してくれるかな。なんてね〜。あたし、そういうキャラじゃない気がするけどね。

「それで、ここで主人公はふと空に目をやって……」

 前では現代文の授業が淡々と進む。お弁当も終わって、午後2時前。あ〜……眠い眠い。でも寝るとチョークが飛んでくるんだよね、この先生。しょうがないから、先生がいま一所懸命解説してる小説でも読んでみるか。

 なになに。天使の梯子ぉ? クサいタイトル〜!

 ……。

 ゴメンなさい。ウソです。あたし、天使の梯子が何なのかよくわかってないだけです、ハイ。

 辞書、辞書っと。最近は電子辞書なるものが出てきていいですよね〜。

 『天使の梯子→薄明光線(はくめいこうせん)

 なんだこりゃ。難しい名前になってきたな。薄明光線……っと。


 薄明光線(はくめいこうせん、crepuscular rays)は、太陽が雲に隠れているとき、雲の切れ間あるいは端から光が漏れ、光線の柱が放射状に地上へ降り注いで見える現象。


 へ〜。そんなのあるんだ。あたし見たことあんのかな。


「天使の梯子?」

 部活へ行ってからエミリンに聞いてみた。エミリンなら何でも知ってそうだから。

「うん。あたし、聞いたことも見たこともないもんだから」

「え? 見たことないの?」

「うん」

「そんなはずないと思うけどなぁ……。ほら、今日なんかそうだけど、こんな風に曇り気味の日に雲の隙間から光がサァッと差してきたの、見たことない?」

「ない」

「そ、そう……」

 エミリンが困ったというような顔をしてる。あたしのこういう性格、いい加減直さないとなぁ。慎也にも指摘されるわけだわ。

「今日なんかいい具合で見えるチャンスありそうなもんなんだけどな〜」

 エミリンはそう言って空を見上げた。あたしもつられて見上げてみるけど、特にコレといってそれらしい光の筋は見えなかった。

 合奏が始まる。あたしのパートであるパーカッションはちょうど西日のキツい場所にあるから、合奏時にはカーテンを閉めてることがほとんど。だから、雨が降ってきたとかは反対側の窓を確認しないとわからない。でも、そっちに背を向けてるあたしたちには残念ながら、その窓も見ようと思うとちょっと辛いものがある。

 ん?

 なんか明らかにおかしい方向から光が差し込んでくるんですけど。まぶしいってば。

 ん?

 あれ!?

 慎也じゃない。鏡?

 あ! それあたしの鏡! そういえばアンタ、さっき鏡貸してとか言ってた。ひょっとしてあたしに嫌がらせでもしてるの?

「あっ」

「どうした?」

 しまった。思わず声を出しちゃった。先生も気づくくらい大きい声だったみたい。

「すみません、何でもないです」

 きっとそうだ。さっきのメール、返信し忘れてた……。慎也、それを根に持ってるんだ。でも、そんなちっちゃい男だったかなぁ……。

 それにしてもまぶしい。意図的にしか思えない。強く慎也を睨んでみるけど、まったくやめる気配なし。いったいなんなの。

 あ、降ろした。今度はケータイいじってる。こら、合奏中よ。

 ん? バイブが震えて……あたし?


 『鏡見ろ』


 鏡?


 あ……。


 天使の梯子が、鏡で映って反対向きになってるけど、見えてる。


「こら! 川崎!」

 東先生の声が響く。

「鏡持ってボーッとして、何やってんだ!?」

「天使の梯子、見せてました」

「……誰にかは聞かないでおこう」

 先生がニッと笑う。部員みんなが笑い出した。

 恥ずかしいけど、君の気持ちは嬉しいな。


 ありがと、慎也。



「ねぇ、お返しになんかほしい?」

 帰り道。あたしは慎也に聞いた。

「ん〜……そうだな」

 慎也はしばらく黙った後、突然こんなことを言った。

「キス?」

「はっ……はぁ!?」

「冗談だよ! 本気にすんなって」

 なんだ。本気にしたあたしがバカみたい。

「美里」

「な……」

 は? 何?

「本気にしないバカがいるかよ」

 ……このツンデレめ。


 まぁいっか。あんな綺麗なもの見せてくれたんだし、ちょっとくらい許してあげよう。


 ……。



 やっぱ、今回だけね!





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