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第五章~神、それと人間と言う者達~

「あ~りゃりゃ、演習場ボコボコだわ」

龍介が演習場の床を見ると先程……蒼夜聖凍術で所々凍りついているし、雷で穴が開いている。最終的に來斗が大鎌を振り回していた為、特に地属性の攻撃で床はボコボコに盛り上がってしまっている。

「はぁ……仕方ない校長に話してくるか……」

「その必要はない……」

來斗がゆっくり床に手を触れる。

「はあ!?」

パァァ……と演習場を光が広がり床も壁も元通りいやそれ以上のモノに作り替えられる。

「サービスしといたがこんな感じでどうだ?」

「凄い……」

あんぐりと來斗、蒼夜以外は口をポカンとだらしなく開けているだけだった。何て言っても今まで無かった見学用の席が二階席として作られ階段も整備されている。

「す、すげーな……取り敢えず入部試験も終わったし部室に神力計あるから計らせてくれ」

龍介が部員全員を部室に連れて行く。


「隆二、神力計とは何だ?」

「何だ蒼夜知らないのか?文字通り人間の持つ神力を測定する機械だ。本当どこの生まれだよ、お前……來斗もあんなに神力使っても息切れもしてねーし?大体蒼夜の行使したのは上級聖術だぞ?」

「私より來斗様の方がお強い、先程のは人を観察して極力神力を抑えてらっしゃるのだ。私も本気の來斗様はどれ程の力をお持ちなのか知らない……」

腕を組んで考えるが果たして人間界にある測定器とやらで計りきれるモノなのだろうか?と考えた。神界にある測定器ですら來斗の場合測定不能なのに……

「來斗様は計られない方が良いと思う」

「なぜだ?」

「……その、機器を壊すかもしれないからだ……」

「まさか~……本気か?」

一瞬『まさか』と思ったが上級聖術を使いこなす蒼夜が言うのだ恐らく本気なのだろう。でもあの測定器は最高どこまで計れるのだろう?とも思う。そう言う興味があるかないかと言うと……興味はもの凄くある。


部室に着くと

「先ずは鈴からだな一応これは万単位まで計れる奴だから思い切りやってくれ」

「わ、分かりました!」

両手で握って神力を流すように説明される。一通りやり方の説明を受ける鈴。その様子を來斗も蒼夜も興味を()かれる様で見ているのだが來斗や蒼夜は恐らくダメなのだろうな……と隆二は思うこの二人が万単位に思えなくなってきたからだ。


ピピピ……


「おっ!?出たか、どれどれ千五百か凄いな!鍛えればもっと上がっていく数値だ!」

「本当ですか!やった!?」

ぐっと手を握り喜びを露にする鈴。今まで自分の数値を知らなくて千を越えて期待されていると嬉しくなるのだろう。

「じゃ次は蒼夜から計るか?」

「私も來斗様も遠慮する」

「何故だ?この機械が信用出来ないのか?」

そう言う訳では無いのだが……。

蒼夜は黙って見ている來斗に目配せをすると、來斗が口を開く。

「それより上の数字が出る機械とやらはないのか?」

「……は?」

少しの間間が空いてポカーンと二人を見る部員達……一人顔色を青くしている隆二。そして幾許(いくばく)かの静かな間。先に口を開いたのは來斗だった。

「まぁ壊しても良いなら蒼夜……握ってやれ」

「……は、はあ」

そう言って鈴の持っている測定器を受け取ると同じ様に握って少し神力を流す。


ボンッ!


数値を振り切ったと思ったらボンッ!と音を立ててバラバラと壊れた部品がバラバラと落ちて行く。龍介は口の隅と眉をヒクヒクさせている。人間なら所詮どう頑張っても万単位で収まる……筈だ。なら蒼夜は?九十九万九千九百九十九以上って事?と思うと皆の顔が引き連る。

「だから申したではないか……」

「はぁ……」と溜め息を着いて來斗はバラバラの測定器の上に手を翳す。すると光に包まれまるで新品かの様な姿で元に戻っている。

「この測定器の時間を巻き戻して一応壊れる前の姿に戻して置いた」

「……(いにしえ)の時間術、もう何千年前に滅んで……もう行使出来る者は存在しないって……」

こりゃ……もぅ隠し続けるには限界があるなと感じた來斗と蒼夜はお互いに目を合わせて頷く。

「「……実は」」



「待ってくれ!來斗もう一度最初から頼む」

隆二が來斗に掌を向ける。頭が混乱して思考が付いて来ずストップの合図を出す。

「私と蒼夜は神界から来て本名を私はエリセ・オリジンという」

「私はヴァン・ウィズアースでフェンリル神獣の獣人だ」

「エリセ・オリジンって全知全能の世界の神々の頂点に君臨するお方の名だよな?それが……來斗?」

その程度の知識は博識ではない透も分かるらしく横から入って来て。龍介も葉月、鈴も目をギラギラさせて來斗を見ている。

「うむ……今は人間に化けているからな人らしい姿をしておるが本来は神の姿である」

「魔界がないって言うのも本当なのか?」

「あぁそれは無い!奴等は今、人間世界の片隅でこっそりと人の闇に溶け込んでいる」

それを聞いて透は來斗の胸ぐらを掴む。

「じゃ!お前が魔界を滅ぼさなきゃこっちに魔族は現れなかったって事か!?」

その物凄い剣幕に何かを察する來斗。もしかして透は既に魔族の被害を受け片親か……独りかどちらかなのでは?とそんな疑念が湧いてくる。

「透……親はどうしてる?」

「お袋は……生きてるけど今は寝たきりだ……俺が祓魔部に入って直ぐだった……魔族に取り憑かれた人が運転してた車に轢かれて……」

乱暴にドンッ!と來斗を突き飛ばす。

「無礼だぞ!今魔界があってみろ!人間界の愉しさに目を付けた魔族にこの人間界(せかい)は覆われていたのだぞ!」

怒りを露にする蒼夜。それを抑えて來斗は続ける。

「そうか、父親は魔族にでも殺されでもしたから……」

「そうだ……だからそんな魔族が許せなくて祓魔部に入部したんだ」

ギリッと奥歯を強く噛み締める透。片親は魔族に殺され……残った片親でさえ今は魔族のせいで寝たきり状態となれば怒り混じりになるのは分かる……。守る力があったのに気付かれない侭、そのせいで当て付けのように再び本人ではなく関係ある人物を狙うなんて如何にも魔族らしいやり方だが……。運命とは時に残酷で気が狂いおかしくなる程だ……。

「透は今、日祓から助成金を毎月貰って生活している、その代わり一生を祓魔師として働くという条件付きだ……戦力として認められているからな」

龍介が來斗に告げる。

「俺は強くなりたいんだ!ならなきゃイケないんだ!?」

ガンッ!と壁を殴る透、やり場の無い怒り、もどかしさ、悲しみが犇犇(ひしひし)伝わって来た。

「まぁ透落ち着け、お主はまだまだ強くなる」

蒼夜が背中を向けている透に歩み寄る。

「でも、どうしたら良いのか分からない……」

「神界には無属性しか使えない部下は居るしそれは私も來斗様も承知だ」

「蒼夜は私の命もあるし、他の部員と神力のコントロールして貰いたいからな……透は私に任せろ」

「……來斗……悪ぃ……」

声が少し震える透。

「良いのだ……もう良いのだ」

ポンポンと背中を撫でる來斗。


それを聞いて思い出したかの様に龍介がパンッ!と手を叩く。


「そう言えば不安を言うわけではないが神様と神獣獣人ってどれくらい強いんだ?」

「あぁ……話が脱線したな」

うーんと顔を合わせる二人。

「神界にも神力を計る測定器の様なもの最も神界(こちら)では神力計と呼んでいるがそれは存在する我々兵士は月に一度程度で計っている」

その発言に他の部員や龍介は生唾を飲んだ。一体どの位なのだろう?來斗は謎だけど?蒼夜は神獣だ五千万位?低く見積もっても???

「ほう、その様な事をしていたのか?蒼夜はどの位なのだ?」

「はい、私は大体七十億位ですね……獣体では百億位でしょうか?後は部下の獣人族しか知りませんが部下は七億から十億位を平均ですね……天使族より戦闘や力は才がありますが、能力は劣りますね」

ケラケラと面白そうに話す蒼夜が恐ろしい。

「……だ、そうだが?ん?どうした?」

來斗が他の部員と顧問を見ると皆腰が抜けているような印象を受けた。



そもそもフェンリル族は神獣扱いで神獣は他の獣より人間体になっても獣体になっても能力値が高い。蒼夜の場合神獣の中でも始祖のフェンリルの生まれ変わりと……似ていると言われ物心付き出した頃に神獣界を追われたのだ。そう神殺しの大罪の罪を着せられ。

「まぁ蒼夜はフェンリルの中でも特別の存在なのだからな能力値はずば抜けて居るのだろう」

來斗が少し自慢げである。

「じゃ來斗は?」

「私は神力の根元である為計っても計り切れないのだ……つまり簡単に言うと零の侭針が動かん」

「……」

暫くの沈黙が続く、誰もが流石だ……この二人居れば自分達は必要ないんじゃ何でヒクヒクしている。

「葉月の片手銃は両手銃に出来ないのか?」

そう來斗が口を開く。両手銃は二種類以上の聖術が使える者が主に使っている。それは葉月ももちろん承知だ。

「私……火属性しか使えないから……」

少し悔し気な表情を見せてホルスターから紅焔を抜いて見詰めてホルスターへ戻す。

「どう思う蒼夜?」

「私の見立てでは水属性の適性もあると思うのですが?」

ふむと考える、すると葉月は蒼夜に近付き……ガシッと手を掴む。

「本当?ど、どうしたら良い?私にはまだ適性属性があるなら頑張る!教えて!」

縋る様に手を握られその勢いに蒼夜も少し負けそうになる。そりゃそうだろう……一族の落ちこぼれと呼ばれ、自分自身そう思っていて強くなれないとも思っていたからだ。

「あぁ……まだ生かせてないだけだ火は聖術の中でも覚えるのが簡単な方だから極めれば強く強力だがどうしても限界がある、葉月は中級の基礎までは耐えきれる様だが、水属性の聖術も使えればより効率的に敵を滅する事が出来るだろう」

成る程と龍介が頷く神や神獣である彼らの眼があれば人には分からないモノが見えるのだろう。

「來斗」

「なんだ?龍介殿?」

「二ヶ月後に交流戦がある、参加して貰えないか?それは三人一組で出るのだが……二組まで出場権がある六人で丁度二組だ!相手は日本に二校しかない我が校ともう一校なんだ、後は現役チームへの挑戦もある一組ずつ一ブロック、二ブロックで戦うんだ……今の所五勝二敗なのだ流石に現役祓魔師には敵わないが……」

「となるなら現役すら倒したいものよのう……」

「そこまではいいんだ!皆ライバル校に負けたくなくてな」

「うむ、考えておこう」


そしてその日は解散になった。

「私が明日までに葉月の武器を作っておこう」

蒼夜が口を開く。それを聞くと葉月は焦り出す。

「こ、これから日祓行くの?」

「そうなるな」

「わ、私も行くよ!」

「良いですか、來斗様?」

來斗に了承を求める蒼夜。

「まぁ私達は人間界(こっち)に来たばかりで日祓本部の場所が分からない案内(あない)して貰いたいが夜になるぞ?」

來斗の言う通り夜は魔族の動きが日中より活発になる。まぁ葉月を家に送れば良いだけだが余り遅いと葉月の家族が心配するのでは?と思ったからだ。

「大丈夫よ、家は!」

「まぁ私達としては葉月の看も身も案じているのだがな」

來斗が言うと、うんうんと二、三度蒼夜も頷く。

「葉月、お前は女なのだからな?」

蒼夜に頭にてを乗せられポンポンと頭を撫でられる。祓魔師や同じく祓魔部には『自分は怪我してるとか』『自分は体調が悪いから』『自分は女だから、非力だから』等と言う言い訳は通用しない世界だ。戦えるものは健康や男女とか関係ないのだ。それは葉月も自覚して幼い頃からそう言われて育てられて来た。しかし圧倒的な力を持つ二人にとって人間は全て庇護の対象だし、まだ駆け出しでたしいて力を持たない女の祓魔師の卵は守るものだと思っていた。

「わ、私だって自分の身くらい守れるよ!?」

「あぁ、そうしてくれ……頑張れ葉月」

「來斗様には奥方様がいらっしゃらるからなお優しいのだ……私は誰かを(めと)るつもりはない、そもそも私は一生來斗様にお使いするつもりだからな」

てくてくと日祓へと続く道路を歩いている他の生徒とは学校で別れ今は三人で歩いている。特に何を話すでもなく進む。途中道が分かれていると葉月が教えてくれる程度だ。街の装いは特に大きな変化は無さそうだ。街の大きな時計を見ると夕方の四時近くになった辺りだ。部活がなく街に遊びに出ている学生がちらほら見える。

「蒼夜」

「は!」

「?」

來斗は何かを感じて蒼夜に声を掛けると蒼夜はその場から消える。どうやら蒼夜にも分かっているようだが葉月には何がどうしたのか気付かなかった。暫く待って居ると……

「來斗様、私達と葉月を狙っていた魔族は滅して来ました」

「なかなか、勘の良い魔族だな……葉月は兎も角、私達もか……葉月分かったな?これが私達と歩くと言う事だ」

來斗の緋眼がギラッと光る。

「でも……二人が私の為に……」

恐怖で震えた。しかし來斗と蒼夜は自分の為に武器を作ると言っているのだ、自分がいた方が絶対後々調整とかでまた手間を掛ける事になる。これは危険を犯してでも自分が居た方が絶対良いと思ったからだ。

「冗談だ、来るなとは言っていない……実際武器を作る時には本人が居た方が良いのは事実だ」

來斗の顔が綻び、葉月の頭をポンポンと撫でた。さっきから蒼夜と言い頭を撫でられまくりで葉月は少し頬を赤く染めて……

「蒼夜くん、私迷惑じゃないかな?」

「私は來斗様に従うのみ、來斗様が守れと言うなら葉月だって何だって守るのみだ」

一見……冷たい態度にしか取れないがその金色の瞳の奥には、何か良く分からないが温かいモノがあってそれは葉月を照れさせるには申し分のないモノだった。


そして日祓の近くに行くに連れ人通りが少なくなり厳重な警備が敷かれていた。正門まで辿り着くと日祓の警備員の者に止められる。聖術を施した警棒状の武器を腰に携えている。

「わ、私は!天の川高校三年の一ノ葉葉月です!祓魔部の取得ナンバーは……」

ブツブツと葉月と警備員が何やら話をしている。警備員は簡易屋根のある所に行き何やら打ち込んでいる。來斗と蒼夜には何をやっているかはサッパリ分からない。

「確かに天の川高校の祓魔部の生徒だな良いだろう……そっちの二人は?」

警備員が不審な目で二人を見る。その不愉快極まりない視線に蒼夜が不快感を露にする。

「私は天内來斗こっちは兄の蒼夜だ、なんばぁと言うのは分からないが葉月の連れで親は天内楓だ」

「!?天内楓様のご子息!確か今日近い内に来るかもしれないと仰っていた」

しかも來斗と蒼夜の胸には日祓バッチが付いている。

「ど、どうぞお通り下さい!」

ガラガラと門が開いて中へ通して貰う。葉月が「ふぅ」一安心している様だった。その姿がひどく滑稽で來斗はクスリと微笑してしまう。

「杞憂であっただろう?」

「はい……ってか楓様ってどなたですか?」

「來斗様の奥方様だ、日本の神でも在らせられる」

そして日祓の施設内に入ると、入ってすぐの辺りに楓の姿が見えた。そして葉月と楓はお互いに礼をする。

「母上、お喜び下さい……私の祓魔部の先輩です」

來斗が葉月の手を引いて楓の前に寄せる、もう葉月はガチガチに緊張している、その姿が余りに可笑しく來斗はニヤニヤが止まらない、蒼夜は(あわ)れみさえ覚え「はぁ」と溜め息を()

「初めまして!わ、わわ私は……天の川学園三年の一ノ葉葉月と、も、申す者です!本日は楓様を謁見出来まして!大変恐縮と共に光栄に存じます!!!」

その可笑しな自己紹介にクスクスと笑いながら手を差し出して……

「私は天内楓、來斗様と蒼夜様から私のことを聞いている様でしたし、來斗様は私の旦那様で來斗様より日本を預けられている身であり神と言うことになっております……ですがこの事は他言無用でお願いしますね?」

笑ってはいるが流石に神……來斗とはまた別の圧が凄い。

「ぞ、存じております!!!」






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