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その8です。
もう一回刑事さんたちパートです。
「あの二人、公安を騙ってたってことですか?」
「いや、それはないな」
警察手帳代わりの携帯端末は、独自の規格に加えて民生用とは比べ物にならないほどの高度なセキュリティを採用しており、そうそう簡単にはハックできないと喧伝されているシロモノである。
そもそも、あんな外見も名前も外国人丸出しな人間を公安所属とするのは無理がある。
公安とは、極右・極左団体、過激な思想を謳う政治団体や宗教団体、海外勢力による工作活動などを捜査対象とした組織である。協力者としてならまだしも、正規の捜査員として警察手帳を外国人に支給するとは考え難い。
ならば、と思索を深めた間米は、ふとある「噂」に思いが至った。
アホらしい。ばかげた話だ――と即座に却下するが、否定すればするほどその噂で思考が縛られてしまう。あの廃ビルでの荒唐無稽な一幕が助長させているのかもしれない。
「くそっ」
間米が小さく漏らした呪詛に、箕山はまた失敗したことを後悔していた。
疑問に思ったのは事実だが、どうして今は飲み込まなかったのか。今晩はゆっくり休んで、翌朝に改めて吐き出すという知恵が回らなかったのだろう、と。