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その6です。
「ともかく、おさらいも兼ねて説明と質問をしようか」
やっと死体で遊ぶことをやめた巨漢が表情を引き締めた。つられて泰地も姿勢を正す。
いよいよ「仕事」の話か、と覚悟すると自然と緊張感が喉元に駆け上がってきた。
「このビルは、異界化している。異界化ってのは、前に説明したな?」
ほとんど説明なんてなかったじゃないか、などとは賢明な少年口に出さず、それでも短い時間の中で詰められた知識を復唱する。
「ものすごく簡単に言えば、異世界とか異次元とか、要するにこの世界ならざる何かが重なっている状態、ですよね」
アホみたいな答えなのだ、という頭上からの揶揄は無視する。質問の主は、この答えでそれなりに満足したようなのだから。
「それくらいしか教えてないし、難しいことは俺も分からんから、そんな認識でいいぞ。次の質問だ。お前さんが就職を希望してる『公安』とは、どんな組織だ?」
俺の希望じゃなくてほぼそちらの強要だろうが、なんて反論はやはり胸の奥に沈めて、一応は事前にネットで調べておいた知識も加えて回答する。
「日本での公安警察とは、国家体制を脅かす事案に対処する警察の部門を指すんですよね」
「模範解答だな」
つまらん、と眼前の巨漢と頭上のぬいぐるみにハモられ、さすがに泰地は憮然とした。真面目であることを馬鹿にされるのは理不尽極まりない。
だったら「イカイカって言われると、なんとなく美味そうですね」なんて冗談を――言えないのが、泰地の弱い部分だった。