29
その29です。
世界は少年の願望なんて歯牙にもかけない。分かってはいたのだけど、無慈悲な現実を眼前にすると、改めてネガティブな感情が胸に去来してくる。
小鬼を撃退した部屋から次のドアを開くと――また先客が一人いらっしゃった。もちろん、歓迎すべき相手ではない。
今度の部屋の主は、外見的には小鬼と似ているが、身長は泰地より少し(だが確実に)高く、筋肉量で見れば泰地なんて比べ物にならない。
この時点で厳しいのだが、最大の問題は「武器を所持している」点だ。
「あれ、棍棒ですよね? あんなので殴られたら確実に死にますし、そもそもリーチが段違いじゃないですか。やめましょうよ」
小鬼は小さい身体で無手でであったから勝算があったが、今度のはその二つが潰されている。「子鬼相手なら絶対に勝てる」なんて保証もないのだが、少なくともこいつと戦うよりはずっと安全な選択肢だろう。
だが(当然のように)ルデルは真っ向から否定した。
「なーにをぬかしているのだ。さっきの戦闘でも身体能力の向上は実感してるし、ルデルがきっちりフォローしているのも理解しているのだ。ならば躊躇など無用なのだ」
「いや、そう返ってくるとは予想してましたけど、もう少し情けというか……」
「我々には事実の確認と決断があればいいのだ。さあ、戦いなのだ」
いったん切ります。
夜の更新で、第0話は完結予定です。




