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その26です。
おぉっ、と漏れ出そうになった感嘆の溜息を、泰地は喉で留める。
ドア開閉を継続すること――数えるのはとっくに止めていたのだが、やっと実体のある敵が一体だけいる部屋に辿り着いた。
細目に開いたおかげで、相手にはまだ察知されてない様子。というか、ぶっちゃけ居眠りをしているようにも見えた。これこそ天の思し召しと呼ぶに相応しい。
どう仕掛けようか、と迷う少年に、ルデルは明朗な意見を授ける。
「難しく考えて慎重に行動してうっかり失敗するのが素人の常なのだ。思い切りよくスパッと突撃して、勢いに任せるのがもっとも無難なのだ」
なんだか妙な説得力がある。泰地が素人なのは紛れもない事実なので、抜き足差し足なんてやっても音を立ててしまう確率は高い。であれば、いっそ大きな音を出しながら突っ込んだ方が相手の虚をつけて有利になるのではなかろうか?
小さく息を吐いて呼吸のリズムをリセットし……最後に泰地はもう一度尋ねる。
「……本当に大丈夫なんですか? 今になっても全く大丈夫な気がしないんですが」
「安心するのだ。空の魔王と呼ばれたルデルを信じるのだ」
「すみません。魔王になったのはつい最近って、前に言ってましたよね?」
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