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25

その25です。

 以降、忍耐の単純作業を延々繰り返す羽目となる。


 扉を小さく開け、次の部屋に何がいるかを確認し、敵がいたら即座に閉め、再び開ける。何回か繰り返した末に何もない部屋を引き当てたら進んで、また適当なドアノブに手を伸ばす――ただただこれだけである。


 頭上の魔王サマからは不満げなオーラがイヤでも伝播してくるのだが、泰地にとっては生命を賭した作業なのだ。昔のゲームのように、死んだら前回のセーブポイントまで戻されるなんて少々不便な機能もない。そうでなければ、こんなつまらない行動を体感で一時間以上も続ける根性など湧く道理がないのである。


 とはいえ、かなりの時間を部屋の選別に費やしたおかげで、ゆっくりと緊張感が和らぎ、面倒臭さが頭をもたげてきたのも事実だ。どれだけ進んでも似た部屋や通路しかないのも飽きを生むし、もしかして堂々巡りしてるだけでは――と疑心暗鬼になってきた。




 その隙間へ、捻じり込むようにルデルが誘惑を仕掛けてくる。




「さっきも伝えたように、泰地には魔王のくらとして最低限の戦う力を与えたのだ」


「単純に、ちょっと力が強くなったとかって程度でしょ」


「違うぞ? 闘争の段となれば、自然と身体が勝利に向けて動くようになっているのだ。つまり、格闘の

技術を無意識に習得しているのだ」


 魔王サマのこの一言は、甘い毒となって少年の魂に浸潤した。


 彼は、多少なりとも消極的な傾向があるのは事実だが、だからといって英雄願望が皆無かと問われれば、もちろん否である。なんだかんだでマンガやアニメの「最強主人公」に憧れはある。いわゆる中二病な妄想を頭に醸成させていた時期もある。


(この魔王サマに全面的な信頼なんてできないけど、幽霊とかじゃなくて実体のある敵が一匹だけなら、ちょっと試してみるのもアリか……?)


 無論、この瞬間のルデルが軍帽の下でどういう表情を浮かべているかなど、魔王の椅子代わりの泰地に窺い知ることは不可だった。


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