23
その23です。
迷宮と化した異界にも、大まかに分けて二種類ある。
一つは普通に迷路状になっていて、部屋や通路は普通に繋がっており、マッピングしながら進むことも容易なタイプ。
もう一つが、一つ一つの空間が完全に分断されており、扉を出入りする毎にどこへ繋がるかが不規則になっているタイプ。このタイプでは、同じドアでも開け閉めする度に違う空間が待ち受けていて、地図化は不可能だ。
「じゃあ、さっきのレギオンが追ってこなかったのは……」
「うむ。扉を閉めた瞬間に互いの部屋が分断されたからなのだ。いま、そこの扉を開けても別の部屋か通路になっているのだ」
ますます俺の死亡が確定じゃん、と泰地は不貞寝をしたい気分となった。
どう足掻いてもポジティブな思考にはなれない。今まさに唐突かつ理不尽な死が訪れても、むしろ当然と納得できてしまう。
しかし、そんな精神の沈下を許さないのが頭上の魔王サマである。
「凹む暇などないのだ。ここが戦場である以上、戦い続けて活路を見出すことこそ最善なのだ。ルデルの座となった今、既に戦う力は備わっているのだ」
この言葉に、少年は現金にも光明が差し込んだ気になってしまう。
これこそ文字どおりの「一縷の望み」だ。魔王サマからチートな能力を授かっていれば、先輩の救出も異界からの脱出も朝飯前となるに違いない。実際、魔王サマの首に提げられた大きな勲章が燦然と輝いたように感じた。
もちろん、そんな都合の良い妄想など、あっさり破砕されるのだが。
「うむ。いまの泰地は、例えるならばオリンピックの全ての競技でギリギリ金メダルが取れるくらいの能力があるはずなのだ」
「……えぇー……」




