21
その21です。
扉が開いた途端、泰地はさっきとは比べ物にならないほどの不快感にさらされた。口内に酸っぱい何かが広がるが、瀬戸際で噴出を阻止できた。
やはり悪霊めいた存在がいるのだろうけど、プレッシャーが段違いだ。正直なところ、最初がこれだったら即座に気絶していただろう。
ある意味、見えなくてよかった――と自らの鈍さを感謝する泰地に、頭上から無慈悲な一言が浴びせられる。
「そういえば、見られるようにするのを忘れていたのだ。不便をかけたのだ」
こういう時だけ何故か優しく察しの良い魔王サマの囁きとともに、少年の視界が暗転する。だけど、それはほんの一秒にも満たない間であり、無意識に瞬きを繰り返した直後には、今までとは完全に違う光景があった。
殺風景で何もなかったはずの部屋に、いかにもな「幽霊」がいた。
しかも、一つや二つではない。二十か三十……もしかしたら百以上も、ぎっちりと密集していたのである。
「いわゆるレギオンってやつだな」
ヴェリヨの出した単語は聞き覚えがある。確か「軍団」という意味だったはずだ。
「さっきのアレでも分かっただろうが、幽霊なんて単体じゃ大した力はない。物理攻撃が効かないのが厄介って程度だ。そんな非力なのでも、数を集めて融合すると力も相対的に上がってくる」
説明よりも、本能で理解できた。これは、泰地のような素人が相手になる敵ではない。死んだことを認識するよりも早くレギオンの末席に加わっていた――なんて笑えない冗談が現実になっても不思議じゃなかった。
真面目な話、この先輩が同行してくれて幸運だった、と少年は心の底から実感する。適材適所という四字熟語の素晴らしさを噛みしめざるを得ない。
「で、更に厄介なのが半実体化というか――」
ヴェリヨが説明を続けようとした刹那、事態は一変した。
部屋にすし詰め状態だった幽霊の群体が、堰を切ったようにドアへ殺到し、ヴェリヨの巨体へ突貫したのである。




