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その2です。
4コママンガみたいな感覚で読んでみてください。
その昔――二十世紀末に「首都機能分散計画」なんてのがあったそうだ。
名前が示すとおり、首都の機能を他の都市へ分散させる計画だったのだが、これを時の首相が「さらに発展・強化させる」としてぶち上げたのが「並列首都計画」である。
首都の機能を「分散」させるのではなく、日本の各都市に首都機能を「並列化」させようという、今の時代から考えても無茶苦茶な夢物語だ。
当然のごとく野党から、そして与党内部、果ては各省の官僚からも挙って反対された。
しかし首相は「地方格差是正のため」「世界をリードするため」等々のフレーズを巧みに使って国民から厚い期待と高い支持を確保。その上で「新しい風を求める国民と、既得権益にしがみつく旧勢力との対決だ」と煽りに煽った上で解散総選挙を行い、国会を自らの独壇場とすることに成功した。
「並列首都計画の下地はできた。遅くとも十年後には、日本は国家そのものが首都として機能し、強く大きく発展していくだろう」
任期を全うした首相は最後にこう挨拶し、そのまま政界から引退。今はどこぞの山奥で隠居生活をしていると噂があるが、表舞台には一切姿を見せなくなった。
……で、この挨拶から七年後に「当初の計画より五年延長する」と当時の首相が発表し、更にその四年後に「もう八年は必要とされると試算が出た」と発表があり……
(去年、あと三年後には本格的な運営が可能となるって官房長官が言ったんだっけ? 二十年以上も何をやってるんだか)
先輩の愚痴を右から左へ受け流しつつ、箕山は改めて呆れてしまった。
最初の計画どおりならば、彼が高校生になる頃に並列首都は完成しているはずだったのだ。それから約十年経った今なおゴチャゴチャと進捗具合が不透明なのは、いわゆる「コンコルド錯誤」に陥っているのではないか?