19
その19です。
「お前さんが指摘したとおり、普通の武器じゃ幽霊やら悪霊の類には無力だ。だから、そういうのを相手にするときは奇跡やら祝福さやらを施されたモノ――一番手っ取り早いのが、いわゆる聖水をぶっかけて浄化させる」
とはいえ、予想外の出現で用意がなかったりする場合もあるし、逆に先程の小鬼のような実体のある相手に対しては致命的なダメージを与えられない。
そもそも、飲料のためではない水を持ち歩くなど、かさ張るし面倒くさいのが実情だ。
「そこで、科学の力で誕生したのが、この気化聖水弾というワケだ」
特殊な薬剤を添加させてタングステン鋼とほぼ同じ硬度や耐熱性を持った聖水を弾頭にした銃弾である。これによって実体のある対象にも十分な殺傷力を有しているのだが、真の威力を発揮するのは実体のない霊体など攻撃する場合である。
「周囲の温度や湿度、俺の目から得た敵との距離などのデータで、弾頭を気化させる薬剤の量を調整して発射される直前にタマへ注入する。で、撃ったタマは計算どおりに敵の鼻先で気化拡散されて、そのままあの世へ昇天してもらうって寸法だ」
「へぇ~……」
泰地は手渡された銃弾をまじまじと観察する。
形そのものは普通の銃弾だが、弾頭の部分は完全に透明で、まるでプラスチックで作られているかのようだ。触った感触も、硬いのだけど金属のそれではない。
とんでもないハイテクが存在しているのだなー、と感心しきりの泰地であったが、ここである疑問に気付いた。
「ていうかヴェリヨさん、ロボットか何かだったんですか?」
今さらかよ、と返されるのは分かっていたが、やはり恥ずかしさに赤面する少年だった。




