15
その15です。
先に説明した異界化の侵食具合を示す段階の指標は、二段階回目以降ももちろん定義されている。
第三段階とされているのは、異界との境界が歪んで滲んで曖昧になってしまい、いわゆる「迷宮」のような状態と化してしまった場合などを指すのだそうだ。
いま、泰地たちの目の前には、廃ビルの外観から考えたら絶対にありえない、百メートルはありそうな長い廊下がほの暗く広がっていた。
呆然とする少年を横目に、ヴェリヨは「いやぁ、予想外予想外」などと明るく笑っている。その軽薄さに「もしかして重大な事態ではないのかも」と楽観的に考えたくなるが、生物としての本能はそれを許してくれない。
実際のところ、この廊下から漂ってくる空気は、今いる部屋とは完全に違っている。カビやら鼠のフンやらの悪臭は感じないが、ひんやりと頬を撫でていく微風は肌を粟立たせるのに十分だった。
「……ちなみに、第四段階ってどうなってしまうんですか?」
「無論、完全に異界と融合した状態だな」
まさに現状がそれではないのか、とは泰地は口に出す勇気がなかった。
キリが良いので、今日はここまでとさせていただきます。




