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その11です。
「で、死因云々の件だが」
ヴェリヨは死体の上半身をぐいっと引き起こす。泰地は目を逸らしそうになるが、今度は必要があってやっていることだろうと思い直し、恐る恐る死体を観察した。
浮浪者なのか、衣服はもちろん肌や髪も薄汚い。まだ若いよう気もするが、正直なところまじまじと凝視する勇気など持てるはずがない。
数秒しか見られなかったが、それでも何か発言しなければならないだろう。
「……特に傷とかはないように見えますけど」
「そのとおり。この場合だと、鑑識やら医者やらが調べても、ただの突発性心不全くらいの結果しか書けんだろう」
無論、異界化した場所であっても、怪異とは一切関係のない普通の事件(もしくは事故)である可能性は捨てられない。だからといって、普通の事件として捜査を進めた後で異界化による案件だと判明したのでは、対処が後手後手に回ってしまい被害が拡大してしまう。
ならば思い切って、特定の場所で起こった事件は全てヴェリヨたちが引き取ってしまった方が手っ取り早い――と、なってしまったわけである。
「まあ、後から違ってたって分かっても、警察の初動ミスなんて今に始まった話じゃないからな。ウチは知らんよ、と」
ひどい話だ。
まあ、本当は色々と手続きなどがあるのだろう。そう信じたい。
今回のケースでは、既に全て済ませていたか、明確に怪異の仕業であると判断されたから、こういう対処をしているのだろう――と、泰地は極力ポジティブに納得することにした。




