10
その10です。
「ともかく、いま挙げた三つのパターンのどれか、もしくは複数の要因が組み合わさることによって、異世界やら異次元やらあの世やらとの距離がグッと縮まる。で、俺たちはそれに段階を設定している」
一段階目は、見た目には平穏そのものだけど、なんとなく違和感を抱くというもの。幽霊が見えるとかラップ音が聞こえる等々の、いわゆる怪奇現象が該当する。
二段階目が、実際に何らかの影響が漏れ出してきたとき。いわゆるポルターガイスト現象やら神隠し等々が含まれる。
「こんな風に」そう呟きながら、ヴェリヨは再び死体の手を取ってプラプラさせた。「異界化が発生しやすい場所で人が死んでたりするってのもそうだな」
ヴェリヨの悪趣味な手癖に眉を顰める泰地だが、ふとある疑問が湧いた。
「すみません。さっき所轄に先を越されたって言ってましたけど、あらかじめ人が死ぬとかって分かるんですか? あと、その人の死因とかは調べないんですか?」
「うむ、いい質問なのだ。ヴェリヨ、説明してやるのだ」
少年の頭上からの偉そうな声に、巨漢は気を悪くした様子もなく素直に従う。
「俺たちは、担当区域内の異界化しそうなスポットを、常にモニターしたりパトロールしたりしている。なにせ、異界化なんて普通の警官や役人じゃ理解できんからな。だから、前兆を発見した時点で、ウチの事件として囲って所轄には引っ込んでもらう」
「ならば、今回は完全にヴェリヨのミスなのだ」
「痛いところを突かないでくださいよ、ルデル様。小言くらいならともかく、始末書の可能性もあるからなぁ……」
そういう部分は普通に公務員なんだな、と少し安堵してしまう泰地だった。




