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一ノ光  異世界転移

処女作の設定をいじって新しく書いたものです。

 住み始めてそれ程経っていないことがわかるアパートの一室。

 大学に進学した根暗系眼鏡男子こと朝村神成あさむら かみなりは薄暗い部屋の中、アニソンを聞きながら一心不乱に某な〇うサイトに投稿予定の小説を執筆していた。


 数文字打つ度に変換キーとEnterを打ち鳴らす。ディスプレイには執筆画面と瞳からハイライトの消えた幼女のイラストが映っていた。執筆しながら妄想が加速するのを感じる。


 とある事情により、一人でいることの多い俺はアパートに帰ってくるとほとんどの時間をこうして過ごしていた。決して友達ができないだとか、ぼっちだとかではない。


「…………主人公の腹……サトの……刃先が……あああ」


 執筆中のヤンデレ小説の描写を思わず呟きながらディスプレイを凝視している俺の手元でスマホがブルブルと震えた。

 スマホの画面にはとあるチャットアプリが表示されている。しかし、丁度執筆がノッテきたところだったので無視した。


「……乱入……後輩ちゃんの肉切り包丁と……が……」


 しばらくするとまたスマホが震える。


「…………血が……裂けて……」


 尚もスマホは震え続けた。


「(ブルブル)が……ヒロイ(ブル)の目からハイ(ブルブル)が消え(ブルブルブルブル)…………」


 相手は何回投稿しているのか、スマホは震えは机上の歩行までを可能としていた。

 キーを鳴らしていた手がスマホに伸びる。流石に堪忍袋の緒が限界だったようだ。


「ちっきしょうおおおおおおお!!!」


 俺は執筆を妨げられた怒りに任せて掴んだスマホを部屋の壁に投げ、叩きつける。

 見事、壁に叩きつけらたスマホは壁に接したのち――――、静止した。


「!?」


 スマホは壁にぴたりと触れたまま微動だにしない。


「おいおい、そこは落下するところだろ……」

「え、なにこれ。ここの壁って接着性あったっけ」


 スマホに触れる。空間に固定されてしまったかのように力をいれても動くことはない。


「冗談がすぎるだろ……おい! は・な・れ・ろ・よっ、お?」


 引っかけた指で力一杯下に引くとスルッとスマホが複数の板にスライスされた。


「おおお!??」


 薄くなったスマホだったものは涙目の俺を尻目に壁に張り付き、奇妙な模様を形づくる。


 これはどういうことだろうか。夢か。いや、どうなんだ。


 と、考えている間にもスマホだったものは黄ばんだ紙に変化していた。

 折り重なった紙の中を様々な線や文字が行き交い、紙から溢れた青白い光がツタのように部屋を覆い尽くす。


 青白い光を直視すると頭を内側から破られるような痛みが襲った。しかし、俺は青白い光から目を逸らすことができなかった。

 悠長にも俺は、この光景に見惚れていた。



 …………自分が巻き込まれようとしれいるとも知らずに。




◇◇◆




 いつの間に眠ってしまったのだろう。


 寒気を覚えて俺は目を覚ました。部屋は至って変わった様子は見られなかったが、どことなく違和感を感じて時計を見る。時計は8時半を指していた。大学の授業は9時からだ。

 慌てて制服に着替えてさあ、扉を開け――


「…………え?」


 扉の先には普段見慣れた廊下はなく、代わりに見えるのは生い茂る葉に丸太のような枝、俺は、俺の部屋は巨大な樹木の上に乗っていた。


 先日まで町だったはずの場所を見渡すが、どこもかしこも、木、木、木。


「最近は氷河期とか異常気象とかニュースになってたし、樹木の急成長も不思議ではない……のか?」


 んー。あるだろうか。町を覆う程の樹木の集団急成長…………。


「まあ、そのことは置いておくとして流石にこんな規模で起きたら大学も休校待ったなしだろう」

「とりま電話しとくか」


 俺は何気なしに机の上に置かれていたスマホを手に取り、電話をかける。緊急事態だ。どうせ、繋がらないだろうと思っていたのでコール音が鳴りだしたことに驚いた。数コール後に事務に繋がる。


「はい、〇〇大学の――」

「ええっと、〇〇大学――の朝村神成です。本日、授業に遅れることをご連絡……」


 事務の職員に俺が遅刻の理由を説明すると職員は怪訝そうな声で言う。


「は? 樹木の急成長?」

「はい。そうなんですよ。もう大変で」

「嘘つくのはやめてください」

「嘘じゃないですよ。救助が来るまでは動けないんです」

「………………」

「ニュース見てもらえればわかりますって!」

「あなたと同じ地区に住んでいる人はもう来てますよ」


 この樹木群の中、大学行った猛者がいるのか!?


「でも、この場合の遅刻は仕方ないのではないですか?」

「遅刻は遅刻です」

「遅刻したら……?」

「単位はないでしょうね」


 その言葉を最後に通話を切られてしまう。


「遅刻が許されないったらもう、行くしかねえじゃねえか!」


 覚悟を決め、恐る恐る部屋から下を覗く。部屋から地面までは3mといったところだろうか。普段見慣れぬ高さに寒気がした。


「高い。予想以上に高い」


「うーん。これ、降りられるか?」


 選択肢は二つ。

 一つ目は、降りて大学に向かう。単位のこともあるし、こんな緊急事態なら人が多いところに行った方がいいというのもある。

 二つ目は、ここで救助を待つ。しかし、これだと確実に単位を落とすことになる。


 命は大事だが、単位が足りないと進級できないし……。これはもう行くしかないのではないか。


 だが、こちらはこちらで問題がある。


「さて、どうやって降りるか……ん?」


 微かにではあるが、地面が揺れていた。揺れは徐々に大きくなり、やがて部屋の下に大きな黒が多めの赤い岩が転がってくる。


 俺の頭にある考えが浮かんだ。もしや、この大岩を段差に使えば、上手く降りられるのでは?


「試す価値はあるよな」


 俺は床にしがみついた状態でゆっくりと足を伸ばす。ぎりぎりまで伸ばしてから手を放し、岩の上に着地する。勢い余って尻餅をついてしまった。


 手で触れた大岩は岩とは感触が違っていた。筋があって無数の皮が重なりあったような感触はまるで木の幹のようである。

 よく見れば、大岩と思っていたものの形も違うことに気づいた。下に向けて大岩は筋肉のように隆々とした左右と大盾のように堅そうな真ん中に分かれている。大岩の上から見た中央には小さく盛り上がり、苔が生え、さらにその上には角があった。


「てか、これって……」


 ……まさにそれは鬼のようで。


 角の生えた頭が振り返る。吊り上がった目は殺意だけを俺に伝え、鋭利な牙をもつ口が開くと血生臭い匂いが鼻をついた。


「な、鬼なんて現実にいるわけ……っ!」


 大岩のように見えた鬼は俺を見つけると鼓膜が破けそうな咆哮をあげ、腕を振り回す。

 鬼は2メートル越えの巨体、その肩にいた俺は宙に投げ出された。

描写が足りないところは後に少しずつ改稿するつもりでいます。

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