Re:member after story07
「覚えてる?私とあんたとの出会い」
「ああ、あれはお互い最悪な出会いだったな」
「まーあんたがあんな人間なのかと勘違いしてたけど、想い人を私が傷つけたし。当然よね」
「もしかしてまだ怒ってるのか?」
「冗談やめてよ。あんたこそどうなの?」
「彼女の友達を嫌う理由はないな」
「ほんと優しいんだね」
「でもそんなとこが・・・嫌ぃょ…」
~ Re:member after story07 ~
公園のベンチに僕らは座る。
春が近いが夜はまだ肌寒い。
見上げるといつもの街灯が2人を照らす。
「ここだったのね」
「初詣行く時、待ち合わせ場所にしたの覚えてたか」
「そうね、覚えてるわ」
「でも何でこんな所に来たかったんだ?」
「それは・・・笑わないでよ」
「え?ああ」
「あんたの思い出の場所に私だけいないなんて不公平よ」
彼女は少し恥ずかしそうに呟いた。
「それはどう言う意味?」
「しのもしよもアキトも、ここであんたと思い出作ったんでしょ?」
「要するに、みあもここで僕と何かを残したいで合ってる?」
「正式には”あんたにとって”嫌でも思い出になるって事かしら」
いまいちよく理解出来なかったが、数分後に訪れる彼女からの激白が、十分すぎる答えだと知ることになる。
「しよのどこが好きになったの?」
「そだな~・・・やっぱ笑顔かな」
「確かに笑顔似合ってるわね。今でも好きなのよね?」
「もちろん・・・ま、笑顔は見れないけどな」
少し視線を下げ黙り込む僕。
「私が笑ってあげようか?」
予想もしていない言葉に驚き、彼女の顔を見てしまった
「お?そんなに見たいの?」
「そ、そうじゃなくて・・・あまりにも、みあらしくない発言だったから」
「それはどう言う意味かしら?」
「あ~ごめん。もし僕が見せてと言えば笑ってくれるのか?」
「あんたが望んでるならね」
「やめとくよ、君は彼女の代わりじゃないからね」
「・・・普通はそんなに大袈裟に考えないと思うけど?」
「そう?アキトにも悪いなって思ったし」
僕の言葉を聞いた後、少し考え事をする彼女。
「じゃーお互いの”普通”がどれくらいかはっきりさせましょう」
そう言ってショルダーバッグから何かを取り出した。
「ここにコーヒーがあるわ。でも1本しかないのよね」
「僕はいいからみあが飲みな」
「それがあんたの普通でいいのね?」
「ああ。僕が持ってても君にあげたかな」
「そう。ならこのコーヒーあげるわ」
「何で?1本しかないんだから僕はいいって」
「違うわよ!実はあと1本バッグに入ってるから先に飲んでいいわよ」
その言葉を信じて僕はコーヒーを一口飲んだ。
「飲んだ?じゃー次は私が頂くわね」
僕の飲んだコーヒーを奪い取り何事もなかったかのように一口飲む彼女。
ー言っとくけど、コレ間接キスだからねー
僕は、朝のやり取りを思い出した。
「な、何やってるのさ?」
「朝も言ったけど、私は気にしないのよ。これが私の”普通”」
「・・・まいったな。今回はみあの勝ちでいいよ」
「今回もでしょ?つまらない意地はもうお互い無しにしましょ」
さっき飲んだコーヒーを僕に差し出す彼女。
僕は自然に受け取り続けて飲んだ。
それを見て彼女は僕に笑顔を魅せた。
・・・・・
・・・
・
2人の間に静かな時が流れる。
「しよがね、あんたと仲良くなってと頼まれた」
「ああ。僕も同じ事を聞かされたよ」
「だから・・・ちゃんと言っておかなきゃならない事を言っていい?」
「うん。ちゃんと聴こう」
彼女はベンチから立ち上がり僕の正面に立つ。
そして、ゆっくりと語り始めた。
「私は男の人と付き合った事が1度も無かったの。男に興味無かったし。でもね、私の友達は先に彼氏を作ったのよ。そう、それが彼女」
僕は真剣に話してる彼女の話を邪魔しないように
しっかり目を合わせて頷く
「初めは素直に喜んだわ。だって友達だから。でも、彼女が彼氏を紹介してくれた。実際、彼女が私に会わせたかったのか、彼が私に会いたかったのか、わからないけど・・・」
そこからの内容は僕にもわかる。
だからもう・・・
「もういいよ、みあの言いたいこ・・」
「嫌!言わせて!」
僕の言葉を言葉で征する彼女。
そして話は強引に進む。
「彼は私に興味を持ってくれた、私は興味が無かった筈なのに、いつしか男に興味を持ってしまったの」
もういいだろ
「彼女に内緒で彼に会ってた。その回数が増えて来た時は、私はもう彼しか見えなくなってて・・・」
「みあ!」
これ以上はダメだ!
そう思い僕もベンチから立ち上がった時
「まだ話は終わってないの!何で最後まで聞かないの?」
彼女は怒り僕を睨みつける。
が、震えている。
「僕はただ、みあが自分を責めてるとこを・・」
「そうやって”あの時の彼女”も慰めたんでしょ?」
「・・・・・悪いのか?」
「そうやって優しさばかり優先しないで!」
「だからお前は何で・・・」
僕は途中で言葉を詰まらせた。
その理由は”彼女の頬に伝う涙”
「これは私なりのケジメなの・・・お願い」
「・・・ああ最後まで話して」
それから彼女は話を続けた。
「私は悪い女、世間一般に考えてもしてはいけない事をしてしまった。彼女にはきっと嫌われると思ってた。そう、これは罰なのよと、自分に言い聞かせ生きて行こうと覚悟したわ」
涙声で語る彼女、それを無言で受け止める僕。
恋は盲目と言うことわざがある。
あの時の彼女は、正にそれだったのかもしれない。
「だけど、あなた達は今でも優しくしてくれる・・・でもちゃんと謝りたかった」
涙を拭い、真っ直ぐ僕を見て、彼女は頭を下げた。
「ごめんなさい」
世の中には言わなくていい事はあっていいと思っていた。
しかし、伝える事で自分の中にあるわだかまりが少しでも減ると言うのなら、伝えて楽になりたいと言う気持もわかったんだ。
それはとても勇気がいる事だと思う。
彼女の場合、それを選択したのか、単純に素直になって謝りたかったのか。
僕には解らない回答だけれど、彼女は無事に言いたい事を言えた。
でも・・・彼女は間違ってる事がある。
「本当はずっと前からこの事を言いたかったんじゃない?」
彼女は黙って頷く。
「そっか。でもね、僕には謝らなくていいんだ。むしろこちらが感謝してるんだから」
「感謝?なんで?」
「僕が彼女に想いを告る、最後のチャンスを与えてくれたから」
複雑な顔になる彼女
「だから僕も言えなかったお礼をここで言うよ・・・本当にありがとう」
「・・・・・ほんと・・・優しいんだ」
今日はよく言ってくれる言葉だな。では、お約束で
「でもそんなとこが?」
「嫌い・・・じゃないわよ」
なんか調子狂う発言だけど、これはこれで悪くないと思ったんだ。
「あ、でも謝るなら彼女に謝ってくれよ」
「当たり前じゃない!てか何回も謝ってるわよ」
お、いつもの調子が出てきたな。
こうして出会いから今まで
ずっと意地を張り続けて来た彼女は
本日。彼氏が言ってた、僕にだけ付いていた属性
すなわち。”素直な心を隠す恥ずかしがり屋さん属性”が消えたのである。
・・・・・
・・・
・
「ねえ、ヒロはこれから先どうするの?」
先の事なんて正直考えていなかった。
でもしっかり考えている人もいる。
『ねぇヒロ。私さ、決めた事あるの』
「とりあえず仕事を頑張るかな」
「そう。恋愛はもうしないの?」
「うん。今は・・・いいかな」
たとえ短い恋愛だったとしても、彼女は最後まで彼女でいてくれた。
友達としての君も恋人になってくれた君も
どちらも同じような感じだったけど
僕はバイトで知り合えて君を本気で好きになって
本当に幸せだったと思う。
未練と言えばそうなのかもしれないが
今は彼女を忘れる事は・・・
「なら・・さ、考え直してくれない?」
「え?」
「しよもきっと・・・あんたを、ヒロを好きだと思うの」
「・・・・・」
「離れていても恋愛はちゃんと出来るでしょ?」
彼女の言う事は間違ってはいない。
でもこれは付き合う前からの約束。
そう・・・何もかも遅すぎたんだ。
彼女には夢がある。
僕はその夢を応援すると決めた。
そして、さっきの"電話の話"を思い出す・・・
『ねぇヒロ。私さ、決めた事あるの』
『ん?決めた事って?』
『それはね。私、夢が叶うまで彼氏は作らないよ』
『それだけ真剣なんだね、本当に尊敬するなぁ』
『いやいや。私ってさ、不器用だから1つの事にしか集中できないのよね。だから今は夢が先』
『ああ。僕は応援する。そして僕も彼女はしばらくいいかな』
『ヒロは好きなようにしていいんだよ?』
『別に合わしてるってわけじゃないけどね』
『そっか~。だからヒロは今の所"私の最後の彼氏"』
『まだ若いんだから、ちゃんと好きな人見つけろよ』
『あは。それはヒロにも言える事だって』
『そうだな。お互いいつか変わる事もあるかもしれないね』
『うん・・・ねぇ、もし・・・・・』
「2人で話合って決めた事なんだ」
どうしても僕の言葉に納得いかない彼女。
いつもならまた怒鳴る勢いなのだけど、今度は静かに問う。
「ヒロの本心はどうなの?正直に答えて」
「それは・・・」
言葉が出なかった・・・ただ彼女から目を逸らす事しか出来ない。
「本当は辛いんだよね?本心を言えば"自分に嘘をついてる"事を確信するから」
「・・・確かにみあの言ってる事は当たってる」
「私は2人を離したくないの・・・だからお願い・・・」
静寂が2人を包む。
「ありがとう。みあの気持ちはよくわかった」
「じゃ、考え直してくれるの?」
僕はゆっくり首を左右に振った。
「どうしてよ?」
薄暗い公園に射す光を見上げながら
僕は彼女との電話のやり取りの一部を語る。
「彼女は僕や君が想像してるよりずっと強い」
「何よそれ・・・これじゃヒロが・・可哀想じゃない」
本来なら、僕が本音を言って、涙の1つでも流していい場面であるが、彼女が僕の代わりに涙を流してくれた。
僕はほんと情けない男だ。
あの時も、あの時も、そして今も
女の子を”泣かせてばかりだ”
「ごめん、2度も泣かせてしまって・・・」
僕はとりあえずどうにかして彼女を落ち着かせようとした。
「なんでヒロが謝るのよ?あんたは何も悪くないんだから、もう少し男らしくしなさい」
そう言って再び涙を拭う彼女。
少し落ち着くまで待ってから、僕はこの話のまとめに入る事にした。
「みあが僕らの事を離したくないと言ってくれたのは、本当にありがたいと思ってる。でもね、彼女を見送ったあの日から、僕らは別々の道を歩き始めたんだ。僕は彼女が好きだ。今でも、そしてこれからも・・・でも、彼女の夢は彼女の物なんだ。好きな人が理解してあげなくちゃ前に進めない。別れてしまった事は正直辛い、でも彼女も同じ気持ちでいてくれているはず。だから・・・」
「ヒロ。もう十分だよ・・・ごめんね」
最後まで話そうとしたのだけど
僕の口元に右手の手のひらを差し出し
話を中断させた。
そして、その手は僕のお腹の位置まで下がり
「握って・・・」
僕は言われるがまま彼女の右手に右手を差し出す。
まるで割れ物を扱うように、出来るだけ優しく包んだ。
「どう?・・・あったかい?」
「ああ、あたたかい」
握った手は離さず、みあが僕に伝えた言葉。
それは・・・彼女が電話で伝えた言葉と似ていたんだ。
「いつかその手を握ってくれる人が出来たら・・・次は絶対離しちゃダメ」
『ねぇ、もし夢が叶ってお互い変わってないなら、手を差し伸べるから離さないでくれる?』
「ああ。次は絶対に離さないと約束する」
その言葉を聞いて優しく微笑むみあ。
そして遠くに行ってしまった彼女にも改めて約束をした。
「え?ヒロ?」
「あ、ごめん。痛かった?」
僕は頭の中で、みあの言葉を彼女の言葉と重ねてしまったせいで、無意識に手に力が入ってしまってたようだ。
「大丈夫。ただ少し驚いた」
「本当にごめんよ。悪気は無かったんだ」
「そう。私はてっきり襲われるかと思ったわ」
「僕はそんな事しないよ」
「どうだか」
悪戯に、そして柔らかく君は笑う。
僕も自然に微笑む。
「ありがとう・・・みあ」
彼女は若干照れながら頷く。
「ところで・・・手、どうします?」
彼女の体温が右手に伝わってくるのがわかる。
「あと少しだけ・・・このままで」
「・・・うん。わかった」
出会は最悪の2人。
互いに交わる事がないと思っていたけど
互いの友達に互いが気を遣い
今では互いを想いやる存在になった。
君は明るくて無茶苦茶で純粋。
僕の友達の彼女であり彼女の友達。
ん?友達の彼女?・・・あ!
「アキトに泣かせた事謝っとくよ」
「え?あーこの事は内緒にしない?」
「何で?」
「だって泣いたなんて伝えたら恥ずかしいわよ」
「みあがそう言うなら黙っておくよ」
「そうして。で、手の方もおしまいね。私の体温、堪能出来たでしょ?」
「そうだな。彼女以外で長く感じられたのは初めてだ」
僕の言葉の最中に手をほどく2人。
「わぁ、いやらしい言い方ね」
「僕はみあに合わせただけさ」
・・・・・
・・・
・
「じゃーそろそろ行きましょ」
彼女は僕に背を向け公園の出口へと歩き出す。
時折、体を左右に揺らしながら。
その姿を見つめる僕。
そして出口付近で彼女は振り返り・・・
「これで私もヒロの思い出に入れたかしら?」
「ああ。十分過ぎるくらいさ」
笑顔で答え、僕も彼女の後を追うように
ゆっくりと歩き出す・・・
肌寒い風と君の涙
温かい右手と君達の想いを心に閉まって────
「そう、なら帰りましょ!」
静かな夜に笑顔を咲かせ、僕と君は歩いて行く。
きっかけは彼女から始まった1日
でもそれは・・・僕にとって特別な時間
~ Re:member after story END ~
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