表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Re:member  作者: 五流工房
高校3年編
36/53

Re:member 3rd calm...the destination of the heart03

僕にとって、彼にとっても、高校最後の弓道大会。

この大会だけは、どうしても勝ちたかった。

何故なら

お世話になった顧問の先生に恩返しをし、全国大会への切符をプレゼントしたい。

そんな事を密かに考えていたのである。

いつも以上に気合の入る部員達、大会に備えてのコンディションもなかなかのものだった。

のだけど・・・


「・・・・・ふぅ」

今までのサボリのツケがここに来て重荷になってる男がいる。

「俺。メンバーから外れようか?」

いつになく落ち込む彼。

「何言ってるんですか?」

「そうですよ。最後の大会で部長がいないなんてダメですよ」

後輩達の優しさ。

「ま、元々はお前とヒロに騙されて入った部活だけど、ここまで来たら頑張ってやるしかないだろ」

「それに、同じ中学の仲間だし、チームとしてはやりやすい分、勝てる見込みも大きいって事だ」

同級生の励まし。

「お前ならきっと大丈夫だ。自信をもて」

顧問の先生の言葉。


様々な人達が彼を支え、励まし、応援している。

無論、僕も。


「こんな事で立ち止まれないだろ?最後に一緒に頂点目指そうぜ」

な、アキト。



~ Re:member 3rd calm...the destination of the heart03 ~



大会2日前 ~バイト先にて~


「え~明日から来ないの?しかも2人共?」

「うん。もう大会だしね」

「大会終わったらまた来るけどな」

「あ、そっか~。もう最後だもんね」

「「そだな」」

「他校だけども、応援してあげよう」


大会が目前と言う事もあり、店長のいつもの計らいで

シフトを急遽変更してくれた僕達。

店長特権とは言え、シフトを変更させられた他のバイト仲間(2人)は

当然ご立腹だと思っていたけども・・・

「あー全然構わないんで、大会頑張って下さい」

ってな感じで、文句も言わず引き受けてくれた。


店の外に出て来た僕とアキト。

遅れてしよも店から出て来る。

あれ以来、僕達の関係と聞かれれば・・・正直上手く行かない。

別に話す時や仕事中はいつも通りなのだけど

以前のように、みんなで仲良くってのは・・・まだ時間がかかりそうだった。


「じゃ~私帰るね」

彼女が自転車にまたがり、帰ろうとしてた時

「しよ」

彼女の前にアキトが駆け寄っていた。

「な、何よ?」

彼は彼女から視線をやや逸らし、弱々しい声で

「もし時間あるなら・・・」

「ほへ?」

「大会の日に、ヒロの応援をしてほしいんだ」

突然の提案に驚く2人。僕と彼女の目が合った。

「な、何言ってるんだよ?」

「俺がいるからダメか?」

「・・・・・」

「ほらほら、無理に誘わなくてもいいだろ?」

「すまん。今のは聞かなかった事に・・・」「考えとくよ・・・でも、時間あればだからね。朝早いでしょ?」

「ま~確かに早いね。無理しなくていいからね」

「はいよ~。じゃ、またね」

僕達に軽く手を振り、彼女は自転車を走らせ帰って行く。


残された幼馴染

「さ、帰ろう」

「ああ。あ、ヒロにもお願いがあるんだが」

「ん?なんだい?」

「明日なんだがな・・・」



大会前夜 ~夜の弓道場にて~


「いくらなんでも、これはやりすぎと違うか?」

「すまんな。でも、悔いは残したくないからな」


大会の前夜

夕方に全ての調整を終え、明日の大会に備えて帰宅した部員一同。

しかし、この調子では納得できないと考えたアキトは、昨日の夜、僕にこう言ったんだ。

「明日なんだがな、徹夜で練習付き合ってくれ」

なにも徹夜までして練習しなくてもいいだろうと説得したのだけど

本人はどうしてもやりたいらしい。

彼の決意は固く、見捨てるわけにも行かないと思い、現在に至るのである。


明日の準備で用意されていた弓を持ち出し弦を張る。

暗闇の中、的を1つ所定の位置に置き練習の準備は整った。

アキトが矢を構える

静けさの中で弦のきしむ音が響く

弦を弾く音と共に放たれる1本の矢

わずか1秒もない時間で的に到達する早さ

アキトの放った矢は、見事に的から数ミリ外れていた。

「あと少しだな。でも、前よりいいと思うよ」

「そか、ヒロは明日に備えて弓は持つなよ。今が1番ベストな状態だし」

「なら何をすればいい?」

「すまんが俺の癖を直してほしい」

「あ、なるほどな」

再び矢を射る体勢のアキト。それをじっと見る僕。

若干ではあるが引き手が下がり気味だ

「アキト、もう少し引き手を上げてみて」

「こうか?」

「そうそう。これで撃てるか?」

「ああ」

アキトが2度目に放った矢は、的に命中した。

「やったやん。やはり引き手の修正なのかもしれないな?」

「そうかもな。ならここを重点的に練習しよう」


それから2時間経過した。


時計の針は深夜1時

休みなく練習し続けるアキト。しかし本番は明日の朝からだ。

あまり無理して本番がダメになるのは勿体無い。

「アキト。もう終わりにしないか?」

「あ~だいぶ掴めて来たからもう少しだけ」

「ならさ、少し休憩しない?」

「あ、ああ。そうするか」


しばしの休憩。

道場にある冷蔵庫からコーヒーを取り出し飲み始める2人。

「思えば、僕らがここに見学に来た次の日に入部させられてたね」

「あの時はぜんぜん弓道なんて興味なかったんだけどな」

「今となっては、必死で弓道をしていたりするんだよね」

「まったく、人生って不思議な事だらけだ」

「ま~な。この学校に来て特にそう思ったけどね」

「なんかあったのか?」

「ま~色々ね。アキトとも色々あったがね」

「あ・・・あの時も今もだが、ヒロにはほんとに悪いと思ってる」

「僕はまだ許してないからな。謝るとこもまずは彼女が先だろ?」

「・・・そうだな。でも、ヒロは・・・」

「なんだよ?」

「ヒロは本気で”しよ”を好きなんだな」

「え?あ・・・えっと・・・」

「お前は自分の事には弱いな」

「しゃ~ね~だろ。こんな事は全然慣れてないんだから」

「ま、俺が言うのもなんだが、しよはいい女だ」

「・・・なら、なぜ別れたりするんだ」

「・・・・・俺もお前も変わるだろ?」

「・・・・・・・」


何も言い返せれなかった・・・いや、返す言葉が出る前に、昔の記憶が甦ったから。


静まり返った2人の時間・・・時より夜風が道場に流れ込む・・・

「あのさ」

先に沈黙を破ったのは彼

「何?」

「今までは応援して貰ってたけどさ、今度は応援していいか?」

応援?アキトは彼女を僕に託そうとしてるのか?

確かに今の彼女には彼氏はいない。でも。

「それは・・・・・・ダメだって」

「何でだよ?」

「だって、最近別れたのが僕の友達で、別れたから、次は僕となんて言えるわけないよ。たとえ好きな人だとしても・・・」

「ヒロ・・・・・」

「別にアキトが全部悪いって言いたいんじゃないんだ。ごめん」

「いいんだ。でも好きなんだろ?気持ちは本気なんだろ?」

ゆっくりとうなずく僕。

「俺が言っても説得力ないかもだけど、諦めてないならアイツの事を今度はお前が守ってやってくれ」

「・・・・・ほんっとに説得力ないぜ」

「そだな。すまん」

「ま、しばらくは慰め役に回るよ」

「色々と迷惑をかけるな」

「まったくだ。でも、悪くはないかな」

「ならこれからも迷惑かけようか?」

「いや、それは断る」

「「はははははは」」


「さて、あと少し頑張るか?」

「おう」



大会当日。


朝日が道場に差し込む。眩しさのあまりに目を開く僕。

時計の針が深夜4時指していた頃から今までの記憶が途切れている。

どうやら仮眠してしまったらしい。

部室のドアが開く音がした。後輩部員が来たみたいだ。

その音でアキトもようやく目を覚ます。

「ちわ~って、早いですね~」

「おはよ。ああ、誰よりも早く来てたからね」

「一体いつから来てたんですか?」

「ああ、夜からだ」

「まさか、徹夜したんですか?」

「「ま~な」」

「今日大丈夫なんですか?」

「僕は大丈夫。アキトはどうだい?」

「昨夜のうちに調整できたし、後はやるだけだ」

「そっすか。なら今日は頑張って下さいね」


それから数分後に部員が揃う。

僕らの高校最後の大会

部室を出ようとした時にポケットに入れていたポケベルが鳴る。

早速内容を確かめる。

どうやら"しよ"からの応援メッセージだった。

「どうした?ヒロ?」

「悪い、先に行っててくれ。ベル打ってから行くから」

「あ、なるほど。わかったよ」

僕は学校の公衆電話から彼女にお礼のメッセージと頑張って来ると伝えたんだ。

これでよしっと。さぁ、行こう。



夏の青空と眩しい太陽の(もと)

風を切り走り出す自転車。

目指す目的地は大会会場。仲間を信じて、自分を信じて、目指す目標(ところ)・・・

それは僕らの射抜く矢が導いてくれるだろう。



next → Re:member 3rd I will tell from my heart...01

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ