Re:member 3rd Spring breeze05
「ここでいいかい?」
「十分だよ。ありがとね」
「気にしないで」
「んじゃ~また会おうね」
「ああ。お疲れさま~」
「お疲れさ~ん」
右手を振る僕と左手を振る彼女。
彼女の姿が見えなくなったのを確認し、僕は家路に向かう。
『私の他に、誰か付き合ってる子いない?』
僕が予想もしていなかった言葉が頭を過る。
そして数分前の事を思い出していた。
「いや。僕が知ってるのは”しよだけ”なんだ」
「・・・・そう。ごめんね、変な事聞いちゃった~」
「もしかして、最近アキトとは上手く行ってない?」
僕の質問に、困った表情を浮かべた彼女。
「そんなんじゃないんだけどね・・・最近多いんだ」
「会ってくれない日が?」
「うん」
若干小声ではあったが、かろうじて聞き取れた。
「そっか~。なら、今度アイツにそれとなく聞いてみるよ」
「あ~待って。さっき私が言った事は・・・」
「内緒にしとくからさ。心配しないで」
「・・・ごめんね。ヒロ」
「別にいいよ」
冷静に答えてはいるものの、内心はかなり驚いている。
まさか・・・アキトがしよ以外の子と付き合ってる事なんて
あるはずがない・・・いや、あってはダメだ。
~ Re:member 3rd Spring breeze05 ~
放課後の部活
サボり続きだった男がめずらしく来ていた。
「久しぶりに来たか」
「たまにはやっとかないとな」
「てか、毎日来いよ」
「まーそう言うなよ」
「また大会近いんだから、真面目にしてくれよ?」
「わかってるって。俺達の最後の大会だしな」
そうなのだ。
今年は、僕らにとって部活動最後の年。
今年こそ優勝したいと願う部員達。
無論、僕もそうだった。
「そうそう、しっかり頼むよ」
「はいはい」
的に向かって弓を引く僕とアキト
ほぼ同時に放った矢は、勢いよく的に向かう。
すぱーん!!
見事に的を射抜く僕
かす!!
見事に的を外すアキト
「・・・・・あら、サボりが仇になったか」
「そう思うなら、これから特訓な~」
「え~」
すぱーん!
かす!
すぱーん!!
かす!!
スパーン!!!
カス!!!
「・・・・・」
「もしかして・・・スランプ?」
「おっかしーなー。何がダメなんだろう?」
「ちゃんと集中してる?」
「・・・あ、いや・・・してるつもりだ」
明らかに集中していないな・・・
「ま、大会まではまだ時間あるから」
「そだな・・・すまんな」
「気にすんなって、そろそろ終わりにしよっか」
「ああ」
部活が終わり、僕とアキトはバイト先に向かっていた。
「この前は、カラオケ行けなくて悪かったな」
「別にいいよ。用事あったんだろ?」
「あ、うん。ちょっとな」
なにか曖昧な答え方。
『私の他に、誰か付き合ってる子いない?』
彼女の言葉が頭に浮かぶ
「な。最近しよとは上手く行ってる?」
「え?何でだ?」
「いや、特に意味は無いけども、気になったから」
「まー普通だな」
「ふ~ん。じゃ、最近何か変わった事なかった?」
「それはどういう事だ?」
「例えば、服買ったとか、うまい飯屋見つけたとか」
「う~ん・・・特に無いけど」
「そっか。ならしよとのデートで変わった事ってない?」
「さっきからどうしたんだ?何かあったのか?」
「何も無いけど、興味あったからね」
「特に変わった事はないが・・・友達と会った」
「友達?しよの友達?」
「ああ。1度、アイツが友達連れて来てて、一緒に遊んだ事があったかな」
「なるほど、僕は知らない人だよね?」
「ああ、しよの学校の子だしな」
しよの友達ね・・・
『私の他に、誰か付き合ってる子いない?』
・・・まさか、ね・・・
とにかく今は確信がなかったので、もう少し様子を見よう。
・・・・・
・・・
・
「はいはいは~い。お皿通りますよ~」
「お客様お帰りで~す」
バイト先では、今日も元気な先輩としよの姿が見える。
「さて、俺達も頑張るか」
「そだね」
それぞれの持ち場に向かう2人。
「いらっしゃいませ~ようこそ~」
「いらっしゃいませ~」「ようこそー」
「4名様ですね~ほなこちらにどうぞ~」
今日もバイト先は活気に満ち溢れていた。
「ヒロくん。ちょっとええ?」
客足も途絶えた頃に先輩が僕に話し掛けてくれた。
「はい、なんでしょう?」
「この前は強引でごめんやで」
若干、しよに気づかれないように話を進める先輩。
「いや、お陰で楽しい時間が過ごせました」
笑顔で答える僕、その笑顔を見て何かを悟る先輩。
「ほ~。どうやら少しは成長したんやね?」
「さ~どうでしょ。でも、前よりは楽になった感じです」
「そか、それがヒロくんの”答え”やね?」
「・・・ええ。少なくとも”今は”ですけども」
僕の意外な答えに先輩が驚く
「ほんま一途なんやな~ヒロくんは」
「そ、そんなんじゃ・・・ないです」
「ははは。あ、今日の帰り時間空けといて」
「何かまたするんですか?」
「ん?いや、そんな時間はとらせへんから」
「わかりました。空けときます」
「さんきゅ~な、ほな、また後でな~」
先輩が軽く右手を振り持ち場に帰る。
僕も残りの作業に取り掛かった。
「お~い、ヒロ。ラップ手伝って」
営業時間が・・・ん?どうしたしよ?交代する?
うむ。では改めて。営業時間が終わる頃。
いつものように片付け作業に入るバイト一同
私がめずらしく作業に手間取っちゃって、彼に助けを求めたの。
「へいよ~任しときな~」
「すまないね~」
「いえいえ。姫の為なら喜んでやらせていただきます」
「おうおう、良きに計らえ・・・って、その言い方やめい」
いつもの流れから彼は仕事モードに切り替わる。
手際よくラップをかけて行く彼。
その隣りに私は近づき、周りに聞こえない程の声で、彼とお話したの。
「この前はありがとね」
「いやいや、いいって」
空気を読んくれたのか、彼も声を合わせてくれた。
「んで、何かわかった?」
「う~ん、これといった事はないみたいだね」
「そっか、安心していいのかな?」
「安心してもらわなきゃ困るんだけどな」
「それもそうね。でも・・・ちょっと不安かな」
「ま、僕ももう少し様子見ようと思ってるから」
「うん。ありがとね」
「でも、しよも逃がさないようにしっかり捕まえとけよ」
「そだね~私もしっかりしなきゃね」
「そうそう、って事で。お~いアキト」
ちょうど片付けが終わった彼を呼ぶヒロ
「なに?」
「片付け終わったんだろ?なら、彼女を手伝ってやりな」
そう言って、アキトを私の隣に連れて来てくれた。
「ふぅ~お疲れ」
3人が揃った所に姿を現した先輩
「「「お疲れ様です」」」
「あ、ちょうどいい、ヒロくんには先に話したけども、アキトくんもしよちゃんも、バイト終わったら少しでええから時間空けといてくれへん?」
「いいですよ」
「もちろんですよ~」
「んじゃ~外で待ってるから後で来てや~」
「「「了解っす」」」
着替え終わり、先輩の元へ向かった私達。
先輩は笑顔で出迎えてくれました。
「待ってたで、君らにはちゃんと話ときたかったからな」
「なんですか?話って」
「気になるな」
「ちゃんとって言う所で、いい話ではないって事ですよね?」
「相変わらずやな、ヒロくんは。感がいい」
「ん?俺にはさっぱりわからんが」
「何か悩みがあるんですか?」
心配そうに先輩を見つめるしよ。
その仕草に、大人の笑顔(通称:フェロモンスマイルと名付ける)を見せ、私の頭に手を置く先輩。
「しよちゃんはほんまかわいいな」
そう言って優しく頭を軽く撫でてくれたの。
「あ、あの~恥ずかしいです」
先輩の行動に少し照れる。その光景を眺める男が2人。
「アキトは、あ~ゆ~のどう?」
「マニアなら喜ぶだろうな、きっと」
「ははは。違いないな」
・・・たまに私は、2人の考えが理解出来ない時があるわ~
ま、男の妄想ってやつよね?きっと。
「お?君らも撫でてあげようか?」
「「結構です」」
「え~最後なんやからいいやんか~」
先輩の”最後”という言葉に一同は驚いた。
どうやら先輩は、私達に”最後のお別れ”を言いたかったみたいなの。
初めて会った時から、親しみを感じてくれて、今までよくしてくれた。
これからも続くだろうと思ってた楽しい時間は・・・今日で終わるみたい。
それぞれ先輩に挨拶をし、先輩を笑顔で見送る事を決意した私達。
「先輩には・・・色々と感謝してます」
「違うで。感謝してるのは私の方や。短かったけども、ヒロくんやアキトくん。そしてしよちゃんに会えて、楽しいバイト生活を送れたわ。ほんま・・・ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございました」
「しよちゃん。アキトくんとヒロくんを頼んだで~」
「え?あ、はい」
「アキトくん。しよちゃんとヒロくんには感謝してるかい?」
「あ、ええ」
「なら、これからも仲良くやって行けるね?」
「はい。大丈夫です、きっと」
「ヒロくん。色々大変だろうけど、頑張ってや~」
「心配しないで下さい。僕は大丈夫ですから」
別れの時、先輩は1人1人の背中を両手で突き飛ばしたの
何故だと思う?・・・それはね・・・
「少ないけど、みなの"背中を押してあげた"から。この意味・・・わかる?」
そう言って、大人の笑顔を魅せてくれました。
「ほな。また会える日まで・・・バイバイやで。みんな」
「「「さようなら。先輩」」」
私達は手を振る。旅立つ先輩に・・・
感謝と悲しみと憧れを込めて。
・・・・・
・・・
・
それから1週間が過ぎた日の事。
『少ないけど、みなの"背中を押してあげた"から。この意味・・・わかる?』
あの時の先輩の行動はまるで、"人生の課題"を押し付けられた気がした。
だって、あの言葉は・・・明らかに"頑張れ"と僕には聞こえたんだ。
これが大人の対応力なのか?単に面白い展開の望んでいるのか?
その答えは直ぐには出せないだろう。
でも・・・僕は、僕達はこれかれも"変わらない"。いや、"変わらない方がいい"
そう考えていた。だから・・・"あの件"も早く解決させなきゃな・・・
先輩がいなくなったバイト先は、若干活気が減ったものの
客の流れはいつもと変わらなかった。
ただ・・・
「ヒロ、今日は先に帰るから」
「それはいいが、しよを送ってってやれよ」
「・・・・じゃ」
「おい、アキト」
アキトは何も言わず帰ってしまった。
「やっほ~ヒロ。一緒に帰らない?」
「え?ああ。いいよ」
どうしちまったんだ?アイツ・・・
帰り道
彼の代わりに僕は彼女と一緒に帰っていた。
「あ、あのさ・・・アキトと喧嘩でもした?」
「え?いや、なんでそんな事聞いたの?」
「え?あ、いや、先にアイツが帰ったからさ」
「あ~今日も用事あるんだって」
「そうなんだ。でも、しよを送ってやる事は出来るだろうに」
「ははは・・・ねぇヒロ」
「何?」
「なんでそんなに私らを気遣ってくれるの?」
「なんでって・・・なんでだろうな・・・友達だからじゃダメ?」
「何その答え。ふふ。ま、ヒロらしいのかな」
「こっちからも聞いていい?」
「どうぞ」
「最近、アキトとはどうなの?」
「え?・・・どうなのって・・・ま、普通かな」
少し戸惑って曖昧な返事を出す彼女。
「そか、やっぱアキトが原因か」
「・・・・・原因は私の方」
私の方?この言葉を聞いた時、アキトとの会話を思い出した。
『特に変わったことはないが・・・友達と会った』
もしや、彼女は気づいたのか?だったらその答えは間違ってる。
「・・・え?それは違うだろ。しよは、ただ会わせただけでしょ?」
「え?ヒロ。・・・知ってたの?」
「いや、しよの言葉で確信が持てたって感じだ」
その後、僕がアキトから、しよの友達と会った話を聞いたって事を伝えた。
「そっか。私もあれから考えてたんだけど、思い当たるのは友達だけなんだよね。だから、もしかしたら私の友達が怪しいかなってね」
「なら今から友達の所に一緒に行く?今ならなんとかなるだろ?」
「あ~待って。まだ友達だって決まったわけじゃないでしょ?」
「それはそうだけど・・・」
沈黙の時間が続く。
そして、彼女が悩んだ末に出した答えは・・・
「今度・・・ちゃんと話してみるよ」
「・・・そうだね。それが1番いいかも」
「ごめんね。心配かけて」
「あ、別に気にしないでいいって」
「もうすぐ夏だね」
「ああ。今年は行かないよね?」
「ん?ホームステイ?うん、大丈夫」
「なら、夏休みは色々と遊びに行けるね」
「そだね~。去年遊べなかった分、遊ばなきゃ」
「高校最後の夏休みだしね」
「うん。また3人で楽しめたらいいな・・・」
僕とアキトとしよ
明らかに崩れ始めた固定関係
季節は夏・・・僕と彼と彼女の2度目の夏は・・・
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