Re:member 3rd Spring breeze04
それは、バイトと言う名の空間で
1人の女性に心を奪われた2人の友達が
青春を捧げた物語。
今日は星がよく見える。
バイト先の窓ごしからでもはっきりと白く輝いている。
店内を掃除している彼女。時折、窓を見てにやけている。
その姿を見つめる僕。
こんなに近くにいるのに”心だけ”は離れている。
まるで2人は”二重星”
やはり僕は・・・彼女を・・・
~ Re:member 3rd Spring breeze04 ~
数週間過ぎ、また暑い季節が近づいて来てた頃。
「カラオケですか?」
「そや~ヒロくんは歌嫌い?」
「いえ。嫌いではないです」
「ほな決まりやな」
「他に誰が来るんですか?」
「そりゃ~ヒロくんのよく知ってる人達」
「アキトとしよ?」
「当り~。既に声はかけてるから」
「さすがに段取りいいですね~」
「ははは。もっと褒めろ」
「いや。今のは撤回で」
「なんや~連れんな~」
「で、いつ行くんですか?」
「来週の週末、って言っても木曜か金曜やね」
「わかりました。楽しみにしてます」
と、言うわけで、いつものメンバー?で、カラオケに行く事になる。
「すごい部屋やね・・・」
「きっと店員が勘違いしてるんでしょう・・・」
カラオケ当日。
その日がバイトだったアキトとしよ。
たまたま休みだった僕と先輩は、一足先にバイト先で待ち合わせ。
バイト中の2人には、先に部屋で待ってると報告を済ませ、店の真横にあるカラオケ屋に向かった。
「さすがに私も予想してなかったわ~」
「いや。予想が出来ていたら、僕は速攻で帰ってます」
「ははは、確かにそやな・・・とりあえず座ろっか」
先程から、一体”何を”驚いているのかと言うと、部屋の雰囲気である。
壁紙はピンク、薄暗いライト、椅子の変わりにベットに近いソファー。
正に、若いカップル専用の部屋ですと言わんばかり。
どうやら僕と先輩の2人で来たのが”間違い”だったのであろう。
「あの・・・やっぱアイツら待てばよかったんじゃないっすか?」
「ま~ええやん。この方が都合がええし」
都合がいい?それは先輩にか?それともアイツらにか?
あ、アイツらになら僕らが引けば都合がいいって事になるんだな。
「確かにこの部屋はアイツらにとっては良いですね」
「ちがう。ヒロくんにや~」
え?・・・何で僕?・・・ま、まさか!?
「先輩・・・誘ってます?」 「アホか」
「ははは、ですよね~」 「ナイスボケやったで~」
いや、少し真面目に聞いた僕がバカでした・・・
それはさておき
何故、僕に都合がいいんだ?さっぱり理解できないが
はっきり言える事といえば、先輩は何かを企んでいる・・・
しばらく考え込む僕。
「こらこら~いらん心配せんでええから歌おうや~」
「あ。はい」
悪趣味な部屋で1時間が経過した頃。
部屋に設置されているインターホンの音がした。
それと同時に部屋のドアが開く
「おっす。来てやったぜぇ~」
「お疲れさん。待ってたぜ~」
「やっと来たか~はよ座り」
「あ、はい。失礼しま・・・なんですか?この部屋」
やはり・・・ツッコむべき所は、みな同じか。
「気にするな、僕はもう慣れた」
「・・・そうなんだ」
「あれ?アキトくんは?」
「あ~なんか用事出来たと言って先に帰っちゃいました」
「え?そうなんだ?」
「うん」
「ま、用事あるなら仕方ないわな。それに・・・」
「「それに?」」
「あ~なんでもない」
「よっしゃ~歌っていいかな~?」
「いいよ~好きなだけ歌え~」 「弾けちゃえ~」
「では。いっきま~す♪」
こうして、僕とハイテンションガールx2の歌声が
狭い空間に色づき広がった。
退室10分前のコールが店員から告げられ、延長するかどうかで僕らは迷っていた時。
「ちょっとトイレ~行くわな~」
「「いってらっしゃ~い」」
「まだ歌い足りない?」
「そだね~途中参加だし」
「だよね~僕は延長してもいいよ」
「ほんと?私も延長したいな~」
「後は先輩の答えを聞こう」
「きっと先輩も延長でしょ~」
先輩がトイレに行ってからもうすぐ10分が経とうとしてた。
「いや~遅くなったな~」
「もう退室時間来ましたね、延長しようと思ったんですが・・・」
「そう言うと思って、さっきついでに直接言っといたで」
「え~。本当ですかぁ」
先輩の気のきいた計らいに喜ぶ彼女
予想道りのリアクションに満足の先輩
「ほんまやで~。だからもう少し2人で楽しんでや~」
「え?」「ほへ?」
「ごめんやで、今からちょいと用事あってな~」
申し訳なさそうだが、口元は何故かにやけている。
「あ、しよちゃん。今日は自転車なかったけど、歩き?」
「あ、はい。ほんとはアキトに送ってもらう予定だったんですが」
「そか~。だったら、ヒロくん。ハブステ持っとる?」
「え?あ、持ってます」
「しよちゃんを送ってあげてや~」
「は、はい。了解しました」
「しよちゃん、ちゃんとヒロくんに送ってもらうんやで~」
「あ、は、はい」
僕達の意見を聞かないままに、強引に事を運ばせる先輩。
「んじゃ~先に帰るわな~」
「「お、お疲れさまでした」」
「お疲れ~・・・あ、ヒロくん。ちょい」
去り際に先輩が僕を呼ぶ
彼女を部屋に残し、僕は先輩と部屋を出た。
「これは一体どういう事なんです?」
「ヒロくん、いや。ヒロ」 「は、はい」
いつになく真面目な顔になる先輩。
「私が出来る事はこれくらいや、後はヒロ次第」
「でも彼女には・・・」
「後悔しない生き方、してみな」
その言葉には・・・かなり重みがあった。
「偉そうな事言ってごめんやで」
そう言って、僕に大人の笑顔を見せる先輩。
「いえ、こちらこそ・・・ありがとうございます」
僕は先輩に頭を下げ、少しだけ苦笑いを見せた。
「さて、帰るかな~っと。あ、そうそう。ここの部屋代は私がおごるから、後で請求してや~」
と、最後に言い残し、お節介な先輩は帰って行った。
「おまたせ~」
「先輩はなんて?」
「あ~、先に帰るお詫びに、ここの部屋代おごるからって」
「え?それは先輩に悪いでしょ~」
「だよね。後で先輩には言っとくさ」
「よろしく~。さ、どうしよか?先に歌う?」
「いや、しよが先にどうぞ」
「そ、そう?んじゃ~何を歌おうかな~」
「しよの得意な歌聴きたいな~」
「それは無理。あ、じゃ~デュエットしよっか?」
「ムリデス」
「なんでカタカナなのよ~」
・・・・・
・・・
・
カラオケを終えた僕としよ。
「ちょっと待ってて」
先輩からもらったハブステップを自転車に装着
「ヒロがステップ持ってたのは以外」
「そう?確かに以外かもな」
先輩にもらわなければ”一生”使わなかっただろうな。
「ほんとにいいの?歩いて帰るよ?」
「いいんだよ。送らさせてくれ」
「んじゃ、頼もうかね~」
「おう。さ、乗ってくれ」
「いっくよ~・・・とりゃ」
彼女が元気いっぱいにステップ目掛けてジャンプする。
うまく両足をステップに乗せたが、勢い余って僕の背中に倒れこむ。
「おわ!!ふ、普通に乗りなさい」
「ははは。ごめん~」
体勢を整える僕、僕の肩に両手を乗せる彼女。
(しよがこんなに近くにいるのか・・・)
「じゃ、じゃ~行くよ~」
「はっしぃ~ん」
ゆっくりとペダルをこぎ始める僕。落ちないように僕の肩に力を入れる彼女。
背中には彼女の温もりが伝わって来るのがわかる。
かなりの緊張・・・体中の熱が上がる。
ほどよいスピードで風を切り走る自転車
風が彼女の髪を靡かせる。
「そういや~」
「何かね?」
「初めてだね、バイト以外で2人一緒にいるのって」
「そ、そうだっけ?」
「きっとそうだよ。たまに2人でいた時間もあるけど、ちゃんと過ごした時間は、今日が初めてだよ」
彼女が僕の右肩の方に体重を預け、目線を僕と同じ所まで持ってきた。
僕は体重を、やや左に持って行きながらも顔を右に向ける。
視線と視線が交わる。
自然と笑顔がこぼれる2人。
「しよは、ハブステ慣れてるんだね」
そう言いながら顔を進行方向に戻す僕。
「え?あ~そうかな?慣れてるって言えばそうかも」
彼女も定位置に体を戻した。
「だよね~。いつも乗せてもらってる人いるもんね」
「ま~ね・・・」
気のせいだろうか?
彼氏の話題を出して、やや表情を曇らせた彼女
「あ、そ、そういや~次の角を右に曲がるんだっけ?」
慌てて話題転換させる僕
「そうそう、狭い道だから気をつけてね」
「了解」
しばらく沈黙が続く・・・不意に頭の中に先輩の言葉が浮かぶ。
『後悔しない生き方、してみな』
後悔。この言葉は1年前からずっと背負ってる。
あの時・・・言えなかった想い・・・ここで伝えるか?
否。
彼との約束がある。
『彼女はお前に任せた。必ず幸せにしてやってくれ』
あの時に託した想い・・・現に彼女は幸せだ・・・
ならどうしたらいい?
頭では理解してる。でも、やっぱり後悔したくない。
だが、伝えてどうなる?どうしたい?
僕の望みは・・・何?
「・・・ろ・・・ね?・・・ヒロ!?」
誰かに呼ばれる声がする。
それと同時に考え事が途切れる。
「こら~ヒロ。寝てるのか?」
「え?あ、ごめん。考え事・・・ちゃんと起きてまっせ」
「・・・ヒロって変わってるって言われない?」
ははは・・・懐かしいフレーズだな
「ああ。今頃気づいたのか?」
「うん。妄想好きだったとは・・・」
「それは、言い過ぎだって・・・」
再び笑顔がこぼれる2人。
笑いながら彼女の方に視線を向ける
彼女も気づき、優しく見つめてくれる
なんともいえない感覚。
この時・・・やっとわかった・・・
僕の望み・・・でも。もう遅い・・・
だけど。伝えよう・・・”今だけは後悔しないように”
「な~しよ・・・」
「ほへ?」
「あ、あの・・・か、かゎ・・ぃぃょ」
「は?・・・なに?風があるから聞こえない」
「かわいいよ・・・そうやって笑ってるとこ・・・」
「な・・・なななな・・・冗談でしょ?」
意外な言葉に困惑する彼女。
「いや、素直に言っただけなんだけど?」
少し真面目な口調で言ってみる。
「そ、そうなんだ・・・あ、ありがとう」
「僕は、君がそうやって笑ってくれて・・・見つめてくれるとこ・・・す・・・・・好きだよ」
「・・・・・・・・・」
僕の肩に置いてある彼女の手の力が少し抜けて行くのがわかる。
「な~んてね。しよの長所を言ってみた」
「・・・え?」
「あ~さっき言ったのは、しよの社交的な性格が好きって事」
多少強引ではあるが、彼女を説得した。
結果的に、彼女を”騙して”しまったが、これが”今の精一杯”
「なるほどね~。てっきりヒロが私の事好きなのかと」
「好きだよ、友達として。あまり言ってたら彼氏に悪いし」
「ははは。ね、ヒロに聞きたい事あるんだけど?」
「どんな事かな?」
「さっきから気にしてる彼氏の事でね」
アキトの事で何かあったのか?
「そういや、今日は用事って言ってたっけ?」
「うん・・・アキトとヒロっていつから友達なの?」
「家が近所だったから、小さい時からずっとかな」
「そうなんだ。・・・なら、隠し事も知ってたりする?」
僕は”隠し事”というフレーズに動揺した。
が、冷静に考えて見ると、彼女が聞きたい事は
”僕”の事ではなく”彼”の事なのだと理解した。
それと同時に彼女と彼の間に”何かあったんだ”とも理解した。
「もしよかったら話してくれない?わかる事なら話すし」
「あのね・・・」
「私の他に、誰か付き合ってる子いない?」
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