Re:member 2nd Summer Days04
開放感溢れる夏、海に花火に祭りにと、周りのテンションは気温と共に上がって行く勢い。
そして、何故かカップルも増えるという謎。
浮いた話は僕にはないが、僕の身近の友人は皆、浮いていたような気がした。
特に・・・
「やっほ~暑さに負けるな~少年」
背後から僕の右肩を左手でポンと叩き、僕の正面に回り込む。
以外に近い距離。意識しなくても無意識に心拍数が上がる。
「や、やあ。今日も暑いよね」
「夏だしね~今日はバイトだっけ?」
「え?いや、休み」
その言葉に不思議がる彼女。
「あら~?じゃなんでここに居るの?」
「ただ食事しに来たんだけど?」
「そうなんだ~」
僕と彼女がいる場所、それはバイト先の店内。
彼女はこれからバイトらしい。
「そういや彼氏さんは?」
「もうすぐ来るって連絡あったよ」
「そか、順調そうだね」
「・・・あまり言わないで」
「あ・・・ごめん。からかってはないんだ」
「いや、違うの。ちょっとここじゃ答えづらい」
「そっか。さて、僕は去りますかな」
「食事は?」
「家で食べる事にするさ」
「せっかく来たのに?ゆっくりして行きなって」
「そうしたいんだが、邪魔はしたくないんでね」
僕は背を向け右手を振り、ドアを開けようとした時
ちょうどアキトが入って来た。
「ヒロ・・・バイト?」
「いや、これから帰るとこ」
「そか・・・」
「・・・ヒロ」
僕はドアノブに手をかけた所で一旦立ち止まり
「今度、3人で花火しない?」
そう言って返事も聞かず店を出た。
・・・はぁ・・・・何してんだろうな・・・・
~ Re:member 2nd Summer Days04 ~
それから数日後。
朝方から電話のベルが鳴る。
夏休みくらいゆっくり寝させとくれと思いながらも、僕は電話に出た。
「はい、もしもし」
「ヒロ、今日空いてるか?」
電話の主はアキトであった。
「あ~予定はないけど?」
「なら、今すぐに来てくれないか?」
その声は何か慌ててるように聞こえた。
「こんな時間から何で行かなきゃならん?」
「早く来てくれなきゃ間に合わないんだって」
ん?さっきから何を言いたいのかわからん。
「そんなに大事な事なら彼女を誘・・・」「だから」
「彼女がアメリカに行くんだ」
「・・・今、なんて言った?詳しく教えろ」
「しよはアメリカにホームステイをする為、今日旅立つ」
「なんでまた今日なんだよ!?」
「俺も聞いたのは最近だったから」
「で、いつ帰ってくるんだ?」
「1ヶ月後らしい」
「そうなんだ。で、僕に空港に来いと?」
「そう、見送りに来てくれないか?頼む」
僕は少し悩んだ。しかし
「・・・行けるわけ・・・ないだろ」
「俺の為じゃなく彼女の為に来てほしい」
「・・・・・・・・」
「出発は午後の便らしいから。それまでに」
そう言ってアキトは電話を切った・・・
・・・どうする?
電話を切ってから1時間。僕はまだ・・・家にいた。
-彼女はお前に任せた-
もう僕は諦めたんだ。だから、行っても邪魔になるだけ・・・
-ヒロの好きな人って・・・誰?-
あ~もう思い出すな
-好きな人・・・誰?-
-好きな人-
-誰?-
『・・・ヒロ』
その時
上空から舞い下りて来る飛行機が、家の窓から見えた。
それと同時に時計を見る。午後まであと1時間を切っていた。
「あ~もう!!」
気が付けば、家を飛び出してる自分がいた。
全力で走れば30分で着く。もちろんチャリで。
必死でペダルをこぎながら、頭の中で想う事
それは・・・
"自分に素直になれ"
さすがに全力で走れば息が上がる。でもそのおかげで空港には着いた。
さて、行くか・・・
歩き回ること5分、屋上の展望デッキに着いた。
彼女が乗る飛行機は・・・まだ出ていない。
それを確認し2人を探す。しかし、何処にも2人の姿は見当たらない。
もう彼女は出発ロビーにいるのだろうか?
だとしたら保安検査場付近にアイツがいるかもしれないな。
僕は保安検査場に向かい階段を降りて行こうとした時。
階段を駆け上がって来てる人影を見つけた。
しよである。そして、それを追いかける人影、アキトであった。
僕は、何故か足が止まる。
そして、しばらく立ち尽くしていた。
2人が通路で会話をしているのがわかる。
「もう少しだけ、待ってくれ」
「もう・・・時間なんだよ・・・」
「アイツは必ず来るんだ」
「でも、乗り遅れたらダメだし」
「ごめん・・・俺がもっと早く連絡しとけば・・・」
僕は2人の姿ははっきり見えてるが、あちらは見えないみたいだ。
ほんとは、直ぐにでも声を掛けて階段を降りればいいのだけれど
声も出ないし・・・足も動かない・・・
ただ・・・見守る事しか出来なかった・・・
「アキトのせいじゃない。私も伝えそびれたし」
「・・・・・」
時間が迫る。
「もう行くね。ヒロによろしく伝えといて」
「ああ。元気でな」
その言葉と同時に、彼の手が彼女を包み込む。
「時々、連絡するから」
「うん・・・連絡待ってるね」
2人の抱合う光景は、すごく自然な光景に見えた。
「出番は・・・ないな・・・」
小言で呟き、僕は階段を”上って行った”
彼女は彼氏に笑顔を見せて出発ロビーに向かった。
彼も保安検査場の所まで彼女を見送りに向かう。
そして僕は展望デッキへ向かった。
それぞれが、それぞれの想いを残し、
今。彼女の乗せた飛行機が天高く舞い上がる。
「頑張れ。しよ」
向日葵を乗せた鳥は雲の上へと進んで行く。
自分の夢を掴む第1歩として・・・
・・・・・
・・・
・
しよが旅立って、2週間が過ぎた。
彼女には夢がある。
それは、国際ホテルのフロントオフィスで働く事。
そのために、少しでも多く、自分の知識を広げようと
ホームステイを考えたらしい。
1ヶ月という長いようで短い期間ではあるが
今日も彼女は頑張っている・・・と思う。
彼女がいなくともバイトは続く。
ま、当たり前なのだが、それでも若干テンションが下がり調子の男が1人・・・
「ふぅー」
「・・・・・・」
「元気にしてるかなー」
「大丈夫だろ、僕らと違って出来る子だし」
「・・・お前に言われたくない」
「それはこっちのセリフだって」
互いに冗談まじりの声
「それはそうと、この前は呼び出して悪かったな」
「あ~気にしなくていいよ。間に合わなかったし」
僕はアキトに気を遣って真実を伏せた。
「残念だったな。あーでも心配だ。ヒロもそうだろ?」
なんか無理矢理同意を求めてる感じがしたが
「そりゃ~ね」
素直な意見で返した。
「う~ん。どうしようか?」
「そんなに気になるなら、電話したら?番号わかるんだろ?」
「電話か・・・」
「あ、でも時差の都合も考えて電話しなきゃだめだね」
「そうなんだよ。んで、アイツがいる時間帯に掛けなきゃだ」
「大体の時間は知ってるのか?」
「・・・・・これ」
僕に差し出した一枚の紙。それに書かれてた内容には
電話番号・電話可能な時間帯、電話の応対方法などが細かく書かれていた。
「彼女、親切じゃないか」
「まーな。・・・で、お前にまたお願いがあるんだが」
「・・・えっ?」
次の日の事。
「いよいよだな・・・」
「・・・ああ」
夏の日差しの暑さで、気温も上昇。僕らの緊張も少々上昇
「さて、準備しますか」
「OK」
2人の顔が1つの電話ボックスを睨む。
そして、1歩1歩、歩を進めていく。
「テレカは?」「7枚ほど」
「僕のも使おう」「ありがたい」
「これで9枚か?」「念のため小銭も用意しよう」
「そだな、相手は手強いからな」「ああ」
目の前に聳える透明な箱。さあ、決戦の時だ。
「俺が行くぜ」
「ああ、気をつけるんだぞ」
「任せとけ、俺にはこの紙がある」
彼はポケットから取り出した紙を左手に持ち、電話ボックスの扉を開く。そして受話器を取った。
そして、彼女直筆の紙を見ながら番号を押そうとしていた。
「落ち着け」 「ああ、わかってる」
「・・・・・・・」 「・・・・・・・・」
「どうした?」 「くっ、俺にはダメだ」
暑さのせいなのか、緊張のせいなのか?
彼は額に汗を浮かべて受話器を下ろす。
「何がダメなんだ?」
「・・・英語に自信がない」
なんだそのオチは?
「英語に自信なくてもその紙見ればわかるんだろ?」
「・・・ヒロに全て託す」
そう言って、僕に紙を渡した。
何故にアイツは英語に自信がないと言ったのかが気になるが
とりあえず紙を見て話せば伝わると、この時はそう思っていた。
思っていたんだけども・・・アイツが挫折した意味がわかった。
紙をよく読んで行き、電話の話し方の所で・・・
☆しよの異文化コミュニケーション レッスン1☆
まず、挨拶から入るのが基本♪
Hello
そして、○○に自分の名前を入れて話してみて☆
This is ○○ speaking
最後に、私と話したい事を伝える言葉を言えば完ペキ!
Please shiyo talk me
以上、頑張ってね~☆
「・・・・・・・・・・・・・・」
マジで・・・こんなのでいいのか?ってか伝わるのか?
簡単な単語ばかりで書いてるように思うのは気のせいか?
「大丈夫そうか?」
あまりにも無言な僕を見て、心配そうに尋ねるアキト。
「ま、やるしかないでしょ」
そう。しよを信じれば大丈夫・・・きっと。
受話器を左手に取り、テレカを入れ、右手で番号を押した。
国際電話なんて初めての経験。
まして英語なんて話した事もない僕。
かなりの緊張が体中を駆け巡る。
♪ぷるるる~ ♪ぷるるる~ ♪ぷるる~がちゃ
繋がった。それと同時に
「hello」
発音抜群の外人さんの声。慌てて僕も挨拶をし、要件を伝える。
「Hello. this is hiro speaking. please shiyo talk me」
若干、片言ではあったが、どうにか伝えたぞ。
しかし、いや、予想通り、外人さんには伝わらない。
さ~困ったぞ。
「hiro?」
「yes. あ~ アイムジャパニーズ」
なんだか英語と言うよりカタカナ口調になってきた。
「Japanese?」
「あ~ しよプリーズ talk me shiyo OK?」
「shiyo?」
「yes shiyo. Japanese shiyo」
「OK」
ふぅ~・・・どうにか伝わったみたいだ。
中学の時の知識よ、ありがとう~
などと、心で思っていたが、大した事を話した記憶はない。
そんなこんなで5秒が過ぎた頃
「もしもし~」
久しぶりの彼女の声。
この時が、僕と彼女の初めての電話でもあった。
「あ、しよ?僕だよ。わかる?」
「あ~ヒロ?久しぶり」
「久しぶりだね。この前は見送り間に合わなくてごめん」
「ううん。こっちこそ早く伝えればよかったのに、ごめんね」
「いやいや、そっちの生活はどう?」
「う~ん、やっぱ慣れないね・・・でも、いい勉強になってるよ」
「そっか~。あと少し頑張ってね」
「ありがとう」
国際電話はお金がかかる。
僕がしよに話ができるまでに、既にテレカ2枚なくなった。
そして今の会話で更に2枚・・・のこり5枚となった所で、僕は彼氏の存在を思い出した。
「あ、そうそう。そろそろ彼氏さんに代わるから」
「え?あ、うん。ヒロ、そっち帰ったら会おうね」
「それはいいが、彼氏が先だろ?」
「3人でだよ。約束・・・忘れた?」
約束?あ。
『今度、3人で花火しない?』
「花火だね?わかったよ」
「楽しみにしてるから」
「了解。では、ちょっと待ってね」
「は~い」
こうして、僕と彼女の初めての電話は終わった。
「アキト、交代だ。ゆっくり話してきな」
「サンキューな、ヒロ」
「お礼はお互い様だ。テレカなくなったらこれ使ってくれ」
そう言って僕は100円玉10枚電話の上に置いて、近くの自動販売機まで歩いていった。
振り返ると・・・幸せそうな顔をしてるアイツが見えた・・・
next → Re:member 2nd Summer Days05




