Re:member 2nd hiro's side01
時間が経つのは早いもので
バイトを始めてもう半年が過ぎていた。
仕事にもすっかり慣れ、バイト仲間ともよく話ができる関係になっていた。
その中でも、特に話やすかった人物がこのお方。
「やっほ~、今日も頑張っとるかね~」
~ Re:member 2nd hiro's side01 ~
彼女とは同じ歳で、僕がバイトに入ってからよく面倒を見てくれてた人である。
「見ての通りっすわ」
「ふ~む、掃除はOK。倉庫の在庫はどうかな?」
「さっき数えたけど、一緒に見てくれる?」
「仕方ない、見るだけね~」
「あ、いや、やっぱ自分でするよ」
「何でよぉ~在庫数えるのは得意なんだから」
「・・・そう?なら、そっちのデザート類をお願い」
「任せなさい」
2人きりの倉庫
なんだか半年前の事を思い出すなぁ
「ん?どうしたヒロ?」
「あ、いや、少し思い出してただけ」
「思い出すって何をかね?」
「え?僕が入って間もない時の出来事さ」
彼女は少し首を傾げていたが、すぐに気づいたようで
「あ~懐かしいね」
「うん。ここで僕はしよと仲良くなれたのかなってね」
「何それ~。あ、ついでだから言わせてもらうけど、あの時はゴメンね」
「え?何を謝ってるんだい?」
「さ~なんの事かしら~」
数分後。
「これでよし。終わったよ」
彼女は在庫を数え終わると僕の所に駆け足で帰ってきた。
「ありがとね。数は間違ってた?」
「ふふふ。さ~どっちでしょ?」
・・・クイズですか?
「さて、こっちも数え終わったから帰るとしますか」
「あ~、こらこら~ちゃんと答えなさい」
「・・・・間違ってたかな?」
「ざんね~ん。しっかり合ってました」
「・・・・・そぅ」
毎度の事ながら元気いっぱい胸いっぱいの子だ。
彼女はいつも元気で明るく、何よりも面倒見がよい性格
僕みたいな人見知りするタイプとはまったく違っていた。
だけど・・・
彼女は・・・僕の心を引き寄せる”何か”を持っている・・・
「今日は手伝ったから帰りにジュースおごってね」
「最初からおごってほしかったんでしょ?」
鋭い突っ込みに彼女は驚いていた。
「あは。当ったり!でも何で?」
「しよの考えはなんとなく理解できる。素直じゃないんだから」
「あ~。だからあの時、自分でするって言ったのね?」
「ああ。でも、手伝わなくてもおごる気はあったけどね」
「もしかして・・・私、見抜かれてる?」
彼女が僕の顔を覗き込むように見た
その仕草に、僕の心拍数が上がった・・・
それと同時に無意識に彼女の目をまともに見れなくなっていた。
なんなんだ?どうしたんだ?この感覚は・・・
バイト帰り
僕と彼女は自動販売機に寄っていた。
「何がいいかね?」
「う~ん、じゃあこれ」
彼女は僕がおごったジュースを嬉しそうに飲んでいた。
僕はその姿を横目で、そっと見ていた。
「はい。ヒロも飲みな」
そう言って、彼女は右手で持っていたジュースを差し出した。
え・・・
僕はまた心拍数が上がった。
「い、いいよ。しよが全部飲んで」
明らかに動揺しているのがバレバレな口調になっていた。
「・・・もしかして苦手?」
「な、何が?」
「私の事が・・・」
そう言って彼女は少し表情を曇らせてしまった。
さっきから何なんだ??
この感覚・・・どこか懐かしい・・・でも
今は彼女の誤解を解くのが先だ。
「ち、違うんだ。しよが苦手じゃなくて・・・」
「・・・じゃ~何?」
「だから、苦手なのはジュースの方だよ」
「え?ヒロはコーヒー苦手だったの?」
「う、うん。だからしよが全部飲んでいいから」
「そっか、なら次はコーヒー以外を選ばなきゃダメだね」
表情が明るくなり、なんとかその場を誤魔化せた。
それから数分、自動販売機の前で話をして彼女とは別れた。
はぁ。嘘をついてしまった・・・
苦手なのは、コーヒーではなく”彼女がした行動”
でも、彼女の事は決して苦手なのではない。
ただ、女の子の飲んでる飲み物を飲むって行為が、僕には出来なかっただけなんだ。
まだまだ子供だな・・・
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