Re:member hiro & shino story01
今日は・・・いや、今日こそは自分に自信を持たなきゃいけない
僕は何度も自分の心に言い聞かせていたんだ。
「いよいよだな」
「・・・ふぅ・・・そだな」
「いつもの調子なら大丈夫だ」
「ああ、頑張ったからね・・・後はやるだけさ」
「・・・あの子は?」
「来る・・・と思う」
「そか、そっちも頑張れよ」
「・・・ああ」
「よし、じゃー行くか」
いよいよ大会当日を迎えた僕ら弓道部一同。
日々の猛練習のおかげで、どうにか自信はついた。
種目は5人立の近的競技(的の直径36cm・距離28m)
5人立というのは要するに5人1チーム、前から順番に
1的→大前
2的→大落
3的→中
4的→落前
5的→落
トーナメント方式で勝敗は的中制(当り数)で決める。
1回戦が始まろうとしていたが
彼女はまだ・・・姿を現してはいなかった・・・
~ Re:member hiro & shino story01 ~
対戦相手に恵まれたのか、それとも実力なのか
僕らは1回戦を突破していた。
控え室に戻る途中
僕は誰かに、肩をポンポンと軽く叩かれた。
僕は叩かれた肩の方向に、ゆっくりと顔を向けてみると
そこには”優しい笑顔”を咲かせる女の子
そう、彼女の姿があった。
「1回戦余裕だったねぇ」
「い、いつからいたの?」
突然すぎる彼女の登場に、動揺は隠せなかった。
「え?始まる前からずっといたよ?」
「そう?観客の中には見当たらなかったから・・・」
「あーそれはねー・・・」
僕の疑問はほんの数秒で解決する。
どうやら彼女は、試合が1番見やすい場所、つまり
道場の舞台裏で観戦してたという。
何故そこで見てたの?と再度質問してみると
「ここなら誰よりも近くで見れるし、お得でしょ?」と。
うむ、確かに納得はできる。
でもね、誰もそんな所からは見ません・・・少なくとも観客は。
彼女の変わり者宣言は・・・本当だったんですね。
でも、彼女が来てくれたのは嬉しい。
「来てくれてありがとう」
「お礼はいいから、優勝できるよう頑張って」
「そだね、精一杯頑張るから・・・見てて」
「もちろん、さあ次の試合までしっかり集中力高めてね」
「はい!」
僕は彼女に一礼して控え室に戻った。
それから2回戦・3回戦と順調に勝ち進み
次はいよいよ準々決勝であった。
あと3試合勝てば優勝できる。
みんなの為にも彼女の為にも
僕は、勝たなきゃいけないと思ったんだ。
・・・・・
・・・
・
空がオレンジ色に染まる頃
僕と彼女は、一緒にバイト先に足を運ばせていた。
「・・・・・」
「・・・残念・・・だったね」
「ごめん」
「謝ることないよ。みんなすごく頑張ったじゃない」
「そだね。みんなが頑張ったからここまで勝てたんだし」
「その中にヒロくんもいるんだからね」
彼女が僕の顔を覗き込むように見て笑顔を見せた。
「・・・ありがとう」
彼女の笑顔は僕にとっては本当の幸せなのかもしれない・・・
いや、幸せなんだと実感した。
だから・・・今日話すんだ
僕が彼女に想っている事を・・・
「あのさ、バイト終わったら・・・少し・・」
「ん?少し?」
「少し・・・話しませんか?」
「うん、OKだよ。私も・・・伝えたい事あるから」
「そうなんだ。ならバイト終わったら外で待ってるから」
「はい」
・・・・・
・・・
・
店の灯りが落ち、バイト仲間が帰る時間になる頃
僕は先に店の外で彼女を待っていた。
ただ待っているだけなのだけど・・・かなり緊張する。
夜空を見上げて軽く深呼吸をし、なんとか緊張をおさえていた。
そして、ポケットにしまっていたメモ用紙を取り出した。
-いつでも連絡していいから-
全てはこのメモ用紙から心が動き出していたのかもしれない。
でも僕には自信がなかった。・・・いや、逃げてたんだな・・・
だけど・・・
君をもっと知りたくなった
君をもっと喜ばせたくなった
君をもっと大切にしたくなった
そして・・・君を本当に好きになったんだ・・・
「だから・・・どうしても言わなきゃ・・・」
僕はメモ用紙に向ってポツリと呟いた。
「何を?」
・・・ん?
聞き慣れた声が僕の背後から?
振り返るとそこには彼女の姿が・・・
「わっ・・お疲れ・・さん」
「わわっ、驚かせたかな?ごめん」
「い、いや、大丈夫。ちょいと考え事を」
僕は慌ててメモ用紙をしまい、笑顔で答えた。
彼女も笑顔につられて笑顔で話しかける。
「怪しい・・・なんか怪しいぞー」
「怪しくないよ、単なる妄想だって」
「ま、いやらしいですわねー」
初めは女の子と接し方がわからなかったのに
こうして普通に会話出来ている僕。
少しずつではあるが成長したのかな?
「場所を変えて話したいんだけど、いいかい?」
急に真面目口調になった僕の言葉を、彼女はすぐに理解して
「うん。あの公園がいいな」
「あ〜前に行った公園だね?ここから近いし行こうか」
デートで行った公園
後にここが・・・僕と彼女の思い出の場所となる。
僕はこの日が
2人にとっての”始まり”と願っていたんだ。
なのに・・・
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