Re:member hiro's side03
「弓道の大会?」
「うん。もしよかったから見に来てもらえないかな?」
「うーん、いいよ。いつあるの?」
「来週の日曜なんだ。朝からバイトあったりする?」
「来週!?・・・いや、夜からだから大丈夫だよ」
「そうかぁ。僕もバイト夜からだから大会終わったらバイトだよ」
「部活もバイトも大変だね」
「これくらい平気さ。なら来週の日曜、約束だよ」
「はい・・・でね」
~ Re:member hiro's side03 ~
友達始まり(あの一件)により
何となく仲もよくなった僕としの。
大会3日前
アキトの助言で大会に誘う事にした僕は
彼女に初めて電話を掛けていた。
僕の要件を伝え終えた後
彼女の一言で僕は、初めてデートをする事になる。
何故、そうなったかと言うと・・・
「でね、私からも話したい事があって・・・」
「うむ、ちゃんと聞きますよ~」
「バイト・・・るの」
はい?今なんて?
「あ、ごめん。なんか聞きづらかったからもう1回」
「・・・ううん、なんでもないの」
「僕に話したい事はなんでもない話?」
「え?あ、そうじゃなくて・・・ほんとに聞こえてないの?」
「ごめん。マジで聞こえなかった」
「別に謝る事はないんだけどなぁ」
彼女が受話器ごしに笑った。
それにつられて僕も笑っていた。
「ほんとに変わってるね」
「ああ、本人も認めるくらいですから」
「私も変わってるって知ってた?」
いきなり私も変わり者宣言!!
「ま~なんとなく、いや、元々変わってるよね」
「その返事は酷くない?」
「冗談だよ、気に病むなら謝るよ?」
「じゃーお詫びにデートしてね」
・・・・・はぃ!?
と、こんな感じである。
さすがに冗談だろうと思い、聞き返そうとしたら
彼女は日時と場所を指定され、気がつけば約束を交わしてしまったのだった。
なるほど、確かに変わっている。
デート当日
部活を終えて待ち合わせ場所に来た僕
この日はお互いバイトは休みであった。
待ち合わせ時刻ピッタリにやってきた彼女は優しく微笑み
「来てくれたんだね」
と、何か安心したような表情を見せたんだ。
それから僕と彼女は、買物→食事→公園の順に
緊張しっぱなしの僕と楽しく振舞ってくれる彼女。
いつもの僕なら周りの目が気になる所だけども
今回ばかりは周りを気にする余裕もないみたいだ。
でも、彼女をがっかりさせるつもりはなく、僕は僕なりに
どうにか彼女に楽しんでもらおうと努力した。
うん・・・きっと・・・
日が沈み、公園の街灯が灯る頃
彼女はそっと僕に語り始めた。
「あのね、今日誘ったのはちょっと理由があって・・・」
僕は静かにうなづいて話の続きを待った。
「実は・・・バイト辞めるんだ」
え?なんで急に!?
「あ、なんで突然って顔だね。でも、もう前から決まってたの。私が言いそびれてただけ」
あ・・・あの時か・・・
僕は思い当たる節があった。
「前にバイト休みの時に来た事あったでしょ?あの時から・・・もう辞める日が決まったの」
そうなんだ。
もう”バイト”では会えないんだな・・・
なんか空気が重く感じてきた・・・話題を変えた方がいいよな?
「大会の約束は覚えてる?」
「え?あ、うん。覚えてますよ」
「どうにか頑張っていい成績残すから」
「おっ、気合入ってるね~!期待してるからね」
「う~ん・・・期待されたら困るなぁ」
「何それー」
彼女の顔に笑顔が戻ってきた。
僕もつられて笑顔になる。
こんな時間を僕は初めて”幸せ”と感じるようになっていた。
2人の時間は続く・・・
でも楽しい時間はあっという間に過ぎ去り
「じゃあ今度は日曜に会おうね」
「え?バイトで会えるんじゃないの?」
「大会近いから店長が休みにしてくれたみたいで」
「・・・そうなんだ。しっかり練習しなさいよ」
「うん。今日は楽しかったよ」
「私も。無理矢理誘ってごめんね」
「いやいや、謝る事はないさ。素直に嬉しかったです」
「じゃーまたね」
彼女が僕に手を振り、僕もそれに答えるかのように
彼女にずっと手を振っていた。
そう、ずっと・・・
僕は彼女の姿が見えなくなるまで手を振っていたんだ・・・
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