1、異世界への穴ぁぁぁ?!
コメントなどがあったら、じゃんじゃん書いてください。(むしろ書いて欲しいですねー)
ここは児童保護施設、名前は「星の子ハウス」。ここには多くの子供がいる。
それらの子供は様々な理由でここに連れてこられる。
例えば、ある一人の少女は、お金の問題などで捨てられてしまい、どこの施設にいっても問題児扱いされ、行くところがなくなり、その果てにこの施設にたどり着いた。
またある少年は、よく暴れることなどの精神面での問題が仇となり、様々な施設でたらい回しにされてきた。そしてその果てに同じ様にたどり着いた。
こんな風にしてよくこの施設には子供達がやってくる。
だが、なぜこの施設にばかりそんな子供達が集まるのだろうか。理由はただ一つ。
この施設は何処にも居場所のない子供達に居場所を与えるためにつくられたからだ。
だからこそ、どんな子供であろうと受け入れる。それがこの施設の方針である。
だが、この施設に来る子供達には、何処にも居場所が無いということ以外に、もう一つの共通点がある。
それは、どの子も特殊な「能力」を持っているということである。
とある一人は重力を変動させ、ある一人はありえないほどの剛力の持ち主であり、またある一人は冷気を出す能力を持っている。
この他にも様々な「能力」を持った子供達がここにはいる。だからこの家はよくきみわるがられる
だが、そんな不思議な力を持つ子供の中で、一番問題児であるが、この施設の子供達を支える一番大事な少年少女が三人いた。
そのうちの一人が・・・
「うにゅ〜ちょこれーとが九十六個〜・・・ましゅまろが九十七個〜・・・あいしゅが九十八個〜・・・」
この、あどけなく無垢で可愛い顔をしているのに、寝言で羊ではなく、お菓子を数えているという夢の中でも食い意地をはっている少女「白月空」である。
この少女が何より凄いのは、これを九十八個になるまでずっと違う種類のお菓子を言っていることだろう。
そして、この少女の最大の特徴は床から数センチ離れたところで宙に浮いたまま寝ていることだ。いわゆる、無重力といったものだ。
だが、時折地面に少し当たり、瞼をうっすらと開けるが、
「すぴー」
やはり宙に浮いたまま寝続けるのである。
そして、何事もなかったかの様に、先程の寝言の続きを言い始めた。
「きゃりゃめるが九十九個〜きゃんでぃーが・・・」
だが、百に到達しようとしたその時・・・
バンッ!!!
突然部屋の扉が豪快に開かれ、一人の少女が寝ている少女を無表情な顔で立っていた。
「いい加減起きて下さい。これで起こしにくるのは3度目です。早く起きて下に降りてください。」
そして淡々と要件を告げ、扉を開けたまま廊下に出て、階段を降りて行ってしまった。
そうして、ようやく床にぺちゃんとついた空は、目を擦りながら、渋々起きるのであった。
空音が目を擦りながら階段を下りると、広いリビングでは、すでに起きていた他の子供達が朝食のパンケーキを食べていた。
それを作っているのは、キッチンに立っている一人の少年であった。
「おいおめーら、ちゃんとゆっくり食えよー。どーせまだまだ作るんだし」
エプロンを着て、慣れた手つきでキッチンに立ち、子供達の面倒をきちんと見ながら、朝食を作る少年は「十六夜星矢」である。
彼の見た目は、少しボサッとした寝癖のついた髪型で、光の当たり方により少し金色に見える薄肌色の髪をもつ、ちょっと、いやかなり問題児オーラが出ている雰囲気をもつ感じである。
とても乱雑そうでやんちゃそうな顔つきだが、実際はとても面倒見の良い皆の兄貴である。
彼は子供達の中で一番料理が上手く、大抵のものは作れるくらいである。そして料理だけでなく、他のことも大抵すぐに覚え、上手くなるというとても上達の早い少年である。
だからそんな彼に憧れる子供は男女問わずとても多い。いや、ほぼほとんどの子供は彼をカッコイイと思っているだろう。
そんな彼は、毎日料理当番であり、子供達のために毎日腕を振るう、まるで母親のようでもある。
そして、星矢はフライパンを持ちながら、椅子に座る一人の少女に目を向けた。
「おい輝夜、お前も本ばっか読んでねーで運ぶのを手伝え。お前の分も作ってるんだからよ」
「・・・仕方ないですね」
「仕方ないゆーな」
ずっと読書を続け、それを星矢に注意された少女は、先程空を起こしに来た「氷室輝夜」である。
彼女は瑠璃色の冷めた目でキッチンに歩いて行き、その紺色の綺麗な髪をポニーテールに結び、星矢の手伝いを始めた。
輝夜はとても大和撫子の様なとても日本風な美少女であり、外で歩くと大抵は男子の目を釘付けにさせながら、本人はそれを気にせず歩いて行く。
だが、外見が美少女なだけであり、中身ははただの本オタクの天然残念少女というなんとも言えないギャップがある。
だが、本を読んでいるおかげか、知識の量はハウス一番であり、その点でも特殊と言えるだろう。
輝夜は星矢の作った料理を子供達の座るテーブルまで運んだ。その度に子供達から「おかわり!」という声が上がる。
「星矢、まだ作ってるんですか?」
「おいおい輝夜、あいつが起きてきたらパンケーキなんて一瞬で無くなるだろーが。だから今のうちにガキどもの分まで作っとかねーとだろ」
「確かに、遅れて起きてくるのに、食べる速さは一番ですからね」
輝夜が星矢の意見に同感し、呆れたため息をついた。
すると星矢からその「あいつ」のことを聞かれた。
「つーか輝夜、お前あいつ起こしに行ったんじゃないのかよ」
「起こしに行きましたし、ちゃんと意識もある事を確認しましたよ。まだ着替えてる途中なんじゃないですかね」
「まだ寝ぼけてんのかあいつ。休日だからって遅起きされるとこっちが困るんだよなー」
星矢が追加のパンケーキを焼きながらそう呟くと、廊下からやって来た人物に向かって子供達が声をかけた。
「「「空姉おはよー」」」
「んーみんなおはよー」
ようやく起きてきた空は、いつもの白衣の姿になっていたが、髪はボサボサのままだった。
それを見て星矢がため息をつき、丁度料理の方に区切りがついた頃に空の方に行き。
「おー星矢おは・・・うぬー」
「とりあえずその髪なんとかしろ」
強引に洗面所の方に空を引きずって行った
これもいつもの光景であり、空の寝癖は星矢が直しているのである
そんな光景を見ながら輝夜はパンケーキをもぐもぐと食べていた
「・・・何時も通りの朝ですね」
***
「いただきまーす!」
星矢に髪をいつものリボンでツインテールに整えてもらい、スッキリ目覚めた空は、一気にパンケーキをペロリと食べ始めた
「人に髪を整えさせておきながら、能天気に食っているのを見ると、毎度のことながらムカつくな」
「まあ空ですし、しょうがないですね」
「しょうがないことか?」
空の隣で一緒になって食べる輝夜は、特に気にしない様子で、空の前に座る星矢と会話をしていた。
だが、星矢のそんな苦労など無視する様に空は問答無用で食べ続けた。
「いやー、ほんっと星矢のパンケーキはおいしーよねー。毎度のことながらだけど」
「確かに、よくもまあこんな写真みたいな整ったパンケーキ焼けますよね」
「料理の出来ないお前らと一緒にすんな」
そう、星矢が毎日朝食を作るのは単に上手いからというだけでない。まともに料理を作れる人物が星矢位しかいないからでもある。
空は大抵お菓子しか作らないが、その味はまずまずであり、輝夜は料理の為の知識はあるのに上手く実行できないという料理オンチな点があるため、二人とも料理の腕は星矢より断然劣るのである。
「いや別に、あたしは包丁持つくらいは出来るし、お菓子なら作れるもん!」
「でも俺より美味いの作れた事ねーじゃねーか」
「ぐぬぬぅ」
割とよくお菓子作りはするが、どれも星矢が作ったほうが美味しいと言われるものばかりである。
「私は何故料理が出来ないのか、自分でもとても疑問ですね」
「お前は料理オンチだからしょうがない」
「オンチで済まされるんですか・・・」
星矢に料理オンチと断言され、輝夜は少しむくれた。
そんな輝夜をスルーして、パクパクとパンケーキを平らげる空は当然ある事を言った。
「ふぉうだ!ひょうはみんなででかけよ・・・むぐぅ」
「食いながら喋るな」
パンケーキを口に含んだまま喋り始める空の頭に向かって、星矢はチョップをした。
そして空はちゃんと、ごっくん、と飲み干してからもう一度言った。
「今日はみんなで出かけよー!」
「「却下の方向で」」
「即答?!」
休日ならではの提案をした瞬間に二人から拒否の返答が下された。
そんな二人に空はなんでなんでー、とフォークを振りながら言った。
「今日は昼寝とか色々してたいんだが」
「昼寝はわざわざする必要ないよね?!つか色々って何?!」
淡々と拒否の理由を返された空は、適当に言ってるでしょ!、とわめいた。
そして空は輝夜の方を、輝夜ちゃんはどうなの?!という目で見た。
「私も本を読んだり色々していたいのですが」
「だから色々ってなに?!あと、輝夜ちゃんは何時もそうだよね?!」
二人は揃って理由が適当すぎるよ!、と言う空に呆れ顔で星矢は聞いた。
「つーか、出かけるってどこ行くんだ?」
「本屋へゴー!」
「行き先の言い方雑すぎだろ・・・」
「だってマンガとか買いたいから!」
「まあそれは分かるけ・・ど・・・」
言葉に詰まった星矢の視線の先には、いつの間にか食べ終わって皿を片付け、髪を下ろして支度をしている輝夜がいた。
そんな唐突すぎる行動に二人は一瞬絶句した。
「「・・・・・」」
「なにぼうっとしてるんですか。速く準備してください」
「提案者を差し置いてなんたる行動の速さだし!本に対するやる気が怖いよ輝夜ちゃん!」
「行動速すぎんだろ・・・。どんだけ行きたいんだ」
「今日は丁度自分の好きな本が発売される日なので」
「さいですか。」
星矢はそんな輝夜を見て、はあっ、とため息をつき、結局行く準備を始めた。そしてその間に空は、階段をかけ登り、部屋に入って支度をイソイソと始めていた。
結果的に、三人とも出かけることになったのであった。
空は部屋に戻り、もう一度身だしなみを鏡の前で整え、くるんっ、と周ると満足した様に笑い、そしてタンス上にある白い箱をとりだした。
そこには一つのペンダントが入っていた。
三日月のマークの中に王冠のマークがあるその紫色のペンダントは空にとってとても大切な物であった。なので、どんな時でもそれを肌身離さず持っていた。
何故それが大切なのかもわからなくても、失いたくないという気持ちが心の奥底にあったからである。
そんな大切なペンダントを首からかけ、二人の待つ玄関へと向かった。
***
空は記憶喪失である。
それは拾われた時からそうであった。
空はとある森の奥でボロボロになった状態で倒れていたそうだ。破れたワンピースに火傷のある肌、そしてぐしゃぐしゃになった腰まである髪がその時の空の悲惨さを語っていた。
星矢と共にいた空を拾った者はその近くの町で空のことについて星矢と共に聞いて回っていたそうだ。だが、そんな子供の行方不明届けも無いし、家出娘の噂もなかった。そのことからこの町の出身では無いとわかった。
少女は目覚めた時、星矢はベッドの隣の椅子に座ってにいた。ずっと少女の傷を見て側についていた様であった。そして星矢は目覚めた少女に「大丈夫か?」と声をかけた。
声をかけられた少女は、顔を星矢の方に向け、そして無機質なトロンと眠そうな顔で星矢を見た。
星矢は、顔をこちらに向けた少女の額に手を当て、熱が無い事を確認した。
「・・・熱は無いみたいだな。体の傷だけで他は何も無しっ、と」
「・・・・・」
「お前何か食いたいもんあるか?寝てた間薬と果物のジュースしか飲ませてなかったからな。どうせ腹減ってるだろ。何か作ろうか?」
「・・・・・」
星矢の言葉に空はずっと星矢を見たまま何も返事をしなかった。星矢はそんな少女の顔を見て、どこか現実離れした様な、おとぎ話の中の少女の様な可愛らしさを感じた。
そんなことを思いながら無反応だと会話が成立しないので、とりあえず、星矢の方で勝手に話を進めることにした。
「ま、特に何も言わないんならいいや。適当に作ってくるよ。ちょっと待ってろ」
そう言い、椅子から立ち上がって自分たちの泊まってる宿のキッチンを少し貸してもらおうと廊下に向かおうとすると、突然星矢の服の裾が引かれた。
見ると、少女が相変わらず無機質な顔だが、どこか寂しげな表情を浮かべて、ベットから手を伸ばして星矢の服の裾を掴んでいた。
星矢はそんな少女を見て、すぐにその意味が分かったので笑って少女の頭をクシャッと撫でた。
「別にすぐに戻るから安心しろ。いきなりいなくなったりなんかしねーよ」
「・・・・・」
そう言いながら頭を撫でていると、星矢の言ったことを理解したのかスルッと手を離して、また無機質な顔で天井を見ていた。
そんな少女を背中に、星矢は部屋を出て、キッチンへ行った。
「・・・あいつは、一体何があったんだろうな」
そう呟きながら星矢は、はあっ、と面倒な事になったなと思いながらため息をついた。
「おーい、リゾット作って来たぞー」
そう言いながら星矢が部屋に入ると少女はベッドの横にある窓から、体を起こして外の景色を見ていた。そして星矢が入ってくると、また先程と同じ眠そうな顔で星矢を見て、その後視界に入った星矢の手にあるリゾットを見つめた。
星矢は作っていたリゾットを隣にあったテーブルに置き、スプーンで少しすくって、丁度いいぐらいに冷ました後に少女の口に近づけた。
「ほら、これ食え。まずは食ってからだ。」
「・・・・・」
「ちなみに言っとくが、俺の飯は不味くねーからな?」
星矢がそう笑いながら言うと、少女は少し口を開けてリゾットを食べた。モグモグと口を動かした後、少しだけ少女の表情が和らいだ様に星矢は見えた。
少女は一口飲み込むともっと欲しいのかテーブルの上のリゾットを見て、そして星矢の持つスプーンを見た。
「お?もしかして口に合ったか?食いたきゃもっと食っていいぞー。折角作ったんだからな」
星矢はそう言い、少女が口を開けたので食べさせてやった。
しだいには少女は星矢からスプーンを欲して、自分で持ちリゾットを食べ始め、そして皿が綺麗になるまで食べ切り完食してしまった。星矢はそれを笑いながら皿をテーブルに片付けた。
「ははっ、もしかしたらあんま食欲ねーかと思ったが、思ったより食欲旺盛な奴だな。作ったかいがあるぜ」
「・・・・・」
食べ終わった後も少女は変わらず無機質な顔のまま星矢を見ているだけだった。そして星矢は少女の腹が膨れたところで本題に入ろうと椅子に座り直した。
「さてと、綺麗に完食したところだし、お前にいくつか聞こうと思う」
「・・・・・?」
星矢が真剣な顔でそう切り出すと、少女はそんな星矢の顔を見て小首を傾げた。そしてそのまま星矢は少女の目を見つめて言った。
「お前を拾ったのは三日前にこの近くにある森だが、お前はどうしてあんな所で倒れてたんだ?」
「・・・・・?」
星矢の質問に少女はまた首を傾げた。どうやら聞かれている意味がわからない様であった。いや、そもそも言葉を理解しているかどうかも怪しかった。
「・・・あーそもそもお前、俺の言ってること分かるか?」
「・・・・・?」
星矢はそう少女に確認を取った。少女の顔立ちなどはあまりこの辺りの者達とは違っていたので、もしかしたら、違う国の者という事もありえた。それならば自分の言葉も理解出来ないのでは無いのかと思い、星矢がそう聞くと、やはり不思議そうな顔で、顔にハテナマークを浮かべるだけであった。
そんな少女の反応を見て星矢は額を押さえた。そもそも言語が違うとなれば会話どころではなくなってしまう。これではどうしようも無いでは無いか、と星矢が思った時、ある物を思い出した。
「ああ、でもそういえば・・・」
星矢は壁にかけた自分の鞄からあるペンダントを取り出した。これは少女が身につけていたもので、少女が寝ている間に傷を見る時付けていたので、それをその辺りの者に見せて見覚えが無いかを確認していたのである。
そのペンダントを少女の前に見せると少女はそれを見て、ビクッと震えた。
「・・・これ、お前の首にかかってたんだけど、これお前のだよな?」
「・・・・・」
「これさ、裏に俺の知ってる文字でこんなことが書いてあった、っていうか彫ってあったんだけど。」
そう星矢が見せたペンダントの裏には「白月空」と漢字で掘られた文字があった。それを少女に見せると少女は肩を震わせて俯いた。そんな少女に星矢はまた質問を投げかけた。
「これさ、多分お前の名前だよな?」
「・・・・・」
「・・・お前の名前が漢字で書かれてるってことはお前は一様俺の言葉は理解できるって思っていいよな?」
「・・・・・」
星矢がそう言うと少女は少し悲しげに俯いたまま頷いた。
「お前、空って名前なのか?・・・いい名前だな」
「・・・・・!」
そう言うと、少女は顔を上げ、泣きそうな顔で星矢を見た。そして、少女の目を見つめて言った。
「俺は十六夜星矢だ。・・・お前の名前は?」
星矢が、ちゃんと自分の名前を自分の口で言って欲しい、という意味を込めて言った言葉は少女にちゃんと届いたようだった。
「・・・そ・・ら。しろ・・・つき・・そら」
小さな、でもちゃんと届く声で自分の名前を口にした空を星矢は胸に抱き寄せた。少女が一瞬驚いたようにビクッとしたが、星矢は空の頭を撫でたまま、空に言った。
「空・・・辛かったな」
「・・・・・っ!」
その一言は空にどんな意味があったのか、また星矢がどんな意味で言ったかは分からない。でも、その一言は空の空っぽになっていた心を満たし、動かした。
「・・・みんな、みんなが・・・・いなく、なっちゃった。でも・・・自分は・・・何も、出来なくて」
「・・・・・そうか、頑張ったんだな」
そして、空は星矢の胸の中で泣き出した。星矢は空が泣き止むまでずっと撫で続けた。空の傷ついた心を癒すように、優しく、でも力強く、空を胸の中で泣き止むのを待った。
何も知らない星矢には、それしか出来なかったから。
空は、やがて泣き疲れたのか眠りについた。空が眠った頃には星矢の服の胸辺りは空の涙で湿っていた。
ベッドで眠る空に毛布をかけた時、部屋にコンコン、とノックする音が響き、一人の人物が入ってきた。
そして、その人物は泣いた後が残るベッドで寝ている空と、服の胸辺りの濡れた星矢を見てニマニマと笑った。
「もしかして、慰めてあげたの?星矢のくせにぃ?」
「星矢のくせには余計だクソババア。俺に全部押し付けやがって」
「いやいやーこういうのは若いもん同士でやってくれなきゃねー。こういうイベントも起こんないでしょー」
「イベント扱いすんな。あと、全部分かってたみたいな顔すんな、クソムカつく」
星矢が腹立たしげに話す相手は空を見つけた人物だった。その人物は星矢の方に歩いて行き、壁にあった椅子を引っ張ってきて座った。そして二人は無駄口を叩き合うのは止めて、本題に入った。
「んで、結局どうだった?」
「んーやっぱりこの子はこの辺りの子じゃないみたいね。隣の町にある役所に行って確認したけど、こんな子はどこにも載ってなかった。・・・この子の名前は?」
「白月空、本人がそう言ったからこのペンダントどうりで間違いないな」
星矢はそう言いながら手に持ってたペンダントをもう一人にも見せた。
「・・・やっぱ、手がかりはこれだけか、と。この子がどこの子なのか分からないと先に進めないわねー。この子、自分のこと何か言ってた?」
「いや、特には。ただ、相当辛い事があったみたいだな。空っぽな顔で俺を見てた時、そんな風に感じたからな。あと、こいつの言ってたことも。」
「・・・なんて、言ってた?」
「『みんな・・・いなくなっちゃった』だってよ。おそらく家族か友人とかを目の前で亡くしたんじゃないかと俺は思ったけどね。」
「いなくなった・・・ねえ。何か事故でもあったのか、災害にでもあったのか、あるいは・・・」
「『何も、出来なかった』とも言ってた。その言葉からすると・・・まあ、あんま考えたくはないけどな」
そう言い、お互い重たい空気になりながら、互いにため息をついて、寝ている空を見た。
「まあ、この子が自分から話してくれるまでは余計な詮索は無用ね。この子を傷つけることになるかもしれないし」
「まあな。とりあえず、明日はこいつがどこから来たのかを聞かないとな。でないとなんも出来ないし」
「そうね。ま、今晩はとりあえず寝ましょうか。明日からまたやってけばいいし」
そう言い、立ち上がってドアの所まで行ったときに星矢に一言言った。
「ところで、今晩その子と一緒に寝てあげるの?」
「・・・・・は?何言ってんの?」
「だってその子・・・」
そう言いながら指差す方向を星矢も見ると、空は寝たまま無意識の内に星矢の服の袖を摘んでいた。
「星矢と一緒にいたいみたいだしねっ」
「こいつ・・・いつの間に」
「ほらほらーつべこべ言わずにその子の側で寝てあげなさいよー」
そしてドアを開けたときに、ちなみに、と付け足した。
「可愛いからって手を出しちゃだめよ?」
「するか!早く出てけクソババア!」
星矢のそんな苛立ちの吠えをさらりと受け流すように、おやすみ〜、と廊下に消えていく人物を見送ったあと、星矢はしばらく空を見つめた。
「・・・・・」
「すぅ・・・すぴー」
「・・・ったく、しょーがねーな」
毛布を上げて一緒にベッドに入ると空はこちらに寄ってきた。
そんな空の無邪気な顔を見ながら、星矢も眠りについた。明日から大変になるなと思いながら。
翌日、起きた空に昨日星矢と話していた人物が自己紹介をした。最初は怯えたように接していた空も、段々と会話をしているうちにそれもなくなって、ちゃんと喋るようになった。
そして、空から色々なことを聞こうとしたが、どの質問をしても「分からない」「覚えていない」しか言わず、どうやら記憶喪失だろう、という事が分かった。
空は何も覚えていなかった。自分が何処から来て、何処で育って、どんな家族がいたのか全くわかっていなかった。
星矢に呟いた言葉の意味も、もう一度聞くとよくわかっていないようであった。どうやら無意識のうちに言った言葉だったようだ。
それからは、空も一緒に町を歩いて、色んな物を見たり、聞いたり、感じたりした。記憶の無い空からしたらそのどれもが新鮮なものであった。
結局、空は何処に住んでいたかすらわからなかったので、星矢たちが面倒を見ることにした。どこかに預けるよりかはそっちの方が空にとってもいいだろうと判断したからだ。
それからは三人で一緒に各地を旅して回った。元々、星矢達は旅をしており、その途中で空を見つけたのである。
旅をしながら、二人は空に色々なことを教えた。
学校にはいけないので、学校で学ぶようなことを教えたり、料理などの家庭的なことを教えたり、他人との接し方などの社会的なことなど、様々なことを教えた。
それらを空はすんなりと受け止めて、旅をして半年もする頃には、普通の子の様に笑い、会話をしたり、遊んだりしたり、勉強する様になった。元々空は運動神経も良かった様なので、鬼ごっこなどを星矢とやったり、オリジナルのゲームを考えて遊んだりした。
結局、旅をしている間、空のことは何もわからなかった。
ただ感じたのが、心の奥底に、深い悲しみがあることだけであった。
それを別に詮索することなく、ただ、たまに泣いているときには星矢が側についてやり、泣き止むのを撫でながら待っている、ということがよくあった。
そして、三人で旅をし始めて一年たった時、輝夜と出会った。
輝夜とはある日、三人がとある町の市場で本を見ている時に、空と同じ本を取ろうとして偶然出会った。
ちょっとのことで仲良くなり、どこから来たのか空が聞いた時、輝夜は淡々と「大きな財閥の家」と、答えた。
どうやら輝夜は家出娘の様であった。
家出した理由を聞くと悪びれずもせずに「家が退屈になったから」と淡々と答えた。
記憶を無くし、自分の家族が誰なのかも知らない空は「でも、家の人が心配するんじゃない?」と言うと、
「上等です。むしろ心配して慌てふためく様子を見てみたいものです。困らせるために家出したのもありますしね」
と、悪びれることもなく不敵な笑みを明後日の方向に向けながら言った。
そんな輝夜のひねくれたところが星矢と空以外の一人が気に入ってしまい
「よし!今日から君も旅のお供だ!」
などと勝手にはしゃぎ始めた。
星矢は、家の奴らが探してたらどうすんだ?と聞くと、私たちが守ってあげればいいでしょう!と二人から溜息を返される返事をした。
そして、結局それからは四人で旅をする様になった。
そして、それから半年が過ぎた頃、唐突に三人の保護者である一人が「私達の家を作ろっか!」と言い、とある町の一角に大きな家を建てて購入した。
星矢が何故こんな大きさにしたのか、と聞けば
「これからは君たちみたいな子供達をここで受け入れてこうと思ったの」
と、どこか悲しそうな顔をしながらその家を見つめた。
星矢はその言葉の意味をその時は知らなかった。
その言葉にどんな意味があったのかなど。
そして、その家は願い通りに沢山の子供にとっての大切な家になった。
それは、空たちにとっても同じである。
だから思ってもいなかっただろう。
まさか、この家に帰ってこれなくなる時が来るなど。
空は、そんなことは知らずに、大切なペンダントを首にかけて部屋を出た。
玄関に行くと既に星矢と輝夜は支度を終えて待っていた。星矢は普通にラフな格好だが、輝夜はいつも通りに制服であった。
それを空がツッコミを入れた。
「思ったけど、なんでいつも制服なの?普通の服の方が良くない?」
「制服であれば毎日服を選ぶ必要もありませんし、たまにクリーニングにでも出すだけで洗濯も大丈夫なので楽ですよ?というか、いつも上に白衣を着ている空に指摘されたくはありませんけどね」
「私はこの格好が好きだからである!」
「じゃあ私とあまり変わらないじゃないですか」
そんなことを輝夜と話していると、すでに星矢は歩き始めていた。
「おい、さっさと行こーぜ。お前らの服装なんてどうでもいいんだよ」
そう言う星矢に空はマジマジと星矢を見つめた。そんな風に見る空に訝しげな視線を向けた。
「・・・なんだ、いきなり?」
「いやー思ったけど、星矢の服装って割とシンプルなのにかっこ良く見えるのはなんでだろうなぁ?とおもってね。顔補正?」
「確かに、普通の格好なのに不思議とかっこよさげなオーラ出てるのは何故でしょうか?顔補正ですかね?」
「お前らなんで顔補正強調すんだ・・・。まあ、俺のカリスマ性が溢れてるってことじゃねーの」
ドヤ顔でそんなことを言う星矢に二人は
「「うわー」」
と珍しくハモりながら呆れた。
「いや、冗談なんだけど」
そんな風に話しながら三人は本屋のある商店街に向かった。
青い大空は、ただひたすらに澄み渡っており、何かの予兆を感じさせる気配にとなどなかった。
三人は普通に会話をしながら街中を歩いていた。今日は休日なので人通りも多かった。
「んで、結局空は何の本を買うんだ?・・・まあ、何となく予想はつくが」
星矢が最後にボソッと言った後に、空はフフフーン、と人差し指を立てながら言った。
「今日はねー、マンガとかマンガとかマンガを買うんだよ!」
「うん知ってた」
「ですよねー」
てへへ、と笑いながら空は隣の輝夜に聞いた。
「輝夜ちゃんは何買うのー?」
「私は本とか本とか本とかですかね」
「「うん知ってた」」
「分かってるなら聞く必要無いですよね・・・?」
輝夜がキョトンとしながら空達を見た。空と星矢は「まあ、流れ的にああなるよね!」「流れに乗る必要は無かったけどな」と片方はピースとVサインを作って、片方は呆れ顔をした。輝夜も呆れ顔でため息を吐いた。
そんな風に何気なく会話をしていた時だった。不意に空が、路地裏の方に目を向けた。
「あれ?」
「ん?どうした?誰かいたか?」
「お化けでも見えましたか?」
「うーん、誰かっていうか動物みたいだったんだけど。・・・ていうか、お化けは見えたら怖いよ?」
「見えるんじゃ無いんですか?」
「見えないよ?!いつあたしがそんなことできる様になった?!」
「いつの間にか・・・?」
「いつの間にかでもなってません!」
そんな二人に星矢が横槍を入れた。
「んで、結局何が見えたんだ?」
「お化けですか?」
「うん、一旦輝夜ちゃんは黙ろうね?」
そう言いながら空は路地裏に近づいて見て中を覗いた。
「なんかねーキツネみたいなのが見えたんだけど」
「キツネ?そんなんがこんな街中にいるか?ここ山にも近くねーし」
「それに特に通行人も騒いでいませんよ?」
「うん、だから見間違いかなーって思うんだけどあまりにもハッキリ見えたから気になるんだよねー」
「ふーん、じゃあやる事は一つだろ」
星矢にそう言われて空は手に力を込めてグッとした。
「追いかけるっきゃないね!」
そして二人は路地裏へ駆け出した。そんな二人にため息をつきながらも、輝夜も追いかけていった。
空達が入っていった路地裏は薄暗いだけで、何かがいそうな気配はしなかった。
「・・・どこにもいませんね。やはり見間違いなのでは?」
「あれれー?おっかしいなー?」
「やっぱ街中にキツネがそう簡単にいるわけが・・・」
その瞬間、何処から現れたのか、突然黒い影が空達を横切り通り過ぎていった。
「あ!あのキツネだ!」
「マジていたのかよ。お前の目が腐ってんのかと思ってたわ」
「いや、それは酷くない?!」
「そんなことより、見失う前に追いかけましょう。確か向こうは行き止まりでしたし」
そのまま三人はキツネの向かった方向に走り出した。
やがて、キツネは行き止まりにたどり着いたところで止まり、空達に顔を向けた。
「やっと止まった!」
「こうして見るとキツネだが・・・これ本当にキツネか?」
「キツネだよ!それ以外何に見えるってのさ!」
「いや、なんか普通のキツネっぽく無いようなきがするんだが」
「そんなことより捕まえてみてはどうですか?この行き止まりじゃ逃げようがありませんし」
「よし!捕獲だー!」
「いや捕獲って・・・」
そう言い、空がキツネに近づいた瞬間・・・
地面にぽっかりと穴が開いた。
「「「・・・え?」」」
そして三人はその穴の中へと落ちていった。
「穴ぁぁあぁあぁ?!」
だがその一瞬、空はキツネが不気味な笑みを浮かべている様に見えた。だが、やがて穴の中の闇へと空達は消えていった・・・
穴が閉じた後、そこには何もなかったかの様にキツネもいなくなっていた。
そしてその後、その場所を訪れたある一人の人物は、その穴の開いた地面を見つめ、その大穴が開いた地面と撫で、
「・・・・・ごめんなさい」
謝罪の言葉を悲痛な声で呟きながら、そのまま踵を返して、元来た道を戻った。
そしてその路地裏には、薄暗い中乾いた風が吹き抜けていった。大空は、やはり何も感じさせない、綺麗な青空だった。
《追記》
ちなみに、話の更新速度は亀以下なので、期待しないで待って欲しいです。(土下座)




