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その46 狙撃手と決戦3

 死ぬな。

 私はもうほとんど生きるのを諦めていた。だってそうだろう、滴が三人。その全員が手練れだ。

 今まで生きてきた18年間を回想していたところである。それを……


「っ……うっ…おい、本当にいいのか、ぬし……」


「構うこたねえよ。つーかお前を助けないと色々面倒だ」


 少なくとも、……ぬしは続けた。「この機械どもより、銀色のスナイパーの方が厄介だからな」

 ちらりと視線を外す。あの先におそらくソラがいるんだろう。


「あなたが『喫煙所の主』ですか」


 『D4』の一人、ヘアと呼ばれる少女がいう。

 地面につくほど長い灰色の髪を緩やかに撫でながら、しかしその目――その奥の瞳は主を冷徹に見つめていた。


「おう、なんだ機械ども。俺のことを知ってんのかい」


「人間には興味ないんですがねえ」


 データとして問うならばですが。

 ヘアはいう。そのあとの言葉はもう一体のD4が紡いだ。腰あたりに個体番号と名称……『ネンス』? と読むのか。 


「〝伝説の狙撃手〟」

「大陸警察の特殊強襲部隊『喫煙所』唯一の、元S級スナイパーにして、大陸警察が持つ強大な戦力のうちの一人。まあ、『元』だがね」


 ネンスはその言葉を強調した。ふむ、この男大陸警察……つまりハオルチア全土を管轄する自警団の、実行部隊に所属していたのか。

 初耳だ。つーかそれでいてソラの師匠って一体どういうことなんだよ。あいつは自警団とは真逆の存在。『殺し屋』だろう。


「片目を負傷して除隊した後どこで何をしているかと思えば……まさかこんなところで会うとは思いませんでしたよ」


 ヘアが言う。えっ片目を負傷? あ、それでサングラスなんかかけているのか。

 D4たちの言葉に、おそらくすべて正しいからであろう。主は無言だった。ただカチリとライターで煙草に火をつけると、一度白煙を吐き出して尋ねる。「で、どうするんだ」


「あ、そうだ。ちょっと待てよ」


 2人を交互に見比べる。


「『D4』ってのは確か、あれだろ。出現頻度がめちゃめちゃ低いプログラムなんだろ。ちょうどいい、破片のひとつでも集めときゃ、なかなかいいコレクションになるな」


 『ノア』のデータは諦めるんだ。それくらい持っていってもソラも何も言うまいよ。

 鼻から煙草の煙を吐き出しながら、主は言う。私はこの場においてはほとんど見ていることしかできないが、

 そんな状況でも今の一言が『地雷』であったことはわざわざ記すまでもない。果たして機械に『感情』なるものが存在するか定かではないが、

 存在すると仮定するならば、おそらく、彼女らは今怒っている。


「はあ?」


「……ご自身の置かれた立場をよくわかっていないようで」


 ヒュッ

 軽い音を立ててその瞬間、ヘアの髪がゆっくりと逆立つ。

 その先端は刀の切っ先のように尖り――それが一本や二本ではない。毛髪の本数だけ、針がある。

 おまけに一本一本が鋼鉄ほども硬いから始末におえない。自由自在に動かし、全動させながら攻撃してくるのだから。

 え? やけに詳しいなって。そりゃあそうだ。だって私は一度攻撃を食らったのだから。


 ……!

 ちょっと待てよ、そこで私は気がついた。

 『D4』はその名の通り全部で4体いるわけだ。んでここに2体、おそらくノア中枢に向かったエクスのところに一体。

 あと一体はどこにいる? いうまでもないだろう。


「……ソラ……!」


 まずい、

 私は案ずるように廃ビルの屋上を見上げた。遠すぎてわからないが、おそらくあそこに彼女がいるんだろう。

 長距離狙撃を得意とするソラが、直接『D4』に攻撃されてはひとたまりもないことはいうまでもない。


 ……なにか策はあるんだろうな。銀色のスナイパー。

ありがとうございましたー!

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