その45 狙撃手と決戦2
ノア内部。
すごい、本当についてしまった。
ソラさんがあれから狙撃して、見えるようになったゼータポリスの骨格『ノア』。
流線型の大きな作りの、そこまで大きくない搭状の建物だった。色は銀色で、外側になにやらわからない、ゴテゴテした装置がたくさん作られている。
って、見とれてる暇じゃなかった。
確実に『D4』は街に放たれたのだ。狙撃が行われて防御がむき出しとなった以上、連中も確実に攻撃してくるだろう。
そうなると後はもう短期決戦。
「……いくぞ」
俺は自分を鼓舞した。震えそうになる足を必死に律する。
そうだ、どうせこのままじゃあ『方舟計画』で全員お陀仏だ。それなら多少なりとも抗ってやるさ。
なにもしないよりもマシだ。
ノアの内部は閑散としていた。
警備がいると思いきやそんなこともなく、多種多様な精密機械のパーツ? と思しき何かで構成されている。
携帯電話やパソコンなんかの内部に、小さくなって入り込んだみたいだ。
中央にはずーっと上の方まで伸びた階段が。
これか、俺は駆け上がる。
「…………しかし…」
そう、これでいいんだろう。
計画は間違っていない。しかし、どうにも俺は信じられなかった。
この先にいるであろう黒幕。
そいつが―――――――――――――ぎゃっ!!!
ドタドタドタドタ!!!
ななな、なんだ……!?!
「うわわわわっっ!!!!」
何か強大な力に俺は投げ飛ばされた。
ゴロゴロゴロと階段を転がり落ちる。
「いててて………ん?」
大きな広間のような場所。
真っ白でひどく無機質だ。立ち上がり、再び前に進もうとしたら目の前に人影。
「やぁ」
「!? ……お前は………」
「まさか人間が『ノア』内部に侵入してくるとはねえ、驚いた。」
『D4』。〝重圧〟のグラ。
俺の目の前にいたのはあの少女だった。少女ってか防御プログラムだが。
あの時と同じ服装、同じ格好だった。
「…ぜ、全員出払っちまったんじゃないのかよ」
「なわけないだろぉ、さて、この先がノアの『コア』になってる。通すわけにはいかないよ」
***
ほとんど同時刻。
やあみんな、私だ。如月 止水だ。
だが残念ながら、今の私に軽口を叩く余裕はない。ここまで読んでくれた人ならばわかると思うが、今の私は満身創痍。
ほとんど意識があるのが奇跡と言っていいくらい、ボロボロなのだ。
いたたたた……『主』によって打ち込まれた麻酔弾のせいで四肢の自由が効かない、立ち上がることすらままならなかった。
加えて、
ピピピピピピピピ
『D4』が顕現する音。
周囲に鳴り響くそれに、私はゾクリと身を震わせた。
冗談じゃない……今ここにやってこられると………。
「んん………?」
「なーんだ、もう死にかけじゃん」
やっぱり人間って脆いなぁ
そんな軽口とともに現れた2人の人物。
うち一人は間違いない。『ヘア』と呼ばれていた長い髪の少女。私は彼女を見た瞬間、ずきりと脇腹が痛んだ。
そうそう、もともとこいつにやられたんだ。
そして、もう一人。
「ふーん、さっさと殺してしまおうか」
赤い緩やかな衣服の、少女。
腰になにやら大きな片刃の剣。おそらくヘアと同じ場所にいるということは、こいつもまた『D4』の一人ということなのだろう。
まずいな
一人でも強い敵が、二人。
加えて、
「なんだ、機械共、お前ら「も」如月の嬢ちゃんに用があってきたのか」
主。
手に負えないやからが……合計で3人。
肝心の私は、動かない体。刀を持てない手。
万全の状態ならばまだやりようがあったかもしれないが、これでは……。
悪運もここで尽きたかな。『その瞬間まで』は半分ほど、私は生きるのを諦めていた。
「……? おい、どういうつもりだ」
「は、言っただろう。俺は嬢ちゃんのことあんまり嫌いじゃないってよ」
私を守るように、その前に立ち2体のD4と対峙する主。
一度大きく巨大なライフルを振ると、彼は言った。
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