その2 狙撃手と神の実験台3
「こ、このやろう……よくも古傷に」
「ふ、古傷!? そんなこと……」
嘘みたいな話だが、どうやら運良く適当に殴った一撃が、マカセの古傷に直撃したらしい。
改めて見てみると血がにじんでいる。しかし傷自体はそんなに大きくない。すご……がむしゃらに振るった手がたまたまあれに当たったのか。
だが感心している場合ではなかった。そう、なんとも恐ろしいことにマカセと子分が拳銃をこちらに向けたのである。
「いやいやいや!! ちょ、まてダメだって! おい!」
「うるせえ!! 生意気なことを! 死ね!」
銃声。
あ、これ死んだわ俺。銃口から火が吹き、ついで硝煙の匂いが一気にあたりに散り始める。
「よせ! やめろ! うわああっ!」
俺はほとんど無意識のうちにペンダントに触れる。そのまま神剣として大きくすると、本当に適当に振り回した。
そもそも剣士じゃないしな。剣術なんてかじっているわけもない。
「……ぐああっ!!」
「あ、兄貴!!?」
「ん?」
かがんでいた俺はそこで振り返る。あれ……? あんなにバカスカ打たれたにもかかわらず、全く被弾してないぞ。
そうだな、全部で10発くらい打たれただろうか。そして、なぜか気絶するマカセと、その傍らに転がる。空き缶。金属製のものだ。
しかも空き缶には穴が全部で7つほど空いている。
「え………ちょっと待てよ」
それだけではない。足元にはなぜか真っ二つになった銃弾が……合計3つ。
「………」
もう一度まとめてみよう。両断された3つの弾丸、
失神するマカセ。その傍らの、穴が7つ空いた空き缶。
俺は思考した。
推測だが、多分合っているような気がする。だってそうとしか考えられないし……。
まず、飛んできた弾丸。1発目と2発目と3発目。
これらは運良く俺がデタラメに振るっていた神剣の『刃』の部分に触れ、そのまま斬れてしまったらしい。
普通は飛んでくる弾丸を斬ろうなんて相当な剣腕と反射神経、それから動体視力が必要なのだろうが、
たまたま『切れやすい角度で』弾丸が剣に突っ込んできた。だがそれだけであれば剣の刃の方が負けて折れてしまったり、刃こぼれしてしまったりするかもしれないが、
これもまた幸運にも、俺が剣に掛けていた力がちょうど『飛んできた弾丸を切るのに最適な』状態であったということだろう。
これで10発のうち3発を捌いたことになる。
「……んで、」
残り7発。
ここで例の空き缶が登場する。多分、闇雲に振っていた剣の切っ先に、偶然にも転がってきた空き缶が当たったんだろう。
中空に舞い上げられた空き缶に、運良く4発目の弾丸が直撃する。そして、それによってさらに弾き飛ばされた弾丸が、5発目に放たれた弾丸に幸運にも直撃し、
さらにさらに弾き飛ばされた空き缶に、これまたたまたま6発目の弾丸が命中する。それによってさらに軌道を変えた空き缶に、なんとも幸運なことに7発目の弾丸が……
そう、これを繰り返すことで、本当に運が良かった。7発の弾丸全てを『偶然』空き缶がガードしたのだ。
そして……
「高く舞い上がった空き缶が……」
奇遇なことにマカセの頭に落ちる。
そしてそして、たまたま辺りどころの悪かったマカセは失神してしまった。
「…………」
…………マジかよ!!!!!!!!!!???????????
そのときだ。
子分の長髪が悪態を突きながら空き缶を蹴っ飛ばす。
コロコロと俺の足元に転がると、ちょうど中から銃弾がこぼれ落ちてきた。一つ二つ三つ………七つ。
「…………………」
マジじゃねーか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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