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その21 狙撃手と機械の国

  『 機械大国『ゼータポリス』の始まりは ハオルチア陽歴1824年 一人の天才科学者によるものでした 』


  『 科学者の名は クウガス・H・エバリュエスト 彼の発明した一つのコンピューター・プログラム『ノア』によって 』


 唐突に切れる電子音声。あれ? おかしいな。

 そこで解説ソフトの電源を確認する。なんだ、切れてるじゃねえか。


「こら、お前停止ボタン押したな今」


「うむ。あのなあ、人と歩いてる時に耳栓なんかするな、感じが悪い」


「いや耳栓じゃなくてこれはイヤホンって言った……ああいいや、分かったよ」


 俺は入国時にもらった小型のプレイヤーをポケットにしまった。

 ゼータポリスの歴史と基本的な施設、観光する際の見どころなどを解説してくれるソフトが内蔵されているのだが、

 まあいいや。概略は分かったしな。簡単に言うとここは人間とロボットが共存している国だ。人間のサポート役・兼重要な労働力として、国の維持大部分を担っているらしい。


 一通り街を見て回る。

 なるほどロボットの国だ。ゼータポリスに永住している人は一台以上必ず所持しているらしい。

 男の形したのやら女の形したのやら……よく見れば犬や猫の形のもあるな。


「建設作業やなんかも全部機械がやるのか……」


「高所の作業なんかうってつけってことだろう。うわぁ、大きいな」


 今まさに俺たちの何十倍もある大きな重機型ロボットが、これまた巨大な作りかけの建物を弄っているところであった。

 何本も生えて、それぞれ自立稼働するアーム。一つ一つ互いにぶつからないよう精妙に動いている。はえーすごい。

 俺たちは呆気にとられたように、しばらくぽかんと見つめていた。


***


「つーわけで、どうするかな。食事でもするか」


「もう昼だしな。そのあと備品を買いに行こう」


 やれやれ……もの珍しくてあっちを見回りこっちを見回りしてると腹が減ってきたぜ。

 しかし周りからすれば田舎もん丸出しだよなあ。まあ格好からして俺と如月は外来の人間とわかるんだけどさ。


 ということで店を探す。

 どこがいいんだろうかね。というか食べるところ……もあるよな当たり前だけど。

 俺はその辺の地元人っぽいおっさんに聞いてみる。なにやら傍のロボットに尋ねると……


『ああ、あっちがいいそうだよ。その路地を抜けて、正面にある店だ』


 とのこと。

 お説にしたがって歩いてみると、おおあった。ここか。

 なにやら大きな看板。食堂であろう。夜はバーにもなるとのこと。

 へぇ、いいじゃないか。というわけで俺たちは暖簾…じゃなくれ自動ドアをくぐった。

 如月も恐る恐るといった調子で足を踏み入れる。すると、…なんじゃこりゃ!? エレベーター……?

 ぐんぐん上昇しながら、如月は俺に尋ねた。


「おい、ど……どんどん上がっていくぞ。大丈夫なんだろうな」


「ほんとだ、すごいスピードだな」


 いわゆる高速エレベーターってやつだろうか。反対側から景色が見える。見る見る遠くなる地上。

 如月は下を見て、慌てて目を逸らした。おいおいこいつ高所恐怖症か…? 場所を変えたほうがよかっただろうか。

 

 チーン。


 そんな音がしてエレベーターが止まる。

 扉が開くと、落ち着いた空間に等間隔で並んだテーブルと机。へえ、あのおっさんが勧めただけある。観光客、旅人、様々な客で中はにぎやかだ。

 俺たちは給仕のロボットに通されるがままに、見晴らしの良い席に着いた。すご、かなり遠くまで一望できる。

 改めて見てみると、ゼータポリスってのは広いこともあるが、建物の個数が半端ではない。こうやって上から一望しているとさながら金属の林にようだ。

 多分土地が足りないから一個一個を高く作り、『立体的に』様々な区画を施しているんだろう。

 如月は窓ガラスを覗き込み、恐ろしそうに肩をすくめた。


「……高い。これ本当に大丈夫だろうな。ゆ、床が抜けたりしないだろうな」


 恐々(こわごわ)草履で床を踏みしめる如月。「だあいじょうぶだって。そんな杜撰な店があってたまるか」

 そんな会話を行っていると、さっきのロボットがメニューを運んできた。なになに……

 俺はメニュー表を開く。なになに、『無限ジェネレーター3パック』『ゼータ社特注燃料電池』『ディーゼル用軽油』。


「おい運転手、それロボット用って書いてるぞ。人間のは次のページだ」


「え? あ、ああほんとだ。なんだよ紛らわしいな。えーっと……」


 ハンバーグ定食 ライスカレー ステーキ 木の葉丼 ウィンナー炒め 親子丼


「ほうほう。次のページは……」


 海鮮丼 あんかけ炒飯 カツ丼 かに雑炊 牛丼 肉じゃが 煮込みハンバーグ ビーフシチュー ローストビーフ


「へぇ、品揃えいいんだな。おい如月そっちはどうだ?」


「うむ。和食もあるな」


 和風ハンバーグ 納豆 季節の魚の塩焼き かに玉 えびドリア カレーピラフ ロールキャベツ 牛卵丼 きのこリゾット 親子丼


「ふんふん」


 シーフードリゾット 赤飯 たこ飯 卵雑炊 チキンカレー 焼き飯 ちらし寿司


「………まだあるのか」


 ツナマヨ丼 鉄火丼 豆腐丼 野菜炒め トンカツ(ひれ)定食、トンカツ(ロース)定食 あさりの酒蒸し 鮎の唐揚げ エビチリ


「…………」


 ナスとひき肉の炒め物 カキフライ カレイの唐揚げ クラムチャウダー サケのホイル巻き あさりの味噌汁 オニオンスープ キャベツのクリーム煮 牛すじスープ 餃子 クリームシチュー けんちん汁 根菜のすまし汁 コーンポタージュ 季節の貝のスープ 中華風スープ トマトとなすのグラタン トマトとなすのカレー チキンドリア 鶏雑炊 ねぎとろ丼 バターライス ひつまぶし ピザ 豚丼 豚の生姜焼き ほうれん草のグラタン 舞茸丼 アボカドサラダ

まぐろステーキ丼 鯛の醤油漬け丼 あさりとバジルのパスタ たぬきうどん 堅焼きそば カルボナーラ きつねうどん サラダ 肉うどん 鮭の酒蒸し そば すき焼き カレーうどん 内藤の丸焼き スパゲティサラダ 坦々麺 ツナマヨパスタ シーフードナポリタン 冷やしたぬきうどん 冷やし中華 冷やし中華(大盛り) マカロニグラタン 麻婆麺 ミートソース 焼きうどん やきそば しょうゆラーメン つけ麺 麻婆茄子丼 焼きドリア ミートソースドリア 焼きおにぎり ライスバーガー レタス炒飯 鮭のホイル焼き さばの味噌煮 鶏の竜田揚げ つみれ汁 ぶりの照り焼き ぶり大根 ほたての甘辛煮 まぐろのカルパッチョ 餃子 酢豚 チーズハンバーグ とんかつ(ヒレかつ)単品 とんかつ(ロースかつ)単品 肉じゃが 肉団子の甘酢あんかけ 肉まん 豚キムチ丼 豚の角煮 マーボー春雨 ミルフィーユカツ 焼豚


「おい、こりゃなんかの間違いじゃないのか!」


 めくってもめくっても最後のページに行かない。さらに如月が続けた。


「まだまだあるぞ。寿司、若鶏の唐揚げ、コロッケ、」


「も、もういよもういい!! 目を通すだけで一日終わっちまう。ほ、ほんとにこれなんでも作れるのか……?」


 うっそだろおい。細かい文字でびっしり色々書いてるが、ほんとだとしたらこれ和洋折衷ほぼなんでも行けることになるぞ。

 ということで半信半疑で注文する。俺はハンバーグセット。如月は焼き魚定食に、納豆もオプションで付けた。

 ご注文承りました。しばらくお待ちください―――――ウェイトレス(のロボット)が下がる。俺はグラスの水に口をつけると、息を一つ吐いた。


「あ、そうだ。ソラさんにも軽食持ってってやろう。ここ持ち帰りとかできるのかな」


 お待たせしました――――さっきのロボットが戻ってくる。


「は? もうできたのか。1分も経っておらんではないか」


 そして、

 運ばれてきた品物を見て――――俺と如月はさらに仰天した。

読んでくださった方ありがとうございましたー!


※作中の料理名は

http://open.nuis.jp/masuno/public_html_1/recipeSearchForm.php

を参考にさせていただきました。

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