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その47 保安官ワイアット・アープ6

 わずかに顔を出してセーラとゴブリンを見る。

 どうやら敵……アープは彼女らを殺すつもりはないらしい。ただの殺人狂ではなく、明確な目的を持って殺しにくるタイプか。


 おそらくセーラたちは困惑していることだろう。

 ソラは自嘲気味に笑った。ただのアウトローである自分に、なぜ『喫煙所』が投入されるのか。


「……」


 いや、

 話はすべて終わってからだ。一度大きく息を吸い、吐き出す。ソラはホルスターに収めていた銀色のリボルバー拳銃『ランド』を引き抜いた。

 月光にその銃身が照らされ、淡く輝いた。『とある人物』によって魔改造されたそれは、銃身が8インチほどだ。そこいらの銃より長大であるにも関わらず、反動は非力なソラでも片手で抑えられるほどである。


 双銃『ボルトランド』。

 『雷神』『地神』─────その片割れのエムブレムがぎらりと光った。


「(……この角度なら……)」


 弾と地を蹴る。

 ちょうど反対側の建物に移ろうと彼女は走った。アープの前方を横切る形だ。


 その刹那───『ランド』が火を吹いた。撃鉄が立て続けに3度打ち鳴らされ、一瞬暗闇の中火花が散る。

 ちょうど月が黒雲に隠された瞬間であった。走りざまに撃たれる3撃の鋼鉄メタル。一発は下方向、一発は上方、

 そして最後の一発は斜め横。一見するとどこに撃っているのか、当たらないように見える。しかし……



 ─────『反射弾』



 一見明後日の方向に向かっていく弾丸。

 しかし壁に、地面に、ぶつかって折り返す。軌道が変わった弾丸は、まっすぐに『対象』に接近しようとしていた。

 狙いはその腕だ。『バントラインスペシャル』を持つ利き腕。


「跳弾か……」


 だが、

 アープはすでに銃をホルスターに収めていた。だらりと垂れ下がった腕。

 もしもソラの反射弾丸……すなわち明後日の方向に撃ったと勘違いして追撃しようとしていたら、今頃その手は使い物にならなくなっていただろう。


「(……読まれましたか……)」


 見切られたか。

 やはり、一筋縄ではいかない。刹那の思考の中、ソラは舌を巻いていた。

 精妙な跳弾。今までほとんど軌道を捉えられたことはない。にも関わらず、この男はこうも簡単に……

 だが、向こうは銃を収めている。ならば畳み掛けてこちらが攻撃すれば─────ソラは今度は正面から狙おうと、やはり対面の障害物に隠れるために走りながら、『ランド』の銃口を向ける。


 いや、


「……!!」


「こっちの番だ」


 『早撃ち(クイックドロウ)』。

 ソラが構えて撃つよりもさらに早く、『バントラインスペシャル』が火を吹いた。


***


「くっ……」


 ソラが四発目を撃とうとした瞬間である。

 やはり早い。普通にこちらが撃とうとしたのでは、間違いなくその上を取られる。

 彼女は狙いをつけかけていた『地神』の拳銃『ランド』を下げる。直後にそこを弾丸が飛来し─────ついで彼女は対面の障害物に隠れた。


「ヒェッ・・・」


「今掠ったぞ!」


 セーラとゴブリンはヒヤヒヤと観戦していた。

 バタバタと建物の陰に隠れたソラは姿勢低く態勢を立て直す。アープの放った弾丸が頬をかすめ、背筋に冷たいものが走った。

 やはり……あの早撃ちとは正面切ってとても戦えそうにない。動体に正確に合わせる技量も相まって、回避も何もあったものではないのだ。


「…………」


 ならば、

 ソラはため息をついた。

 仕方がない。正攻法────すなわち正面から打ち合ってとても勝てそうにないなら、変則的に攻めるしかない。

 すなわち、遠距離ではなく……『近距離』。


 使うか。

 ()()を。


 ソラはゆっくりとコートの内ポケットに手を入れる。

 彼女の左手は『雷神』のエムブレムが施された自動拳銃『ボルト』を掴んだ。

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