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いやちょっと、その。そこの河原で。

川でタイが釣れた。めでたいな。


「おねーちゃんつまんない」


ごめんなさいねつまんなくて。それでもタイが釣れたんだからめでたいくらい言っとけ。タイに失礼だぞ。

つか、モノローグにツッコミ入れんのやめてね。結構焦ったし。


「しかしまぁ見事なタイだな。どっからどう見てもタイだ」

「ねー これ食べていいのー?」

「どーだろ?」


僕だって食べたいのは山々だ。

あ。食べタイ。(笑)


「……おねーちゃん」

「皆まで言うな」


だから心読むなっての。

しかし、川で釣れたタイを食べるってねぇ。

見たところバリバリ新鮮なイキのいいタイだし、別にいいか。海の漁師さんがここに捨ててったんだろ多分。

害は無い、はず。


「んじゃ、とりあえず丸焼きだな」

「えー! おさしみがいいー!」


僕だって刺身のが食いてーケド、包丁とか持ってないし。そもそも魚下ろせないし。


「贅沢言いなさんな。丸焼きだって案外イケるもんだよくるみさん。ほら、油もたっぷりのってそうだし」

「やーっ! おさしみー!」

「あー! わかったわかった、わかりましたよ。ここらの魚屋にタダで下ろして貰えるか聞いてやっから、それで勘弁してくださいよ」

「ほんと!? えへへ、ありがとおねーちゃん!」


あぁ。僕って甘いなぁ。

つーかあんなかわいく怒るとか反則だろ、かわいい妹恐るべし。


そんなこんなでイキのいいタイを連れて魚屋へ行くことに。




あのー このタイ、タダで下ろしちゃ貰えませんかね?


タダかぃ? どうしよっかねぇ。それよりお兄さん? こんなイキのいい鯛一体どこで?


いやちょっと、その。そこの河原で。


は?(笑)



という馬鹿けた交渉の末、なんとか刺身にして貰いましたよ。

しかも醤油まで頂いちゃって、いやはやありがたいことですな。


できるだけ新鮮なうちに食べてしまおうと、河原に駆け足で戻ってきた僕達はさっそく刺身をいただくことに。


「「いただきまーす!」」


二人揃って手を合わせる。

あぁ、ようやく朝食にありつける。なんだかんだでもう夕飯時だけどさ。


「えへへっ、おいしーね」

「だなー 刺身でよかったなー」


随分遅くなったけど、くるみさんの笑顔が見れたからいいや。ありがとう河原のヌシ、ありがとう魚屋さん。

今日という一日はあんた等のおかげで乗り切れそうだよ。



「あとは寝るとこさえあれば、完璧なんだがなぁ」

「確かに。4月とはいえ夜は少し冷えますからねー」


そうなんだよ。夏ならまだしも、この季節に布団無しで寝んのは健康上よろしくねーし。

毛布とかウチに残ってねーかな。あ、でもウチに帰ったら確実に怖いオッチャン達と顔を合わせそうだな。


「あっちゃー こうなりゃマッチでも買って焚き火すっかなぁ。とりあえずあったかくなるし」

「わ、いいですね焚き火! キャンプみたいで楽しそうです!」

「だろ? くるみも喜ぶと思ってさ。あったかくて妹の笑顔も見れて、まさに一石二鳥ってわけよ」

「へぇー 妹さん想いの、優しいお兄さんなんですね」


ハハッ、よせやい。照れんじゃねーか。


「あー おねーちゃんはなのしたのびてるー」

「あ。ホントですね。照れてるんですかお兄さん?」

「ててて照れてなんかねーし!」


別に優しいお兄さんって言われて照れたんじゃないんだからねっ!

ってナニ言わすねん。


「つーかさ」

「はい? どうかしましたお兄さん?」


いやいやどうしたもなにも。僕もう限界なんだよね。

そろそろツッコミ入れてもいい? なんでさりげなく夕飯に紛れ込んでんだお前、ってさ。


タイが釣れましたね!? どうなってんのあの河原!?

と思われた方、すみません。そこはコメディーということでひとつ。

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