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ファーストキスを奪われたことになるのか!?

咲の唇と衝突事故を起こした約数秒後。

僕は彼女の家から全力で逃げてきました。


いや、うん。その先の展開を期待してた皆さんごめんなさい。

なんかいろいろと混乱していたもので。今思えば勿体無いことをした、と思っています。


まぁぶっちゃけ、あそこで咲の意識が覚醒していたらもっと大変なことになりかねんからな。早めの退散は良い選択だと思う。



そんなこんなで河原に戻ってくると、朝食の準備をしていた田中さんが出迎えてくれた。


「あ。おかえりなさい真鍋さん、こんな朝からどこ行ってたんですか?」

「たっ! 田中さん!」

「え? えっと、はい?」


未だに混乱はしていたが、とにかく聞きたいことをたずねてみる。


「頬にキスされたのって、ファーストキスを奪われたことになるのか!?」

「頬……キスですか!?」


そりゃ驚くわな。

無理もない、キスほど田中さんを刺激するワードはないし。


「い、いきなりとんでもない質問しますね。えっと、ほっぺたはセーフじゃないでしょうか?」

「頬はセーフか! よ、よかった。まぁ衝突事故だったし、確実にセーフだよな」

「あの。真鍋さん誰かにキスされたんですか?」

「え?」

「いえ、そのっ。急に頬ちゅーなんて……」


あ。これはロマンチストスイッチ入ったか?

と思いきや、田中さんの表情はいつもの興味津々といったものではなかった。


むしろその逆で、なんだか物悲しそうな。


「もしかしてどこかで逢引きでもしてたんですか? あっ、すみません。でしゃばったことを聞いて」

「あ、逢引き?」

「ほっぺにちゅーまでされたんですよね? 相手は、えっと。サラさんですか?」

「サラァッ!?」


おいおいおい! んなわけあるかっ、誰があんな野蛮人と!

サラダさんとキスしたら、僕の唇なんて綺麗に噛み千切られるわ!


「違うって! そもそも逢引きすらしてないし!」

「でも、ほっぺに……」


慌てて誤解を解こうとするが、どうも風向きが悪い。

どうして田中さんは暗くなった? キスの話題なんて、いつもなら喜んで食いつくものを。


仕方ない。ここは田中さんの喜びそうな話題を出してみるか。


「あのな? なんか勘違いしてるみたいだが、頬ちゅーの件に大した理由はないんだ」

「で、でも」

「実はさっき、タチの悪い寝惚け女に頬を奪われてな」


この場合の『頬を奪われる』は、唇を奪うとかそういった意味合いである。


「僕のファーストキスは田中さんに捧げるつもりだったから、ちと心配になって。だからあんな質問をしたんだ。ごめんな、へんなこと聞いて」

「そ、そんなことが……って! え!?」

「ん? どしたん?」

「ファッ、ファーストキスをわたしに捧げるって!?」


暗い表情は消えたが、代わりにロマンチストスイッチが入ってしまう。


「悪い。今のなしで」

「できませんよ! わたし聞いちゃいました!」

「忘れてください」

「む、無理です! うぅ、このタイミングで言うことじゃないですよ。そんな大事なこと」


いや。あの台詞は冗談で言ったんだけどね?

まぁいいか、田中さんの機嫌もよくなったし。


「まぁそういうことだから、逢引とかそーゆーのじゃないんだ。だから……ん?」

「ファーストキス、かぁ。えへへ」

「あ、あの田中さん? 話聞いてるか?」

「キスのシチュエーションといえばやっぱり、放課後の教室が理想です。いやでも、夕暮れの河原も捨てがたいですよねー」


いかん! なんか一人で暴走し始めている!


「おーい、田中さーん?」

「でも相手が真鍋さんとなると、やっぱりわたしがリードしなくちゃだめでしょうか?」

「知るか!」

「わたしはリードされたいタイプなんですよね、実は。だからなんか複雑です」

「複雑? ……って、それ僕が女々しいって言いたいんだな!?」

「えへへっ」


否定しなかったよこの子!?


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