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ニュアンスがカッコいい。

皆さん大変です。咲さんに見捨てられました。

『達者でね』って台詞、あれ冗談と思ってたのにマジで帰りやがったんですよ。


「っは! まさか昨日逃げたこと根にもってたんか!?」


絶対そうだ! それで見捨てたに違いない!

はぁ。こりゃ放課後謝り行くしかねーな、咲を怒らせたままにしとくのは怖い。


「ま、それはそれとして……」


今の問題はこの手紙である。


僕友達少ないし、他人から怨まれることしてないしなぁ。

まぁここでシカトして殺されんのもアレだし、仕方ない。行くか。



「あのー 誰か居ますかー?」


体育館裏にやってきた僕は恐る恐る訊ねる。

べ、別にビビってないから! これは警戒してるだけだし! 警戒って言うのは野生の本能だから、ビビってんのとはわけが違うし!


「だ、誰もいないなら僕帰りますけどー?」


もう一度訊ねてみるが返事をする者はいない。

よかった、やっぱタダの悪戯か。あー、怖かった。


「さて、バナナでも買って帰るか……」

「ごめんなさい! 遅れました!」

「……は? うおぉっ! ビビった!」


安堵しながらきびすを返すと、目の前で女の子が頭を下げていた。


「びっ、ビビったとはしつれいな!? こっちも急いで来たのに!」


そうでしたか、すんません。っていやいやいや。


「まさかお前が手紙の?」

「その通り! あたしがその手紙を書いた橘葵!」



 橘葵(たちばな あおい)

 一度も喋ったことは無かったが、確かそんな名前の生徒が同じクラスにいた気がする。

 茶髪でミディアムウルフのちっこくて騒がしいクラスのマスコットキャラ。それが橘葵である。



「手紙の文章がアレだったからもっと冷酷無情なヤツ想像してた」


なんというか拍子抜けである。


「冷酷無情ってどんな意味なの?」

「え? わかんねぇの?(笑)」

「わ、わかるよ!? 怖くてカッコいい人のことでしょ!?」


「冷酷無情のどこにカッコいい要素があんだよ」

「ニュアンスがカッコいい」


ニュアンスが!?


「ってそんなことよりあんたに話があるの! 聞いてよ!」

「あ、あぁ」

「ずばり衝撃の事実を打ち明けるけど驚かないでね!?」

「はぁ」

「あたしは田中美晴さんが好きなの!」

「はぁ……ハァ!?」

「尊敬的な意味で!」


それを先に言え!


「あたしはそんな美晴さんと仲良くなれるチャンスをずっとずっと狙ってたの! だけど美晴さん休み時間はいっつも一人でいるし、お昼も一人で食べてるし、話しかけられなくて」

「一人でぼーっとしてたら絶好のチャンスだろ? なんで話しかけねーの?」

「あんたは知らないと思うけど美晴さんがボーっとしてるときってなんかこぉ、神聖というか?」


というか? って疑問形で言われても。

まぁ確かに。あの美少女田中さんが物思いに耽ってる姿は神聖と言えなくもない。


「神聖な田中さんに話しかける勇気が出ません、ってことか」

「そう! そこを踏まえて、あんたにお願いあるの!」

「なんだよ?」

「ずばり、あたしと友達になってください!」

「……ドユコト?」


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