どうせなら料理の出来る女って思われたいしね。
『早乙女家。~今日の朝ごはん~』
「さーて! はりきって作りますか!」
いや! 春が来てるからはりきって作るんじゃないのよ!? 違うからね!?
「って誰に言い訳してるんだろ? まぁいいか」
どうせ春も食べるんだろうし、どうせなら料理の出来る女って思われたいしね。
いや、別に家庭的な女だと思わせるためじゃなくて! ただ料理も出来ない女、って思われたくないだけよ!
「だから誰に言い訳してるんだあたしは!?」
まぁいい。それはさておき、早速作りますか。
食材は買ったばかりだし。大丈夫、ぬかりはないわ。
「よし! せっかくだからこのステーキを焼こう!」
……っていやいやいや! なに気合入れてんのよあたしは!?
朝からステーキとかバカじゃないの!? 少し冷静にならなきゃ。
「あんまり凝った料理だと、春のこと意識してるって思われそうだし。ここは簡単なモノにしよう」
とりあえずお湯でも沸かそう。
咲の部屋にて。
「世間話、ですか?」
「そう! 世間話! 私だってたまには生徒と楽しくお喋りしたいの!」
「は、はぁ」
ちなみにこの人は僕の通う『曇底高校』の理事長でもある。
貧乏な真鍋家に対して、ほんの少し学費を免除してくれたりといろいろお世話になっているのだ。
「咲からあまりいい話は聞いてないけど、まだクラスに馴染めてないのよね?」
なんだ咲のヤツ、由紀さんに話してたのか。まぁいいけど。
「馴染めてないことは別に気にしてないんですけどね。友達なら咲がいますし」
「そっかー なんか釈然としないけど、私がとやかく言うことでもないわね。それじゃ別の話にしましょう」
べ、別の話って言われても。なんか話すことあるかな。
「うふふ。聞いたわよ? ボロアポート追い出されたんだってね?」
「ちょ! なんで知ってるんですか!?」
「実は今朝、私宛に手紙が届いたの。『娘二人を頼みます』ってね」
『娘二人』? なめてんのかあのババァ。
「春君のお母さんね、前から借金のことで悩んでたの。私がお金を貸そうかって言っても『私は夫を信じてるから』って聞き入れなくて、それでずるずる借金だけ増えていって……」
「なんですか、それ」
ロンドンで骨埋めたとーちゃんを信じた挙句、結局逃げてんじゃねーか。
しかも子供に借金まで押し付けて、しかもその子供まで他人に押し付けて。
「バカだろ、ウチの親」
「春君。気持ちはわかるけど、私はあなたたちを押し付けられたなんて思ってない。だから、春君さえ良ければ、くるみちゃんと春君の面倒は私が……」
「由紀さん!」
そんなこと出来るわけ無い。
今までだって早乙女家にはお世話になってきた。学費の免除だけじゃない、それ以外にも早乙女家には本当にお世話になっている。
そんな早乙女家に、借金背負って転がり込めだって?
そんな迷惑なこと出来るわけ無い。
なにより一番の理由は。そこまで早乙女家に甘える自分があまりにも惨めすぎる。
「僕は大丈夫ですから」
「春君、あのね……」
自分が、惨めすぎる。
「でも」
そんな自分勝手な理由で、くるみにひもじい思いをさせるわけにはいかない。
だから僕は、
「くるみのこと、お願いしてもいいですか?」
そう言って頭を下げた。




