いくら腕力が人間離れしていようが、相手がバカなら勝算はある。
河原から逃げ出したはいいものの、僕に行く宛てなど無かった。
仕方ないので近くの商店街までやってきたのですが。
さーて、これからどうすっか。とりあえずその辺ぶらぶらして、っていやいやいや。
どうすんだよ。田中さんとくるみ置いてきちゃったよ。
「ほっとくわけにはいかねーよな」
あの凶暴女に襲われたら彼女達はひとたまりもないだろう。
やばいなぁ。早くなんとかしないと。
しかし今戻ったところで僕が負けることは確定している。
「あー どうすりゃいいんだ」
そうだ作戦を練ろう。
どう考えても相手はバカだ。いくら腕力が人間離れしていようが、相手がバカなら勝算はある。
かの戦国武将も言っていた。
『まともではない人間の相手をまともにすることはない』と。(by伊達公)
あのネーチャンがまともでないことは確実。
そこで僕のほうも思考レベルを極限まで下げ、まともでなくなれば! なにか勝算が見えてくるかもしれない!
そうですよね伊達さん!
「おっしゃあ! 今から僕はまともじゃなくなるぞおおおおおおお!」
「うわ。なにやってんの春?」
「え?」
しまった。後ろに誰かいたらしい。
って当たり前か、ここ商店街だし。そう思いながら振り返る。
「あぁ。なんだ咲か」
「なんだ、ってどういう意味?」
「いや反射的に」
「そう、まぁいいわ。というか、こんなところでどうしたの?」
声をかけてきたのは同じクラスの早乙女咲。
容姿端麗、頭脳明晰、まさに才色兼備。おまけに家はボンボンという完璧お嬢様だ。
明るめの髪をラフな二つ結びにして、片手には買い物袋をぶら下げている。その姿はどう見ても庶民的だが、彼女は正真正銘お嬢様である。
僕と咲、お互いの母親が古くからの親友同士ということで、僕達も昔から良く遊んだりする仲、言うなれば幼馴染と言うやつだ。
恐らくクラスで孤立している僕にとって、咲は唯一友達と言える仲だろう。
「河原で決闘する羽目になったから、逃げてきた」
「……アンタの休日に何が起こったのよ」
「知らん。気付いたらそうなってた」
「はぁ?」
おいおいなんですかそのバカを見るような目は。
言っとくが嘘じゃないぞ。ホントに気付いたら戦う事になってたんだ。
「だからその決闘で勝つ方法探してんの。アンダスタン?」
「意味不明ね」
「あぁ。僕もよくわかってない」
なによそれ、と額に手を当て唸る咲。
「ま、話はわかったわ。それじゃコレ持って」
「は? うおぉっ」
唐突に買い物袋を持たされる。
お、重っ! なんですかいきなり!?
「じゃあ行きましょ。続きは家で聞いてあげるから」
「はぁ!? 何言ってんの!?」
「いいじゃないケチね。それ持ってくれたら、あたしも決闘に勝つ方法考えてあげるわよ」
「いやいやいや! 意味わかんねーし!」
「さー! 行くわよー!」
話し聞けよ!?




