勇者の冒険
内伝!
これは、何となく魔王討伐に行く《勇者》の物語である。
《勇者》は家から出た。穏やかな光に包まれている。
「よし。行こう」
そう言い、《勇者》が1歩踏み出すと、何か足元に違和感があるのを感じた。
ドゴッ!
なかなか鈍い音が周りに響き渡る。
「うわ!」
《勇者》は落とし穴に落ちた。さっき、自分で掘った物だ。
「俺、馬鹿~」
そう言っている自分が余計に馬鹿に思える。
こんな調子だが、《勇者》の旅は始まっていくのであった。
穴から抜け出した《勇者》は、今森の中にいた。森の中は、すごく暗く薄気味悪いが、魔物のいる気配はなかった。
「木がいっぱいあって薄気味悪い森だな~」
《勇者》は何となく腰にある剣に触れた。
「……そうだ。この剣の切れ味を試してみよう」
《勇者》は剣を抜いた。
剣を見て、ヤバイことに気付いてしまった。……錆びていた……。
「あっ、これ、ずっと外に出しっぱなしでめちゃくちゃ錆びちゃった奴……」
《勇者》は息が少し止まった。
「……あ~! 何で俺様は錆びた剣なんか持ってきたんだー。僕の馬鹿~!」
かなり絶望的な空気だった。
「これ……切れ味良いのかな?」
《勇者》は近くにあった木に剣を振った。
ポキンッ!
剣は高い金属音を響かせ、真っ二つに折れた。
「……やっぱり……捨てよう」
《勇者》は剣を森の奥の方へ投げ捨てた。
それから、しばらく歩き続けると、いきなり周りがパッと明るくなり、森をぬけたことを教えてくれた。
「森ぬけた」
その先には町があった。
「早く剣を買わないと」
《勇者》はそう言い、町へと向かっていった。
町に入ると、結構小さい町だということに気づいた。小さいながらも、武器屋などのいろんな店が立ち並んでいた。そんな町の入口に立っている《勇者》だったが、武器屋を見つけると、一目散に駆けて行った。
「剣ください」
《勇者》は元気良く、武器屋のおじさんに言う。素直にお金を払い、《勇者》は剣を買った。
その後の事だった。
《勇者》が金袋を見て、またしても、すごいことに気付いてしまった……1銭もなかった……。
「あ~! 何で、俺様はこれだけしかお金を持ってこなかったんだ~!」
またしても、絶望的な空気。
「……はっ! そうだ。魔物を倒してお金集めれば良いんだ」
《勇者》は右手を振り上げた。
「それじゃあ、初の魔物狩りも兼ねて、金集めにレッツゴー!」
こうして、《勇者》は初の魔物狩りに出かけに行くのであった。
《勇者》は広大な平原に着いた。
すごく広い平原だったが、あちこちに魔物らしき姿が見える。強そうな魔物はあまりいないようだった。自分にも簡単、と興奮が高まってきた。
《勇者》はそこら辺にいた《魔物》と戦闘を始めた。
「いきなり、俺の必殺技を見せてやる!」
《魔物》は少し戦いた。
「ウルトラスーパーデラックス・アルティメットロイヤルストレート……」
《魔物》は、あきれて逃げていってしまった。
「……勇者斬! って、あれ? 逃げられた。……ふっ、俺が恐くて逃げだしたか」
(ウソだけど……)
《勇者》はもう1度、《魔物》と戦闘を始めた。今度はよく考えた。
「省略して……勇者斬!」
《勇者》は勇者斬を使った。
剣を思いっきり振った。
ズバッ!
《魔物》は真二つに斬れた。
「ピー!」
《魔物》は倒れた。
「グロテスク……」
ちょっと吐き気がした。
「まぁ、良いか。お金は……いっ! 1金! も、もっと倒さないと」
《勇者》は再度、魔物狩りに出かけて行った。
数日後――
《勇者》は「悪魔神」と化していた。
「397,398,399……はぁ、はぁ、はぁ」
豪快な1振りで魔物を斬った。
「ん~。よんひゃぁく! はぁ、……400匹達成! 最強だ!」
《勇者》はかなり調子に乗っていた。そのせいで、我を忘れていた。
「俺様に勝てる自信のある奴は出て来い! ぶっとばしてやる!」
後方から声が聞こえた。
「そこまで自信があるのなら、わしが相手になってやろう」
《勇者》は振り向いた。
「だ、誰だ! お前は。うわっ!」
まぶしい光が目に飛び込んでくる。
耳には、周りの《魔物》たちの歓声が聞こえてくる。相当な奴だとは見なくとも、見当はついた。
「ま、まさか……」
咄嗟に持っていた魔物図鑑を開き、ページをペラペラと捲った。
「お前は最後の方に載っていた……《黄金の魔物》! ……何故、お前がこんな場所に」
《黄金の魔物》は笑いだした。
「ホッホッホ。わしは上級者でもなかなかお目はかかれないが、ちょうどここを通りかかったら、君が叫んでいたからのぅ。ちと、殺ってやろうと思ってな」
「じょ、上等だ……。お、俺様が負ける訳ないからな」
「では、始めよう」
《黄金の魔物》はずっと笑っている。《勇者》はその顔を見ると、だんだん怒りが込み上げてきた。
戦闘開始!
「修行の成果~! 超勇者斬!」
《勇者》は超勇者斬を使った。
《黄金の魔物》は微笑んでいる。
ポキンッ!
剣は折れた。
(!)
「えっ!?」
《勇者》は折れた剣をじっと眺めた。確かに折れている。
「お、俺の剣が……どうしよう」
少し考えた。
(……はっ!)
《勇者》は近くにあった石を思いっきり投げつけた。
ポコッ!
石は《黄金の魔物》に当たったが、《黄金の魔物》には傷1つ付いていない。
「おぬし、弱いのぅ……究極呪文――」
「あっ、ちょっと――」
「ライディン!」
《黄金の魔物》はライディンを使った。
ライディンは《勇者》に直撃した。
「んぎゃ~!」
《勇者》は、やられてしまった。
「勇者よ。また会おう」
そう言葉を残すと、《黄金の魔物》はどこかへ行ってしまった。
――《勇者》は目覚めた。
「う、う~ん。ん? こ、ここは……?」
「あっ、気が付いた? 良かった~」
(?)
目の前には、《少女》がいた。
どうやら、この《少女》に助けられた様だ。
「で、ここは……」
《少女》は外を向いた。
「決まってるじゃない。私の家。外には海があるの。すごく綺麗な」
「……あっ、もう僕……」
そう言って、外へ出ようとすると、《少女》がこちらを向いてつぶやいた。
「あっ、まだ怪我が完全に――」
「も、もう大丈夫だよ。……あ、痛たたた……」
「だから言ったのに」
《少女》がそっと寄ってくる。《勇者》は少し緊張感に包まれた様に感じた。
「しょうがない。しばらく泊めさせてもらおう」
それから、《勇者》と《少女》は数日を一緒に過ごした。
ある時、《勇者》は気になっていたことを聞いてみた。
「《少女》は1人暮らしなの?」
《少女》の顔色が曇った。
「えぇ……。お父さんもお母さんも……魔王に手下に……」
《少女》は目に1滴の涙を浮かべていた。
「大丈夫。僕、こう見えても。(何となく)魔王を倒すために旅をしてるんだ。魔王を倒して、お父さんとお母さんを助けてきてあげるよ」
「本当?」
「本当」
《勇者》の一言で《少女》の顔に笑みが戻った。
「……あっ、ちょっと待ってて。《アレ》持ってくるから」
(アレ?)
数分後――
《少女》は何か布に包まれた物を持ってきた。
(?)
「それ、何?」
「でんせつのつるぎよ」
(!)
「え~。でっ、でっ、で、でんせつのつるぎ~! 何でこんな場所に」
《少女》は、ニコッと笑った。
「うちの家宝なの。勇者が来たら、渡せって言われてたの」
《勇者》は“でんせつのつるぎ”を受け取った。
「いろいろありがとう」
装備してみた。
「カッコいい……」
《勇者》は感動していた。
「……じゃあ、私、外見てくるわね――」
そう言い、《少女》は外へと出ていった。
「……」
沈黙が続いた。
「きゃ~! 助けて~!」
《少女》の声が聞こえた。
無言の空気の中の叫びはさすがに《勇者》も驚いた。叫び声を聞きつけ、《勇者》は外へ出た。
「今日から~ここは~この~《豚の魔物》様の物だ~。人間は~さっさと~消えろ~」
なかなか妙な口調の魔物だ。
「お嬢ちゃん。そこを~どいて~くれないかな~? この家を壊したいんだけど~」
《少女》は手を広げ、立ちふさがっている。
「嫌よ。ここは私の家。絶対にどかない」
《豚の魔物》は斧を振り上げた。
「じゃあ~殺っちゃおっかな~」
《少女》が動かないのを見て、斧を振り下ろした。
「きゃ~!」
《少女》は座り込んだ。
(危ない!)
「やめろー!」
キィン!
でんせつのつるぎと斧がぶつかり合い、辺りに激しい金属音が鳴り響いた。
「おぉ……」
《豚の魔物》はバランスを崩した。
「続いて……必殺超勇者斬2!」
《勇者》は超勇者斬2を使った。
グサッ!
「グワッ!」
《豚の魔物》はその場に倒れ、いずれ逝った。
《勇者》は《少女》に近づいていった。《少女》の顔が恐怖心でいっぱいになっていた。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫よ」
《少女》は、ゆっくりと立ち上がった。
「やっぱり、でんせつのつるぎはすごいや」
「…………」
次の日――
「うぅ、ふぁ~。よく寝た。《少女》おはよう」
《勇者》は大きなあくびをしながら言った。
「《勇者》。おはよう」
《少女》もあくびをしながら言う。
「……《勇者》話したいことがあるから。外に来て」
(話したいこと? 話したいことって……もしかして……いや、それはないはず……)
《勇者》は外へ出た。
「《少女》話したいことって何?」
「実は……」《少女》は怪しげに言った。
「実は……?」
《勇者》には、疑問符が付いた。
「言い忘れてたけど、実はその剣――」
剣と聞き、《勇者》は少し安心した。
「――本物のでんせつのつるぎじゃないの……」
「えっ! どういうこと?」
「それは、でんせつのつるぎの素なの……」
「素?」
「これを龍の里にいる龍神様に、覚醒してもらうの。言ってなくてごめんなさい」
《少女》は申し訳なさそうな表情を浮かべた。それをかばうかのように《勇者》は言った。
「良いよ。その、龍の里にこれを持っていくだけで良いんだね」
「うん……」
《少女》は小さくうなずいた。
「じゃあ、行ってくる」
「あっ、ちょっと待って……」
「何?」
《勇者》は立ち止まった。
《少女》が近づいてくる。
「昨日はありがとう」
《勇者》は「まさか」と思ったが、思いは的中した。
ちゅっ!
やられてしまった……。《勇者》キスされてしまったのだ。
(!!!)
驚きのあまり、《勇者》は声が出なかった。
「魔王。絶対に倒してきてね。応援してるわ」
「はいっ! 行って参ります!」
(愛しのハニー……)
旅を再開した《勇者》。目指すは、龍の里。
目的地に向かい、《勇者》は旅を再開したのであった。
《勇者》が歩いていると、何か困っている様に見える《老人》を見つけた。
「どうしたんですか?」
《勇者》は声をかけてみた。
「おぉ、旅のお方か。ちと、頼みがあるのじゃが……あの洞窟にいる魔物を倒してきてくれんか?」
「あっ、良いですよ」
《勇者》は、すんなりと答えた。
「おぉ、やってくれるか」
《勇者》は《老人》から依頼を受けた。
そして、洞窟へ向かっていった。
――《勇者》が帰ってきた。
「ドシタんじゃ?」
《勇者》の顔は怒っていた。それを見た《老人》は何が何だか、というような顔を浮かべた。
「てめぇ! あんなの討伐できる訳ねぇだろ! あんな○△♀@※#?☆♂!%πな奴!」
「で――」
「倒せてない! さようなら!」
《勇者》は《老人》と別れた。
《勇者》は龍の里に着いていた。
「着いたっ!」
辺りを見渡す。
「え~っと。《龍神》様は……」
目の前に異様なほど、御立派な建物があった。《勇者》は《龍神》様はそこにいると確信した。そこへ向かうほど、わくわくしてきた。
(龍神様ってどんな姿だろう)
中に入ると、いきなり兵士に止められた。
「君! 《龍神》様に何の用だ!」
「剣の覚醒に来ました」
冷静に答える。まだ、信じない様なので、剣を見せ、事情を話した。
「……まぁ、良いだろう」
「はい」
しばらく進み、階段を上ると、《龍神》の間に着いた。
「あれ? 《龍神》様は?」
「よくぞ来た。剣と覚醒石を表に出せ」
真上から声が聞こえた。天井は暗い闇に包まれていて、姿は見えない。
(見えない……)
「覚醒石?」
また、声が響いてくる。
「まさか、覚醒石を持っていないというのか?」
「覚醒石って?」
「名の通り、剣を覚醒させるための石だ」
「その……覚醒石はどこにあるんですか?」
「そこに窓から見えるであろう。東の洞窟だ」
思わぬことに気付いた。
(……さっき行った洞窟~!)
「行ってきます」
「うむ……」
結局、《龍神》様の姿が見えなかった……。
《勇者》はさっき行った洞窟の中で起きたことを思い返していた。また思い出すと、何とも情けない出来事だった。
「ふぅ、最深部着いた」
《老人》が言っていた魔物。
それは、まさに、あいつだった。
「また客か……」
そいつは、《豚の魔物》にそっくりだった。
「あっ! お前、前に倒した……《豚の魔物》に似てる」
《豚の魔物?》は目を丸くしてこちらを向いた。
「何!? 兄貴を倒しただと!」
「えっ! 弟さん!?」
「ぶっとばしてやる!」
《豚の魔物・弟》はいきなり攻撃してきた。
《勇者》はうまく避けた。
《豚の魔物・弟》は斧が地面に刺さってしまっている。
「チャンスだ! 必殺超勇者斬2!」
《勇者》は超勇者斬2を使った。
《豚の魔物・弟》は、ニヤリと笑って言った。
「ふっ、かかったな! 食らえ!アタックカウンター!」
《豚の魔物・弟》はアタックカウンターの構えになった。
(!)
キィン!
《勇者》は弾き返された。
「えっ!」
「はっはっは! この技は、物理攻撃を跳ね返すんだよ!」
「え~! じゃあ、どうすれば……良いんだ……」
「そういうことだ。たっぷり遊ばせてくれよ」
「えっ――ちょっと――」
――ということがあったのだ。
「どうしよう。また、洞窟行ったってなぁ」
《勇者》は考え始めた。
目の前に温泉があるのに、気づかなかった。《勇者》は思いっきり壁におでこをぶつけた。
ゴツッ!
「痛~!」
《勇者》は顔を上げた。
ちょっと立ち止まった。
「……よし。温泉に浸かって対策を考えよう」
《勇者》は温泉に入った。結構小さい温泉であった。
《勇者》はとりあえず、入った。
「……で、どうしよう……遠距離攻撃でも……呪文でも覚えられればな~」
温泉で疲れを落とし、安らぎの時間が過ぎてゆく。
――結局。対策は思いつかなかった……。
温泉から出た《勇者》は服を着替えようとしていた。
と、その時だった。
籠から服を取り出そうとすると、ふと、隣の籠が目に留まった。
隣の籠には、『ライディンの書』と書かれた巻物を見つけた。
(ライディン……)
「これだー!」
《勇者》は思わず、声を上げた。まさに今欲しいものが目の前にあるとは。《勇者》は感激して巻物を手に取った。
《勇者》は、ライディンの巻物を盗んだ?
「よ~し。早速修行だ!」
《勇者》は服を着替え、猛スピードで温泉を出ていった。
巻物を開けた。見ると、巻物には、こう記されていた。
其の一 まず、瞑想を行い、自分に秘められた潜在能力みたいなものを引き出す。というか高める。
其の二 高まったところで、強く念じる。
其の三 ライディンと唱える。
「ふぅ~ん。まずは瞑想か」
《勇者》は瞑想を始めた。
1時間後――
《勇者》は寝ていた……。
「……はっ! 寝ちゃってた。でも、少し高まったような……もっと頑張ろう」
数時間後――
やっぱり寝ていた……。
「はっ! また寝ちゃってた」
こんなことを繰り返し、数日が過ぎた。
「凄い……体に力が漲ってくる……様な気がする。
続いて、《勇者》は念じ始めた。
「むんむんむん。ん? ん!」
ブリッ!
「あっ! ああああああああああ~! ○○○が漏れたー!」
禁断用語までもが漏れた。《勇者》はトイレに行った。
「……スッキリした~(喜)」
《勇者》は、もう1度念じ始めた。
「むんむんむん。ん? ん!……ん! 今だ!」
《勇者》は叫んだ。
「ライディン?」
《勇者》はライディン?を唱えた。
ポッ!
線香花火ほどの小さな電気が起きた。
「弱! ……唱え方がダメだったのかな?」
《勇者》は構えた。
「ライディン↓」
「ライディン↑」
「ライディン……」
「ライディン――」
「くそー! 今度こそ!」
「ライディン!」
《勇者》はライディンを唱えた。
あの時体験したものと同じ。激しい雷が巻き起こった。
目の前にあった岩はこっぱみじんに砕け散った。
「やった! 出来たぜ!」
その後――
《老人》に依頼を受けに行った。
「おっ! また来てくれたか。では、頼んだぞ」
もう誰かがやってしまったか心配だったが、何とか依頼を受けることができた。
最深部――
「《豚の魔物・弟》覚悟!」
「ん?」
「ライディン!」
《勇者》はライディンを唱えた。
「えっ、うぎゃ~!」
「倒した」
《豚の魔物・弟》の奥には、覚醒石が置いてあった。なかなか御立派な台の上に置いてあった。
《勇者》は覚醒石を手に取った。
何か不思議な力が体に伝わってくる。
「すごい……」
覚醒石を手に入れた。
《勇者》は外へ出た。
《老人》は、自分が持って帰ってくるのを分かっているかのように洞窟の前で待っていた。
「《老人》。倒して来たぜ。ついでに覚醒石も持ってきたけどな。まぁ《老人》には、覚醒石は関係ないけど」
《老人》は目を見開いて言った。
「ほぇ? わしの目的は覚醒石じゃけど?」
「は?」
「お前さんが倒してくれた後に取りに行こうと思ったのじゃが。持ってきてくれたなら……」
「えっ!? 何で覚醒石を?」
「そりゃ、剣の覚醒じゃろ?」
《勇者》は驚きのあまり、沈黙していた。
「ほれ、これが剣じゃ」
《老人》は剣を出した。
「あっ、僕と同じ剣」
「はいっ? まさか、お前さん。《少女》に会ったのか?」
「はい」
《勇者》は軽くうなずいた。それを見ると、《老人》はいきなり笑い出した。
「ほっほっほ。《少女》の奴、わしが本物の剣を持ち出しとることも知らずに、かっかっか……偽物の剣を渡してしまったのか。馬鹿な孫じゃ」
「孫?」
「おっ、説明を忘れておった。わしは《少女》の祖父じゃ」
「え~! そうだったの~」
(っていうか、孫のことを馬鹿ってどんな祖父だ)
《老人》の笑いが止まった。
「で、覚醒石が欲しいんじゃろ? それはやろう。わしはどうせ覚醒させても、まき割にしか使わんからのぅ」
「あ、ありがとうございます」
「頑張って来いよ」
「はい」
《龍神》の間――
「戻ったか」
《龍神》様の声が聞こえる。姿はいまだに見えない。
「これより、つるぎの覚醒を始める」
『グギャガェホグガァー!』
激しい雄叫びが響いた。
次の瞬間、《龍神》様が姿を露にした。
(カッコいい……)
深緑の鱗を身にまとっていた。体中からは堂々とした気迫が感じられ、とても強そうに見える。
「うむ~……。はー!」
ドカーン!
剣に雷が落ちた。
ピカ……
「つ、つるぎが光ってる」
唖然としている《勇者》を見て《龍神》様は言った。
「覚醒完了だ」
でんせつのつるぎは
伝説の剣になった。
「《龍神》……いや、《龍神》様。ありがとうございます」
「うむ……」
《勇者》は伝説の剣を受け取った。
「《龍神》様。行って参ります」
と言い、外へ出ようとした《勇者》は《龍神》様に呼び止められた。
「待て、これを持って行け。おまけだ」
「何ですか?」
「卵だ」
「たまご? 何の卵ですか?」
「予想はできておるだろう」
《勇者》は何となく頭の中に出てきた物を言った。
「……ドラゴンですか?」
「うむ……」
《龍神》様はコクッとうなずいた。どうやら正解だったようだ。
「だが、普通のドラゴンではない。私の様に人間と会話のできるドラゴンだ。大切に育ててくれ。まぁ、《魔王》との闘いでは砕けないと思うが……まぁ、よい」
「は、はい」
《勇者》はドラゴンの卵を手に入れた。
《勇者》は外へ出た。
「やった~。卵もらっちゃった。早く産まれないかな~?」
《勇者》は龍の里から出た。
「勇者」が歩いていると、不思議なほこらを見つけた。
「何だろう?」
「また、会ったのぅ」
正直ゾクッとした。《勇者》は後ろを振り向いた。
なんと、そこには……《黄金の魔物》がいた。
「あっ! お前」
「久々、肩がこってのぅ。ちと、やってくれんか?」
この言葉の意味はすぐに理解できた。闘おう、という意味なのだろう。《勇者》もその気になった。
「良いだろう。今なら勝てる気がするぜ」
「ほっ、良い調子じゃ」
戦闘開始!
《勇者》は踏み出した。
「伝説の剣に力を見ろ!」
剣を振り上げながら、叫んだ。
「必殺……勇者斬・神!」
《黄金の魔物》は相変わらず、笑っている。
キィィィン!
当たった。直撃。
……《黄金の魔物》は吹っ飛んでいった。
「今のは、効いたぞ」
《黄金の魔物》はいつもとは違う苦笑を浮かべて、立ち上がった。
「なかなかやるな」
《勇者》も驚いた。
「なら、これはどうだ! 究極呪文――ライディン!」
《勇者》はライディンを唱えた。
「それはわしには効かぬぞ!」
《黄金の魔物》は手を広げ、ライディンを受け止めた。
ライディンは消えた。
《勇者》は、口をポカンとあけて突っ立っていた。
「な……っ」
「ふっ、自分の呪文が自分に効くと思うか? ……ところで、この呪文、どこで覚えた?」
「温泉に巻物が置いてあってそれに書いてあった」《勇者》は剣を下ろし、答えた。
すると、《黄金の魔物》はゲラゲラと笑いだした。
「ほっほっほ。そういうことか。まさかなぁ」
「何だ」
「それはわしがわざと置いていったんじゃ。誰が拾うか試してみたが、まさか……」
「そういうことか」
《勇者》も納得した。
《黄金の魔物》は笑い終わったかと思うと、いきなり目つきを変え、こちらを向いた。
「そろそろ、反撃に出ようか」
《勇者》は構えた。
(何をするんだ?)
「受けてみよ! 聖なる槍!」
《黄金の魔物》は背中から、光り輝く槍を取り出した。
(!)
「ホイッと」
槍が飛んできた。
《勇者》は瞬時に避けた。
「危なかった」
ホッと溜息をついた。
《黄金の魔物》のほうを向くと、またしても笑っていた。
「何だ!?」
「ふっ、甘いぞ。後ろを見てみぃ」
《勇者》は後ろを振り向いた。
なんと、槍は戻ってきていた。
「わしが操っているのじゃ」
「なっ!」
《勇者》は、いきなりの出来事に足が動かなかった。
(避けきれない!)
足を1歩後ろに踏み出した、その時――
足元に違和感があるのを感じた。
「えっ!?」
ドゴッ!
《勇者》は穴に落ちた……。
槍は、そのまま《黄金の魔物》の方へ進んでゆく。
「なにぃ!?」
《黄金の魔物》は気づきが遅れ、槍が手に刺さった。
《勇者》は穴から出た。
「わしの負けじゃ」
「ん?」
訳が分からなかった。
とりあえず、勝ったことしか分からなかった。
(あんな所に落とし穴があったとは……)
「運も実力のうち。運での勝ちじゃが、わしの負けじゃ。槍はやろう」
「えっ、何で槍を?」
「知らんのか? 魔王の城には、結界が張ってあるんじゃ。結界を破るためにはこの聖なる槍が必要なんじゃ」
「そうだったんだ。……何で、こんなに教えてくれるんだ。お前、魔物だろ」
《黄金の魔物》は後ろを向いた。
「何でかのぅ。支配された世界は嫌いじゃからかのぅ。別に人間も嫌いではないしのぅ。強いヤツもよくおる」
「……」
「じゃあのぅ」
そう言うと、《黄金の魔物》はどこかへ行ってしまった。
「……あっ! 行かなくちゃ」
魔王の城――
確かに、魔王の城には、結界が張ってあった。
《勇者》はそこに、聖なる槍を投げた。すると、結界は見る見るうちに消えていった。
「よし。これで中に入れる」
そう言って、《勇者》は中へと入った。
「お邪魔しま~す。魔王をぶっ飛ばしに来ました」
中には、邪悪なオーラが渦巻いていた。
「変な感じ」
《魔物の兵士》たちがこちらに気付いた。
「皆、かかれ~!」
「雑魚どもに構ってる暇はないんだよ!」
《勇者》は、どんどん魔物たちを倒して進んでいった。
魔王の間――
ここにも、相当な邪悪なオーラが漂っていた。
「《魔王》! 倒しに来てやったぜ! 感謝しろ!」
「ふん。よくぞ来た。分かっていると思う我が名は《魔王》」
「かかって来い」
戦闘開始!
「いきなり終わらせてやるぜ! 究極呪文ライディン!」
《勇者》はライディンを唱えた。
「では、こちらも――究極呪文ドーム!」
《魔王》はドームを唱えた。
2つの呪文はぶつかり合った。
ズドーン!
2つがぶつかり合った反動で砂埃が巻き起こった。
砂埃が立ち昇る。《勇者》はその中に身を隠した。
「ど、どこだ!」
「ここだー!」
《勇者》が姿を現した。
「何!?」
「必殺勇者斬・神!」
《勇者》は勇者斬・神を使った。
グサッ!
「ぐっ、こうなったら――城ごと吹き飛ばしてくれる」
「何!?」
「究極破滅呪文――」
「させるかー!」
「G・THE・END!」
《魔王》はG・THE・ENDを使った。
(……)
ドカーン!
「んぎゃ~! 失敗したー!」
《魔王》は自爆した。
(?)
「自爆した……。《少女》のお父さんとお母さんたちを助けて帰ろう……」
《勇者》は外へ出た。(もちろん、助けて)
《勇者》は大きなため息を吐いた。
「僕のおかげなのかな? ……うん。そう、たぶん、そうだ」
《勇者》が1歩踏み出すと、足元に違和感があるのに気付いた。
「えっ、まさか――」
ドゴッ!
《勇者》は落とし穴に落ちた。
こうして、《勇者》の活躍?により世界に平和が戻った。
完――
――続く
なんと、ついさっき卵が孵った。
卵からは、確かにドラゴンが生まれた。
白銀の鱗に包まれていて、瞳は青色をしていた。
《勇者》は《小さき龍》に肉を与えていた。
「パプパプゥ……」
まだ、《小さき龍》はあまり話せない様子だった。
「あっ、食べた。よしよし」
《勇者》が頭をなでると、《小さき龍》も可愛げに声を出す。
「パプゥワ~」
《小さき龍》は眠りについた。
「僕も寝よう」
こうして、《勇者》は穏やかな日々を過ごした。
ある日、《勇者》が散歩をしていると、謎の洞窟を見つけた。
「こんな所に洞窟なんてあったっけ?」
とりあえず、《勇者》は洞窟の中に入ってみた。(《小さき龍》は家で寝ている)
先に進むと、階段があった。《勇者》は階段を下りた。
階段の下は凄い暑さだった。周りがマグマに囲まれている。
奥に何かいる……。
《勇者》が近づいて行って見てみると、それは仁王立ちをした石像だった。
「何だ? これ」
《勇者》がそう言った、次の瞬間――
「我が眠りを妨げるのは誰だ?」
「うわっ! 動いた」
「我が名は《地の帝王》」
(《地の帝王》?)
「お前は我を滅ぼしに来たというのか?」
《勇者》は咄嗟に答えた。
「は、はい」
「そうか……」
そういうと、《地の帝王》はいきなり襲いかかってきた。
「うわっ! いきなり!?」
《勇者》は、ひらりと避けた。
「反撃だ。勇者斬・神!」
《勇者》は勇者斬・神を使った。
グサッ!
「よし!」
「その程度か……」
「えっ!?」
(えっ!?)
《勇者》は《地の帝王》から離れた。
「ではこちらも――究極呪文エクスプロージョン!」
《地の帝王》はエクスを唱えた。
ドカーン!
「うわぁ!」
(つ、強すぎる……)
《勇者》は立ち上がった。
その時――
「おっ、《地の帝王》発見」
誰かの声が聞こえてきた。
「誰だ?」
「森羅……万象斬!」
《誰か》は森羅万象斬を使った。
ズドーン!
「ぬぅ……」
《地の帝王》は、大ダメージを受けた。
(誰だ?)
「大丈夫か? 君。って《勇者》じゃないか。大きくなったなぁ」
「えっ! も、もしかして……お、お父さん! 今までどこに――」
「話はあとだ。まずは、こいつの討伐だ」
《地の帝王》が、起き上がった。怒り狂っているように見える。
「よくも~! 究極剣技エクスソード!」
《地の帝王》はエクスソードを使った。
「《勇者》少し下がっていろ。……超究極覇王剣技モンスターインパクト!」
《父》のモンスターインパクト。
2つの技がぶつかり合う。
(どうなるんだ……?)
砂煙で何も見えない。
――姿が見えた。
《父》の姿。
それだけだった。
(勝った!)
「よっしゃー! 倒したぜ!」
《勇者》と《父》は外へ出た。
「で、どこ行ってたの?」
「えっ、あぁ、お父さんの職業、魔物狩り者だからな。いろいろと仕事があってちょっとな……1人で寂しかっただろ。すまなかったな」
「じゃあ、これから一緒に暮らせるの?」
「いや、それは無理」
「えっ、何故?」
「また仕事が入ったからな。一緒に居られるのは明日だけだ」
(ちっ!)
《勇者》は心の中で舌打ちをしていた。《父》と明日しか過ごせないことが寂しさと怒りを生んだ。
そして、《勇者》は1日だけ《父》と過ごした。できるだけ怒っていない振りをして《勇者》は、あることをしておいた。
翌日――
「じゃあ、行ってくる」
《父》が見えなくなりそうな場所で、《父》の足元が崩れた。
「うわっ!」
《父》は落とし穴に落ちた。
「よいしょ」
《勇者》は手元にあったボタンを押した。
ドッキャーン!
落とし穴の中で大爆発が巻き起こった。もちろん、中にいた《父》も……。(現実なら逝っています)
「ぎゃー!」
《父》の悲鳴が聞こえる。
「ふっ、ざまあみろ」
《勇者》は立ち上がって言った。
「よし。《少女》に告白しよう」
《少女》の家に着いた。
ドアを開けながら言った。
「《少女》初めて会った時から君のことが好きだったんだ。付き合ってください」
「気持ち悪いわー! G・THE・END!」
《少女》?はG・THE・ENDを使った。
ドカーン!
「うぎゃー!」
「何で《少女》がG・THE・ENDを~?」
「ぐはははは。私は《魔王》だからな。あっ、ヤバい」
「あれ? 《魔王》って自爆したはずじゃ……」
「あれは私の分身だ」
「じゃあ、《少女》は……」
「旅行中だ。そのうちに変身していたのだ」
「じゃあ、もう1回倒してやる」
「G・THE・END!」
《魔王》のG・THE・END。
真面に食らい、《勇者》は倒されてしまった。《魔王》は近づいていき、《勇者》の胸に手を当てた。
「まだ生きているか。だが、生かしておいてやろう」
そう言い残すと、《魔王》は姿を一瞬にして姿を消してしまった。
「《勇者》ねぇ、《勇者》大丈夫?」
《勇者》は声に気付居、起き上がった。目の前には、《少女》がいた」
「良かった。死んじゃったのかと思っちゃった」
(《少女》? あっ、これは夢なんだ。《少女》は旅行に行っているはずだし……夢なら良いか……)
「《少女》君に会った時からずっと好きだったんだ。付き合ってください」
「はい! よろしくお願いします」
(!? 成立!?)
《勇者》は自分の頬をつねってみた。
「痛い! ということは……」
「これは現実だ~!」
(俺僕最強! 人生最高! I am happy! I love you! フュービュァー! うぃ~みょぉみょみょみょ……ドロップキック! ヤッホー! ギャラグォゲェヲ! (珍!?))
「よろしくお願いします」
《勇者》は気になっていたことを聞いてみた。
「それで、何でここに?」
「家が心配で帰ってきたの」
こうして、《勇者》のプロポーズは意外な形で成功した?のである。
《勇者》は1つ、気になっていることがあった。《魔王》のことだ。《魔王》は生きていた。しかし、どこに姿を隠しているのかは分からない。《魔王》を倒さない限り、世界に平和は訪れない。
「よし。探しに行こう」
まず《勇者》が向かったのは、元《魔王》の城。今は廃墟みたいになっている。
《勇者》は中を探した。
――中にはいなかった。
「一体、どこにいるんだ?」
《勇者》が周りを見渡すと、遠方に洞窟があるのを発見した。
「あの洞窟が怪しい……」
そう言い、洞窟に向かって歩き出した。洞窟に向かっていくにつれて、邪悪な力が伝わってくる。
(やっぱり、ここにいる)
謎の洞窟――
中に入ると、いきなり、大きな扉があった。
《勇者》はその扉を押し開き、中へと入った。
「《魔王》いるのは、分かってるんだぞ! 覚悟~!」
「えっ! 《勇者》!? この俺が恐ろしい病にかかっているという時に……ゴホッ! ゴホッ! ゴ――ガッ……」
《魔王》は逝った。
「《魔王》死んだ……」
《勇者》は家に帰った。
大きなため息を吐いて言う。
「僕、後半から全然活躍しなかったな~。……ガクッ……」
こうして、《魔王》は病気により、死亡し、世界に平和が戻ったのであった。
《勇者》は1歩踏み出すと、足元に違和感があるのを感じた。
ドゴォッ!
《勇者》は落とし穴に落ちた。
真・完!
外伝!
※外伝は、完結後、という設定になっております。
《勇者》は暇であった。
ふと、起き上がる。
「よし。世界の果てに行ってみよう」
そう言うと、《勇者》は外へ出た。
いつも以上に穏やかな光に包まれている。
「……ん~。でも、端って言ってもいろいろあるしなぁ」
ふと、《勇者》は落ちていた木の棒を手に持った。
「これで……」
木の棒を倒した。
木の棒は北を向いた。
「よし。北だ。最北端」
《勇者》は歩き出した。
歩くところ知っているところもあれば、知らないところも通った。
ぐんぐん突き進んだ果てに《勇者》は、ついにたどり着いた。
最北端の地――
そこは何もない凍てついた土地だった。ただ、何もない1面の荒野。草木は全く生えておらず、まさに死の世界だった。
先には、崖があり、その向こうには海が広がっていた。
「何にも無いじゃないか」
彼方まで広がる海を《勇者》は、しばらく見ていたが、飽きて帰ろうとした。
その時――
「ふっふっふ……」
崖の方から声が聞こえた。
(!)
あまりの驚きであった。さっきまで誰もいなかったはずなのにその後ろに人がいるなんて。
《勇者》は後ろを向いた。
そこにいたのは、肌が真っ白な白人の男性だった。
「だ、誰?」
「僕? 僕は、ん~。何だろう?……簡単に言ったら……《神》かな」
(か、神!)
「何故、神が……」
「君を血祭りにあげてみたい」
《神》の顔は笑っていた。
(今、何て言った!?)
「良いだろう。血祭りにできるもんならやってみろ」
「ふっふっふ」
《神》はまだ笑っている。
戦闘開始!
「勇者斬・神2!」
《勇者》は勇者斬・神2を使った。
ビジィィーン!
「な、何!? バリア!?」
《勇者》は弾き返された。
「面白いね」
《神》は笑っている。
「ちっ、いつまで笑ってやがる」
《黄金の魔物》よりも彼の笑いには腹が立った。
「今のが全開だと思うなよ」
「もっと面白いことをしてくれるんだね」
《勇者》は構えた。
「超必殺……究極勇者斬!」
《勇者》は究極勇者斬を使った。
ビィィーン! ……バリンッ!
《神》のバリアは破れた。
「よし!」
《勇者》はガッツポーズをした。
「……君は本当に面白い……」
こちらを向いた《神》の顔は笑ってはいなかった。
「ふっ、ようやく笑いが止まったか。《神》」
「君の血祭りは決まっている」
《神》は、また笑い始めた。そして、手を振り上げ、言った。
「無……」
(?)
「何だ?」
「空を見てごらん」
《勇者》は上を見上げた。
――数十万個の黒い彗星。地上に降り注がれる彗星の光。
「な、何をした!?」
「世界はもうすぐ終わる……この黒き彗星が世界を闇に包んでいくんだ。そして、君も……」
「何だと!?」
「じゃあね」
そう言うと、《神》の姿はだんだん薄れていき、最後にはすべて消えてなくなってしまった。
次の瞬間、《勇者》の真上が暗くなったかと思うと、彗星に押しつぶされた。
《勇者》は目が覚めた。
どうやら、自分の部屋のようだ。
(はぁ、夢か~)
《勇者》は、ホッと溜息をついた。
『血祭り成功……』
耳元で声が聞こえた……様な気がした。
「……気のせいか……」
こうして、《勇者》の心に永遠に刻まれるであろう、体験は終わったのであった




