久原で十分
「おいおい!なんで久原じゃねーんだ?おまえ誰だ?」
尚樹が結城に尋ねる。
「………久しぶりの試合だね!懐かしー。………止めてみろよ俺を。三上尚樹!」
「えらそーに」
川田がボールを持つ。
しっかりと川田を譲二がマークする。
「久原は1年!2年よりは上手いけど、それでも足手まとい。けど、昌兵は上手いぜ!」
川田そう言うとパスを結城に送る。
「いっくよー」
(いちいちうるせーやろーだな)
だが尚樹の目に入ったのは、結城がボールを持ちしゃべった瞬間フッと消えたことだけだった。
一瞬にしてゴールを奪っていた。
「遅いね!君。久原で十分なわけだ!」
カーっと赤くなり尚樹は怒りに燃える。
「おい!どうしたんだよ。おまえがあっさりと抜かれるなんて。」
「……消えたんだよやつが。」
「あ?んなわけねーだろ…っておい!」
譲二に一言といった後すでに尚樹はコートの奥に走っていた。
「くそが!なにやってんだ。」
譲二が怒りを震わせるが三浦が止める。
「仕方ないよ。彼は早かった。カバーもできなかったし、」
三浦は何か言いかけたが途中で止め、譲二にパスを渡し走り出す。
「話してるなよ!」
川田の声にはっとする譲二。
「もうさっきのロールターンはやられない!」
譲二はロールターンのまぐれのやつ以外川田を抜けていない。
だが斜めに宇野が立っている。
スクリーンプレーだ!(相手のコースに立ち邪魔をしぬくテクニック)
「スクリーンか!」
抜いた瞬間そのままシュートに行こうとしたが、デリックなどに阻まれる。
「っ尚樹!」
とっさにシュートからパスに切り替えた。
「ナイパス!」
(なっ久原ならもう抜けていたのに!?)
目の前には結城が立っていた。
「君とあの沖田君との連携は読んでるよ」
尚樹は斜め後ろにとび、結城をかわしシュートを放った。
「!フェイダウンウェイ?逃げるなよ!尚樹」
譲二はとっさに叫んだ。
シュートは惜しくも外れ、リバウンドは競ったもののデリックが押さえ、宗孝が悔しがっている。
(なんで逃げた!俺が、かわすよりあたるのが俺だろう?くそ!悔しい!あいつの気迫にびびって逃げちまったよ!くそやろう!)
「尚樹!戻れ!ディフェンスだ!」
譲二の叫び声で我に返りディフェンスに戻る尚樹。
「いいテクニックだね、後ろに飛ぶなんて」
クスッと笑う結城。
むきになりかけた瞬間尚樹は結城のマークをはずしてしまった。
「しまった。宇野!スクリーンだ!」
ここで吉武のマークが外れた。
かかさず川田がパスを送る。
シュパッときれいな音がした。
「わりー」
(しまった!また結城にやられた。これで4点差か。)
「くそ!今度わやられねー!」
勢い良く尚樹は叫ぶが結城は膝に手をついていた。
(昌兵!1年もやってなかったんだ。無理するな。)
その後結城はなんも攻撃をしてこなく、4点差のまま残り1分。
だがディフェンスは完璧にこなし、まったく攻められない尚樹であった。