まぐれだとしても
体育館のベンチ。
椅子に座ってる小林が、さっき津堂さんのつぶやきの事で質問した。
「ロールの風?なんだそりゃ?」
津堂さんは振り返り、まるで子供のようにワクワクした顔つきで言った。
「ロールの風って言うのはな、まぁ、俺達が呼んでいた名称なんだが、俺がJBLでプレーしていた時に、同じロールターンを使う奴がいるんだ!中学生でそれを使うなんて,まぐれだとしてもすごい!」
そう言う津堂さんに今度は桜庭が眉間にしわを寄せ質問する。
「まぐれだとしても?まぐれなのにすごいのか?てーか、ジャービーアルって何?」
「JBLだ!正確にはバスケットボール日本リーグ機構の事なんだが、今の日本のトップのバスケット選手がいるとこだぞ」
納得した顔の二人。
コートの中では.
川田峻を抜いた譲二がドリブルで中央に走る。
「おおおぉおぉっっっしぃ!譲二!来い!」
尚樹が4分の1の所で高高と手を上げボールよこせとサインを送る。
中央のあたりから、譲二が胸のあたりで力をため、一気に腕を伸ばし、一直線の尚樹にボールが当たり、尚樹が取った瞬間。体育館にボールと手が当たった音が激しくなった。
「喰らえ久原ぁ!!」
尚樹が勢いよく突っ込む振りをして、横にボールを流す。
するとマジックのように走りこんできた譲二のところにボールが行く。
あせって譲二にマークに行く久原。
その瞬間尚樹もタ−ンをしてゴールへ走る。
だが譲二はキャッチする前にはじいて尚樹にボールが行くが、相手のデリックが叩き落そうとする。
宗孝は疲れと、デリックに負けたショックで動かない。
「チビがぁ!俺の高さに勝てるか?!」
「うっせー黙ってろ!」
だがボールをキャッチに行く尚樹は確かにデリックに負けていた。
「叩き落されちゃうよぉ!」
観客席にいた藤崎がつい大声を出す。
(叩き落される?はっ!ばかな、こいつのあきらめないジャンプは、絶対負けない!さぁ!見せろ!俺を越えて勝ったあの力を!)
「ばかな!こんなに高いなんてありえない!何m飛んでるんだ!?」
デリックも驚きを隠せなく叫ぶ。
空中で尚樹の手はデリックの手と頭を越えリングに向かい,手からボールが離れる。
デリックを越えたボールはふわっとリングに落ちていった。
「おおおおお!!入った!すげエーぞ尚樹!」
桜庭が興奮して叫ぶ。いや、会場全体がわめく。
「キャー−−−!!すごいよ!すごい!」
女バスも叫ぶ。
「すげー1年だってよ全員!」
「ああ!まるでマイケル.ジョーダンとマジック.ジョンソンだったぜ!!」
観客も叫ぶ。
「津堂さん!あいつらが言ってたのだれだれ?JBLって言うヤツの選手?」
思わず身を乗り出し質問する小林。
「いや、NBAだ。ナショナルバスケットアソシエーションの略で,アメリカのリーグだ。そこの選手で,マジック.ジョンソンは華麗なノールックパスで観客をわかせ、マイケル.ジョーダンは神様と言われ,そのジャンプ力は、フリースローラインからダンクを決めたって言う。」
「へーすげぇんだな。」
ビー−−−−!!!
第2クォーター終了。