夜
会いたい人、いますか
話したい人、いますか
触れたい人、いますか
それは、
自分の命が消える時も
同じ人ですか?
──その夜
熱は、それほど高くはなかったが、体のだるさがひどく、夜7時にはもう布団の中だった。
それから急に、顔の熱っぽさが酷くなってきた感じがする。
…こういう時こそ、いい夢が見れますように
意識が、少しずつ遠くなっていく。
下に落ちていくような感覚だった。
──夢を見ていた
にやにや笑っている男の人
横になっている女の子
整頓された部屋
ハサミで髪が切られて
振り向く男の人
ニヤニヤニヤニヤ
その男の人から逃げる
逃げる
逃げる
髪を掴まれる
───目が覚めた。
辺りは暗かった。
喉が乾いていた。
枕元のヤカンから、水を一口飲む。
それからは、夢のことが気になって眠れなかった。
体のだるさを感じながら、暗い部屋で、天井をずっと見ていた。
……?
鉛筆が床に落ちて、こちらに転がってきた。
体が、何故か動かなかった為、首だけ横に向けると、枕元に誰かが座っていた。
……ママ?じゃないの?
「だれ?」
見上げると、よく知った顔が悲しそうに、こちらを見ていた。
綺麗な髪が、ザクザクに切られていた。
「ことみちゃんなの?」
少女は黙って頷いた。
すると、少女の頭が、体から離れて、私の顔へ落ちてきた。
「痛あああっ」
少女は慌てて、自分の頭を拾い上げ、体につけた。
「ことみちゃん!今の、わざとでしょ!」
少女は、再び頷く。
「ぐっ」
テレビで見たサッカー選手のように、ヘディングシュート?をしようとして、更に痛い目にあった。
少女が、頭を体に戻すのを見ながら、
「ことみちゃん、家に帰ったんじゃ…」
少女は、首を横に振った。
その勢いで、部屋の端まで、少女の頭が転がっていく。
…もう、いいよ。ことみちゃん。
頭のない少女は、手を私の額に優しく当てた。
冷たい手が心地よかった。
……冷たい?
気がつくと、少女の姿は消えていた。
辺りは明るくなり、朝になっていた。
風邪も治っていた。
布団から出て、床に落ちていた鉛筆を、机の上の缶の入れ物に戻す。
その缶の隣に、赤い物が置いてあった。
ことみちゃんのチョコレートだった。