思い
あのね
へやのまどをあけて
6じになると
したのみちを
おじさんがとおるの
かっこよくないけど
やさしそうなおじさん
おはなししてみたいな
でも
ママにはないしょだよ
しらないひととおはなししちゃいけませんって
おこられるから
その後は朝まで、少女がいた、部屋の奥、窓のそばの所を、じっと見ていた。
…泣いていたよな
理由が無ければ、私の目の前で、そうする必要はない。
…また、会えるだろうか
会社に行く時間になっても、私は同じ所に座ったまま、動かなかった。
時間の感覚を失ってしまったかのようだった。
いつの間にか、昼になり夕方になり、夜になり部屋が暗くなって、ようやく一日が過ぎたことに気付き、のっそり立ち上がった。
台所でコップに水を汲み、飲もうとしたが少し考えて、そのコップを部屋の奥、窓のそばに置いて、私は再び同じ所に座り直した。
暗い静かな部屋で、じっとしたまま数時間が過ぎていく。今日も眠れそうにない。
…会社、また休むかな
──それから、一週間が過ぎた。
毎日鳴っていた、会社からと思われる電話も来なくなった。
私は、一日のほとんどを、同じ所に座って、ぼんやりと同じ所を見ているだけだった。
あれ以来、少女を見ていない。
……。
更に、二日が過ぎた。
食欲は無い。
意識が、日に日に遠くなっていくのを感じていた。
そして、夜の続きのような、暗い朝を迎える。
その日は、朝から雨が降っていた。
………。
いつものように、一日が過ぎていく。
──夕方になったのにも気づかず、ぐったり座っていると、誰かに右肩を軽く叩かれた。
「どうも。ドアに鍵が掛かっていなかったので、勝手に入りましたよ。」
「……?」
「自分、覚えてますよね?ほら、自転車で転んだ時……」
「……!」
「思い出してくれましたね。実は、お願いが有りまして…」
「……?」
「コレを預かってほしいんです…」
「……?」
私の隣に、幅・高さが50cm位の、段ボールの箱が置かれた。
「じゃあ、お願いしますね。」
「……?」
段ボールの箱に気を取られているうちに、あの男性は帰ってしまっていた。
箱からは、何か変な臭いがしていた。
また誰かが、部屋の中に入ってこないよう、ドアに鍵をかけにいった。
だが、鍵は締まったままで、床の埃には、私の足跡しかなかった。