帰宅
ぼろアパートに帰ってきた。
着ていた物を、下着のみ残して全て脱ぎ捨て、足で部屋の隅に移動させる。
テレビの電源をつけ、カップヌードルを、周りのゴミ山から掘り出してきて、沸かしたお湯を入れた。
そして、いつもの定位置に座ると、三分待てずに寝てしまっていた。
──ぼとっ
何かの音に、目が覚める。いつの間にか眠っていたらしい。
……ん?
部屋の時計を見ると、帰ってきてから三時間が過ぎようとしている。
テレビも、ニュース番組になっていた。
《今、入ってきたニュースです。自転車をひいて歩いていた男性が、急に道路に飛び出し、車に接触。病院に運ばれ…》
何の音か確認しようとフラフラ立ち上がる。
《目撃していた人の話では、何かに驚いて急…》
…おっと
少しバランスを崩し、床に転がっていたリモコンを踏むと、テレビの電源がオフになった。
…痛ててて
半分寝ている脳ミソの記憶をたどりながら、音のした辺りへフラフラ歩いていく。
…トイレだったかな?
トイレの電気をつけ、ドアをゆっくり開いた。
…臭っ
特に変わった所は無いようだった。
ドアを閉め、電気を消す。
すると、部屋の電気全てが消えた。
真っ暗で、片付けされていない私の部屋では、一歩踏み出すのも危険だった。
…あれ、停電かな?
トイレのスイッチをカチカチ動かしてみたが、やはり電気はつかなかった。
──ぼとっ
また、あの音がする。
暗さに目が慣れてくると、部屋の奥、向こうをむいて、窓のそばに誰かが正座しているのが見えた。
…あの時の少女?
正座している少女は、床に落ちた左腕を拾い上げ体に付けた。
──ぼとっ
今度は右腕が落ち、左手で拾う。
──ぼとっ、ぼとっ
両腕が落ちた。少女は困って、助けを求めるかのように、ゆっくりとコチラを振り向いていく。
………。
少女の頭が真後ろを向き、私と目が合った時、その少女の姿を、窓からの月の光が照らした。
少女は、泣いていた。
部屋が、急に明るくなった。停電?が直ったのだろうか。
一瞬、少女から目を離し、天井の明かりを見てしまう。
次に元の場所を見た時には、もう少女は消えていた。