手紙
きみへ
かみよ
しばし
たてば
きえる
こんな
もろさ
わずか
ここに
きばつ
きみと
あのひ
えんが
きみで
うれい
いつも
きみを
眠れない部屋の美女
──次の朝
押し入れの戸を開けると、いつもと変わらない部屋の光景に、テーブル上の皿にのった封筒の、赤い色が目立っていた。
………。
きのう、開封しようとして様々な手段を試し失敗した結果、油まみれになってしまった手紙である。
手触りは普通の紙なのだが、煮ても焼いても蒸しても揚げても、焦げ目や醤油ジミひとつ付かないのだ。
勿論、ハサミやカッター等でも歯が立たなかった。
結局、手紙を皿の上に置いて昨日は寝てしまったのだが、その手紙の事を思い出していると、急に腹が減ってきた。
…コンビニ、行くか
押し入れから出て、柔らかくなったTシャツを着る。そして、残り1つとなった熊さんの、アップリケが付いたジーンズを履いて、部屋中の小銭をかき集めると、弁当を買いに出掛けていった。
──誰もいない部屋で
トイレのドアがゆっくりと開いていく。
その中から、半透明の不機嫌そうな男が出て来た。
あの、自転車の男だった。
「全く、あの死神は鬱陶しいよな。依頼より1人多いってガミガミうるさいよな、全く。」
男は、テーブルの上、皿にのせられた封筒を見つけた。
「ああ、コレか。全く、面倒だよな。¨処分してこい¨なんてさ、全く。自分でやれよな、全く。」
男は、ブツブツ文句を言いながら手紙を手に取ると、クシャクシャに丸め飲み込んでしまった。
「さて、用事は済んだし銭湯でも行くかな。近道は…ええと」
男は台所まで行くと、排水口の中へ入っていった。
──暫くして
私は、コンビニから帰ってきた。
結局、弁当が高くて、¨おにぎり¨と¨アイス¨を1つずつしか買えなかった。
……仕方ないよな
部屋に入ると、後ろから声を掛けられた。
いつもの、不機嫌そうな顔をした大家だった。
「今月分の家賃、払って貰うよ。」
「あ、えっと…」
「あと、何だい?この粗大ゴミ、ちゃんと処分しなさいよ。…ほら、家賃払って」
「……。」
──最後のお金を、大家の手にのせた。
「はい、確かに。部屋は綺麗に使っておくれよ。」
「………。」
大家は最後に、テレビの残骸にひと蹴り入れると、部屋を出て行った。
その時、テレビの残骸の中から小さな物が、私の足元に転がってきた。
紫色の小さな、服のボタンの裏に安全ピンが付いた、バッチの様な物だった。