男
「ハハ、元気なお嬢さんだ。」
投げつけられたテレビが、黒い布の男を素通りし、後ろのドアに当たった。
「では、お邪魔しますよ皆さん。」
黒い布の男は、音もなく直立のまま、床を移動してきた。
歩いている、という感じはしなかった。
「改めまして、皆さん。私は死神です。」
少女2人に向かって、死神は話しを続ける。
「こんな所にいらしたのですね。迷子になったかと思って捜しましたよ。」
¨ことみさん¨は、表情を険しくして言い返した。
「本当の事を言ったらどうですか?」
「本当の事?」
「あなたは、死神より¨たち¨の悪いアレなんでしょ?」
「ハハ、想像は自由ですよ。…時間が無いので手短に話しますが、ココにもう直ぐ人が来ます。」
「それが、どうかしましたか?」
「ココに居られなくなりますよ。まあ、2人ともそれだけ腐敗が進めば、先は永くはないでしょうが…」
「………。」
「そこで、提案があります。」
「………。」
「あなた方2人を別の体で生き返らせる代わり、今のその体2つを私に譲って欲しいのです。」
「…取引ですか?」
「そうです。悪くない話でしょう?」
「…私達の体はどうなるのですか?」
「欲しがる者は、あの世この世に限らず沢山いますよ。どう使うのか分かりませんが…」
「……断ったら?」
「体が更に腐っても、この世にとどまり続けるでしょうね。そして、体が血肉を失い、動かせなくなった場所から魂が身動き出来なくなります。」
「地縛化?」
「あなた方2人、ココでそれを望むなら仕方ないですが、どうしますか?」
¨ことみさん¨は、のりこちゃんの顔を暫く見ていた。
彼女は、迷っているようだった。
死神は、私の方を向くと口を開いた。
「あなたは、席を外してくれませんか?…取引の妨げになっているようですからね。」
……?
死神の目から赤い血が流れ、床にその雫が落ちる。
すると、そこから黒い闇のような煙が吹き出し部屋に充満していった。
──暫くして、上に丸い形が見えてきた。
…太陽?
それが、段々眩しくなっていくのを静かに見ていた。
──突然、後ろから車のクラクションが鳴り、慌てて避けた。周りをみると、先ほど訪れたコンビニの前に立っていた。
裸足だった。
2人が気になって、走って帰った。
部屋に戻る途中、大家さんに見つかり、部屋を水浸しにした事をガミガミ怒られた。
「あんた、友達来てたんだろう?騒ぐんなら外でやんなさいよ。…あと、ペットは禁止だからね。」
「えっ?」
「苦情きて、部屋みさせて貰ったけど、何だい?あの臭いは。…ナニもいなかったけどさ、ちゃんと掃除してんだろうね?」
「………。」




