食(前)
──もしもし、警察ですか?
──○○アパートの○号室から、変な臭いがするんですよ。
──最近、そこに住んでいる人も様子が変だし…
──1回来てくださいよ
──ええ、ええ。そう…
台所を見ると、2人が楽しく会話をしながら料理をしていた。
こうして見ていると、仲のよい姉妹にみえる。
2人の邪魔にならないように後ろを通り、冷凍庫にアイスをしまった。
こちらに気付く様子もなく、話が盛り上がってるようなので、私は声を掛けずに、いつもの定位置に座った。
…昼まで2時間あるな
テレビを視ようとリモコンを探すが、周りを見回しても見つけられなかった。
仕方なく立ち上がり、テレビの所までいき、電源のスイッチを押す。
一瞬、少女2人の写真が画面に映ったと思ったが、テレビが壊れたのか画面が消えて暗くなり、中から煙が出て来た。
……!
せめて、あと1年は¨元気¨でいてほしい。
神経質な女性を相手に機嫌を取るように、テレビを宥めていた。
─暫くして、こちらの異変に気付いたのか¨ことみさん¨が話し掛けてきた。
「どうかしたのですか?」
「テレビが壊れたようだね。」
「叩いてみたりとか、しました?」
「いや…」
「昔、お爺ちゃんがバンバン叩いてましたし。…でも、逆に優しくする方がイイのかな?」
「……。」
「フフ。」
「……?」
¨ことみさん¨が、優しくテレビを撫でる。
一瞬、悲しそうな表情を見せた。
その隣で、いつの間にか¨のりこちゃん¨が、興味深そうにテレビを見ていた。
そして少しずつ、テレビに顔を近づけていた。
¨ことみさん¨は、いつもの表情で¨のりこちゃん¨を確認すると、テレビの上面を、指で軽く叩いた。
すると突然、テレビから炎が吹き上がった。
「フフフ。」
「「わあああああっ」」
「もう、ダメですね。」
「「み、みず!水!」」
「(わたしも、いずれ…)」
「「台所からも火がっ!?料理が燃えてるっ」」
「(…こうなるの?)」
「「消せっ!消せっ!」」
「………。」
「「わあああああっ」」
バケツ、鍋、コップ、フライパンなど、あらゆる方法で水をかけ、ようやく火を消すことができた。
途中、のりこちゃんが
「これで、どうだああ」
と叫びながら、手に掴んだ小麦粉を火元へ投げているのを見た時、彼女が残酷な天使にみえた。
そんな中、¨ことみさん¨は、頭にフライパンが当たろうが、バケツの水が掛かろうが、何の反応も見せず、ただ下を向いて立っているだけだった。