出会い
家へ帰る時、その道を通ったのは、少し遠回りになるが人通りが少なく静かな為だった。
私は、このような道を時々歩いていた。
雰囲気が好きだった。
…あれ?
こちらを見ている、一人の少女がいた。
寂しそうに電柱に寄りかかり、大きな黒い瞳は何かを訴えたい様子だった。
少し気になって、私は話しかけてみることにした。
「どうかしたの?」
少女は、ただ首を振るだけだった。
「おうち、どこ?」
少女は、また首を振るだけだった。
私は、少女の頭を両手で押さえつけ、もう一度質問をした。
「お・な・ま・え・は?」
少女は、答えた。
「…のりこ」
「ここで、何してるの?」
「………。」
……困ったな、このままほっとけないしな。
少女の顔から両手を離し、腕組みをして考えていると、空が曇り始め、雨が降りそうな天気になってきた。
私は空を指差し、どこかへ移動しよう、と伝えると、少女は理解したらしく、
こくん、と頷いた。
私は、少女の手をとり交番を目指した。
少女の手はとても冷たかった。子供でも、冷え症などあるのだろうか?
いや、ひょっとしたら生きていないのでは?
私は、急に不安になった。
とにかく、この少女の生きている証拠を、確認したかった。
しっかりとした足取りで歩いているし、時々こちらを見る、綺麗な黒い瞳だって、死んでいるとは思えない。
でも、何だろう。
この何だかわからない不安、不安、不安。
私の中の私が、警告している。《この手を離せ》
…そんな事、出来るわけないじゃないか
思わず、繋いだ手を強く握ってしまい、少女に痛い思いをさせてしまった。
「ごめんね。大丈夫?」
「…うん。」
「あ、雨降り出したね。急ごうか。」
「うん。」
少女の手をひっばりながら、やや急ぎ足で道を進む。
そして、角をまがり目の前に交番が見えた時、少女の体が急に軽く感じられた。
私が握っている少女の手の先、肘から上の部分が少女ごと消えていた。
うわあああああっ