004 森の西の町(1)
マルスとヨハンは森の西の町に着いた。
しかし町の入口で門番の兵士に足止めをされた。
なんでも、町の領主の命で許可のない者の町への出入りが禁止されているらしい。
マルスは自分は勇者でアルバス機関の要請で、この町に来たと伝えた。
「お前が勇者!」
一人の太った兵士は、せせら笑った。
しかしもう一人の年配の兵士は、顔色が変わった。
この世界では町や村は、勇者に最大限の誠意を持って接しなければいけない。
勇者に邪険な態度をとったとなると、後でアルバス機関から何を言われるか分からない。
この兵士はそれを知っていた。
「領主に確認します」
兵士は領主に報告しに行った。
◆◇◆◇
ここは町の中心にある領主の館。
報告を受けて騒ぎになっていた。
「勇者がこの町に……」
「どういった用件で来たんだ」
領主の臣下と思われる数人がわめき散らしていた。
「うろたえるな!」
領主と思われる年配の男が叱咤した。
「勇者が来たなら、歓迎してやればよい」
領主の後ろには、別の男が控えていた。
マルスとヨハンは領主の館まで招かれた。
「これは勇者様、このような町にようこそ」
館では領主の代理という男と数人が出迎えた。
領主の代理は小柄で痩せた男で、オジマと名乗った。
オジマはあまり体調が良くないのか、青白い顔をしていた。
「長旅でお疲れでしょう。まずはお寛ぎください」
挨拶もそこそこに食事をする部屋に通された。
そこには、豪勢な料理が並べられていた。
(勇者って、こんな待遇を受けるの!)
ヨハンは夢中になって食べ始めた。
マルスはそれをみていて、ボソッとつぶやいた。
「毒は入ってないようですね……」
「んあ!」
ヨハンは食べているものを吐き出した。
「すばらしいご馳走をありがとうございます。領主様にもご挨拶したいのですが?」
マルスはオジマに尋ねる。
領主は流行り病にかかっており、人に会える状態ではないとオジマは答えた。
「ところで、勇者様は何故このような田舎の町にいらしたのですか?」
オジマが尋ねる。
「この町で、理不尽なことが起こっていると聞いてきたものですから」
「理不尽なこと……?」
「なぜ、町への出入りが許可制になったのですか?」
「それは……」
オジマは説明した。町で盗賊による窃盗事件が起きたので、町に出入りする人を監視しているという。
「突然税金を課して、取り立てをしているとか」
それは、この領主の館を修繕するためで一時的なものだと、オジマは説明した。
「そうですか……、町を見学したいのですが?」
マルスは尋ねた。
「ええ……、今日はもう遅いので、この館にご宿泊してください。明日ご案内いたします」
マルスとヨハンは寝室に案内された。
寝室には、また高級そうなベッドが用意されていた。
「いいな、勇者は豪華な歓迎を受けて……」
ヨハンは皮肉っぽく言って、ベッドに寝転んだ。
マルスは寝室を見渡した。
寝室の窓の外にも兵士がいて、こちらを監視しているようだった。
「何か、気になるのか?」
マルスが神経をとがらせているのを気にして、ヨハンが尋ねた。
「警備が厳しすぎますね」
(そもそも、この町に来た目的はなんだったの?)
ヨハンは聞こうとしたがやめておいた。
マルスなりの考えがあるのだろうと思った。
翌朝、マルスとヨハンは町の中を案内された。
しかし、どこに行くにも領主の臣下の官吏や兵士が付いて回った。
マルスは町の人、何人かに話しかけたが、官吏や兵士が目を光らせていたので、町の人の口は重かった。
町を巡る途中で、教会の建物が見えた。
「あの教会に行ってみたいのですが?」
マルスが提案する。
「あいにく、教会の神父が外出中でして」
オジマが答える。
「外出中……、どこに行ったのですか?」
「それが、突然いなくなってしまって、私達も探しているのですよ。まったくどこに行ってしまったのやら」
マルスはそれ以上聞かず、教会を見た。
教会の窓に、誰かいる様に見えた。
領主の館に戻ると、またもてなしを受けた。
「あの、歓迎されてばかりなので、何かお礼をしたいのですが?」
マルスがオジマに聞いた。
「いえいえ、そのようなことは……」
「何か、困ったことはありませんか?」
「……領主と相談してみます」
オジマが領主と相談したところ、町の近くの山に巨大な魔獣が住み着いているらしい。
それを退治して欲しいと頼まれた。
マルスとヨハンは魔獣退治に行くことになった。




