003 勇者と剣士(3)
魔の森の周辺には、ちょうど東西南北に四つの大きな町がある。
マルス達が向かっていたのは、その西にある町。
魔の森は中心にいくほど、凶悪な魔獣が存在するが、アルバス機関によって結界が張られている。
凶悪な魔獣は森から出られないようになっていた。
マルスとヨハンは村の宿屋に一泊していた。
目的地である森の西の町の隣にある村だ。
宿屋の主人は、勇者だと聞くと快く泊めてくれた。
早朝、ヨハンが目を覚ますとマルスはもう外に出て剣の訓練をしていた。
ヨハンから教わった技の特訓をしていた。
それを見て、ヨハンは思う。
(マルスは努力型なんだな、能力は普通なんだが努力で底上げしているというのかな……)
ヨハンもマルスの訓練に参加した。
朝食後、二人は村の医者を訪ねた。
初老の医者はこの村の僧侶でもあった。
ヨハンの体を一通り診たあと、言う。
「症状を聞いたときは、身体的な病気かと思ったが、体に異常はない」
「やっぱりね、前にも診てもらったことあるんだけどなんともないと言われたんだよね」
ヨハンはそう言って、先に宿に帰っていった。
マルスは残って医者と話をした。
「痣が出ると、左腕が利かなくなる……」
僧侶はマルスから話を聞いて驚いた。
「本人には見えていないようなんですよね」
「……」
「それに、ヨハンには回復魔法だと言ったんですけれども、本当は魔力を注いだんです。そしたら一時だけ動くようになったんです。でもすぐに動かなくなって……、痣が消えるとまた動くようになったんです」
「……おそらく、呪術の類でしょう。ですがこんな田舎の村の僧侶には手に負えるものではありません」
マルスも宿に戻ることにした。
宿への道すがら、ヨハンの痣を思い出していた。
それは、竜の姿に似ていたのだった。
「どうした、しけたツラして」
ヨハンが迎えに来ていた。
「行くんだろ、魔獣退治」
昨日この村を訪れたとき、村長に挨拶に行っていた。
その村長から村の外れの池に、カエルの魔獣が出て村民が困っている。退治してほしいと頼まれていた。
町や村では勇者に衣食住を提供する。その代わり何か困りごとがあれば勇者に依頼できるのだった。
「はい!」
マルスとヨハンは池に来た。
人の背丈より大きいカエルの魔獣が数匹いた。
「舌が伸びて、獲物を捕食するタイプみたいですね」
「近づくと食べられちゃうな」
「近づかないで倒しましょ!」
マルスは左手に小さな盾――いわゆるバックラー――と右手に剣というスタイルだったが、この時は両手に剣を構えた。
ヨハンから教わった技を放つためだ。
「無双一斬」
マルスが技を放つと、カエルを一匹斬り裂いた。
(もう使えるようになったの! しかし、まだまだだな)
ヨハンも無双一斬を放ち、カエルを倒した。
しばらくカエルを倒していると、また左腕が麻痺してきた。
「クソ……」
マルスは以前と同じように、ヨハンの左腕に魔力を注いだ。
ヨハンは腕が使えるようになり、カエルを倒した。
それから、二人はヨハンが前衛、マルスが後衛となり、連携して全てのカエルの魔獣を倒した。
一息ついて、ヨハンが汗を拭うため上着を脱いだ。
その時、マルスは彼の左腕を見た。
痣が現れていた。
痣は以前より大きくなっていて、明らかに竜の形に見えた。
しばらく見ていると、痣は消えていった。
マルスは自分のしていることが正しいことか分からなくなってきた。
その後、村長のところに魔獣を倒した報告に行った。
村長は、大いに喜び二人の健闘を称えた。
マルスは森の西の町の様子を聞いてみた。
村長の顔が曇り、淡々と話し始めた。
町を治める領主の悪政の噂が聞こえてくるらしい。
なんでも町への人の出入りを制限したり、突然税金を課して、町人から取り立てをしたりしているらしい。
「そのようなことをする領主ではなかったのですが……」
村長は言う。
マルスは森の西の町で、想定外の事態が起こっていると感じた。
急いで町まで行かなければならない。
ヨハンの腕のことも町まで行ってから対応しようと思った。




